転職したいと思っているのですが、私の周りには転職経験者がいません。
転職経験者の割合というのはどの程度なのでしょうか?
また、転職する方が増えてきていると聞いていますがその理由は何なのでしょうか?
今回のテーマは「転職経験者の割合と今後の予測、またその理由」である。
結論から申し上げると「転職経験者の割合は現在56.6%だが、今後は80%を超えていく見込みである。数値の根拠と、転職者が増加している理由について解説していく」という内容になっている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
本記事は、転職成功率の上昇には直接結びつかないコラム記事である。
ただし、転職経験者の割合が増えている背景を知ることにより、今後多くのビジネスパーソンは転職せずには生き残れないということが現実感をもって理解できるというメリットはある。
【結論】転職経験者の割合は現役世代で56.6%
結論から申し上げると、転職経験者の割合は20代から60代までの現役世代の合計で56.6%である。
また、その転職経験者のうちの65%は、複数回の転職を経験している。
元データは2021年2月に行われた、以下のアンケートである。
クラウドサービス・コンサルティング事業のリスクモンスター(東京都中央区)は、20~60代の社会人男女500人を対象に、転職事情に関するアンケート調査を実施した。転職経験の有無については転職の経験がある人が56.6%と、経験がない人の43.4%を上回る結果となり、2人に1人は転職を経験していることが分かった。また、転職経験者の約65%が複数回の転職を経験していた。
出典:ITmedia ビジネスオンライン
このアンケート以外にも転職経験に関するアンケート結果はいくつか存在したが、全てのアンケート結果で転職経験者の割合は概ね50%超である。
【今後の予測】40代は75%が転職経験あり。現在の20代~30代は8割を超える可能性
転職経験者の割合に関しては、別のデータもある。
20代から50代で合わせて208人とややデータ数(n数)が少なく、実施年月も2019年と若干古いのだが、転職サイト大手のリクナビNEXTにより行われたアンケートである。
その結果としては、以下の通りになっている。
- 20代:39.3%
- 30代:50.9%
- 40代:75.0%
- 50代:45.8%
出典:リクナビNEXT
一般的には、転職経験者は年齢とともに増加していく。
転職率が一定ならば、25歳で転職経験がある人の割合よりも、45歳で転職経験がある人の割合の方が圧倒的に多くなる。
ここで着目してほしいのは、40代の転職経験者が75%ということである。
2019年時点で40代のビジネスパーソンということは、ほぼ1970年代生まれということになる。
この方々が20代~30代で転職した時代は、転職は一般化してきていたとはいえ、2022年現在ほど市民権を得たものではなかった。
今後は転職がさらに一般化し、転職したことがないという方が珍しくなってくると予測されている。
実際に、総務省が出している「労働力調査 詳細集計」というデータを見ると、2011年から2019年にかけて転職率は増加の一途をたどっている。
ここまで述べてきたような背景に鑑みると、現在の20代・30代が40代になる頃には、この数字(75%)はさらに増えていると見るべきだろう。
よって筆者は、今後の転職経験者の割合が80%を超えてくることを確実視している。
【背景】転職経験者の割合が増えている5つの理由
転職経験者の割合が5割超だということにはあまり驚きがなかったと思うが、今後は8割を超えてくるとなると、転職経験者の増加を実感する方が多いだろう。
本項では、転職経験者の割合が増加している背景について解説していく。
転職経験者の割合が増えている理由として、主に以下の要因が考えられる。
- 転職の一般化
- 転職のメリットの認知度向上
- 昇給の期待値の低下による転職の相対的な魅力の上昇
- 天職・やりがい・個性等のコンセプトの一般化
- 終身雇用の崩壊・リストラの一般化
上記について、それぞれ解説していく。
転職の一般化
日本というのは、周囲の皆がやっているから自分もやる、という人が多い国である。
転職する人が周りに増えることでさらに転職する人が増えていくという、一般化が加速しやすい国民性なのである。
このように、転職というものが一般化したということ自体が、転職経験者の割合が増えている前提として存在する。
