平均ボーナス金額の発表(夏季賞与・冬季賞与の発表)が年2回あると思いますが、毎年そのニュースが出るたびにため息が出ます。
ボーナスが少ない原因は何なのでしょうか?それに対して何か手を打てることはあるのでしょうか?
今回のテーマは「ボーナスが少ない原因と対処法」である。
結論から申し上げると「ボーナスが決まる基本的なメカニズムを理解すれば、ボーナスが少ない原因が分かる。その原因によって対処法が6つほどあるので、本文中で解説していく」という内容の記事になっている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、ボーナスが少ない原因を理解して適切な対処法を取ることができ、ボーナスを増額するための行動に着手することが出来るようになるだろう。
結論
まず本記事の結論を記載しておく。
項目のみ記載しているため、詳細は本文中で確認していただきたい。
ボーナスが少ない原因は以下の通りである。
- ボーナスより基本給に割り振る給与体系である
- 業界の景気が悪い
- 会社の規模が小さい
- 会社の業績が悪い
- 自身の評価(査定)が悪い
- ボーナスが評価に紐づいていない
ボーナスが少ない場合の対処法は以下の通りである。
- ボーナス割合が小さいと認識しておく
- 基本給を貯めておく
- 残業する
- スキルアップする
- 異動する
- 転職する
【前提】ボーナスはいくらだと少ないのか?
ボーナスはいくら程度だと少ないと言えるのか、気になっている方は多いだろう。
とはいえ、これは一概に回答することができない問いである。
基本的に、年収は「基本給(ベース給)+ボーナス(賞与、一時金)」という計算式で決まる。
会社がトータルの年収を基本給に多く割り振っている場合、年収が高かったとしてもボーナスの額は少なくなる。
日本経済団体連合会、いわゆる経団連から発表されているボーナスの平均額は大企業の平均なので、高めに出てしまっている。
これが目安になるかと言うと疑問だが、参考程度に2022年6月(2022年夏季)のボーナス金額を引用しておく。
大手企業における夏のボーナス平均妥結額は92万9,259円
出典:日本経済団体連合会(経団連)
大手企業に勤務していてこれより低いという場合には、平均より低い、少なめであると言えるだろう。
一方で、中小企業に勤務していてこれより少ないとしても、それが一般的に少ないと言えるかどうかは疑問である。
逆に、中小企業勤務で上記の金額を超えている場合には、中小企業に在籍している割に多いとは言えるだろう。
ボーナスが少ない原因6つ
本項ではボーナスが少ない原因について述べていくが、その前にいくつかの前提を述べておく。
まず、ボーナスというのは法定で支払う必要があるものではないので、ボーナスがない会社も当然存在する。
本記事ではボーナスがある場合を想定して書く。(=そもそもボーナスがないという場合を考慮に入れない)
また、本記事では基本的なボーナスのメカニズムを前提としている。
基本的なボーナスのメカニズムとは、会社業績と個人評価を加味してボーナスの支給金額に紐づけるものである。
上記の前提を考慮した、ボーナスが少ない原因は以下の通りである。
- ボーナスより基本給に割り振る給与体系である
- 業界の景気が悪い
- 会社の規模が小さい
- 会社の業績が悪い
- 自身の評価(査定)が悪い
- ボーナスが評価に紐づいていない
上記の原因について、それぞれ解説していく。
ボーナスより基本給に割り振る給与体系である
前述した通り、ボーナスは法的に定められた報酬ではない。
実際にボーナスがない会社もあるし、年収のうちどの程度をボーナスにするかも会社次第である。
筆者の認識では、年収全体を100とした場合、かなりボーナスの割合が高い会社で40前後がボーナスになっているイメージである。
一方でボーナスの割合が低い会社では、年収を100とした場合のボーナスは0~10程度である。
ボーナスの割合が低い場合、会社が意図的に「ボーナスではなく基本給に割り振る給与体系」にしているということになる。
基本給が高いかどうかによって受け取り方は変わるだろうが、 ボーナスの金額だけを見て「多い」「少ない」というのは 議論できない。
業界の景気が悪い
会社個々の事情ではなく、業界の景気が悪い場合もボーナスが少なくなり得る。
2022年6月の夏季賞与においても、ボーナス金額トップの建設業と、最下位の印刷業では、2倍程度の賞与金額の差となっている。
- 業種別でみると、トップは「建設」で127万1,661円
- 最下位は「印刷」で、68万9,105円
出典:日本経済団体連合会(経団連)
業界の景気が悪い場合、または業界が衰退産業である場合には、ボーナスが少なくなることが多い。
会社の規模が小さい
ボーナスの季節の度に話題になるのは、経団連が発表するボーナス金額が大企業のみを反映しているということである。
ここからも分かる通り、会社の規模によってボーナス額は全く異なってくる。
基本的には、大手であればあるほどボーナス金額は多い。
よって、会社の規模が小さい場合にはボーナスが少ないということになってくる。
会社の業績が悪い
ボーナスの基本的な算定メカニズムは「会社業績と個人評価をボーナス金額に結びつける」というものであった。
よって、会社の業績が悪い場合にはボーナスが少なくなる。
ボーナスは、会社の好業績の社員への還元という性質を持っている。
そのため、会社の業績が悪い場合には、個人へのボーナス支払額も下がる設計である。
自身の評価(査定)が悪い
本項については、前項と同様のメカニズムによるものなので詳しくは説明しない。
社員個々人の評価が悪い場合にも、算定メカニズムから算出されるボーナス金額は低くなる