転職のメリットの認知度向上
転職が一般的になるにつれ、転職のメリットが認知されたことも転職者の割合が増えている理由の一つだろう。
転職のメリットとは、例えば「32歳までに1度は転職すべき8つの理由」 に記載した、以下のようなものである。
- ラーニングアジリティーが高く保たれており、次の会社でも活躍できる可能性が高い
- 広い視野、複眼的な視点を持てる
- 専門性を確立し、実績を出し人脈につなげるベースが出来る
- 天職に就ける確率が倍になる
- 人間関係構築力が上がり、マネジメント力が養われる
- 転職力そのものが上がり、キャリアリスクを回避する能力が高まる
- 早期に素晴らしい出会い(メンター/ロールモデル等)が得られる確率が上がる
- 生涯年収を底上げできる
さらに、以下のような仕事の悩み(≒退職理由)を解決しうるという「デメリットが解消できるというメリット」も見逃せない。
- 年収や肩書、市場価値を上げたい
- やりたい仕事がある
- 人間関係が悪い
- 会社の将来性に不安がある
- 職種の将来性に不安がある
- 社風が合わない
- ブラック企業である、ハラスメントがある
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい
- ローテーションにより専門性が身に付かない
- 単純作業やムダな業務が多く、つまらない
- ヒエラルキーがあり、若手である自分の意見が受け入れられない
- 働かない人間や無能な人間がおり、腹立たしい
- 飲み会やイベントがくだらない
- 評価や人事制度に不満がある(年功序列等を含む)
- 勤務地や転勤制度に不満がある
- 著しくヒマである
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない)
- 介護や子供の教育などの個人的な事情がある
>>会社を辞める本音の理由と面接での転職理由は別!本音18個を人事プロが解説
昇給の期待値の低下による転職の相対的な魅力の上昇
ご存知だと思うが、先進国の中でも日本は給与が驚くほどに上昇していない国である。
日本において、昇給によって年収を上げていくという期待値は、年々下がり続けている。
これにより転職による年収アップの魅力が相対的に高まるという現象が起きている。
「【給与公開】出世で給与を上げるのは本当に大変か」 にも書いた通り、転職であれば年収にして50万円から数百万円程度の上昇が普通にあり得る。
天職・やりがい・個性等のコンセプトの一般化
当サイト「転職参謀」では何度も引用しているドラッカーの言葉であるが、最初の仕事はくじ引きである。
最初の仕事はくじ引きである。最初から適した仕事につく確率は高くない。
しかも、得るべきところを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年を要する。P.F.ドラッカー「非営利組織の経営」
最初の仕事が天職であったり、非常にやりがいがあるものであったりする可能性というのは、率直に言って非常に低い。
こういった中で、天職ややりがい、個性を活かす等のコンセプトが提唱された結果、一度就いた仕事は我慢してやり続けなければならないという呪縛が過去のものとなり、転職経験者の割合の上昇につながったと考えられる。
終身雇用の崩壊・リストラの一般化
転職の一般化がさらなる転職率の増加につながった、と書いた。
その場合、そもそも最初に転職を一般化させた「何か」があるはずであり、その「何か」こそが終身雇用というコンセプトの崩壊なのである。
- 終身雇用の崩壊(リストラの一般化) → 転職の一般化 → さらなる転職率の増加
会社が社員の雇用を100%守る、社員の昇給を100%保証する、という時代には、転職は裏切りと考えられがちであった。
しかし会社自体が平気で社員を裏切ってくる現在では、転職は単に「より良い職業選択」に過ぎなくなり、裏切りとみなされる事は少なくなってきている。
まとめ
もし、「今後は転職しなければいけないのでは」と思ってこの記事にたどり着いたとすれば、筆者の考える誠実な答えは以下である。
- 「今後は転職しないと絶対にいけない」とは思わないし、言わない
- ただし、 一社だけでやっていくのは(その一社がダメになった時の)リスクが高すぎるため、今の20~30代にはおすすめできないキャリアプランである
もしあなたが転職を考えているのであれば、当サイトの関連コンテンツが参考になるだろう。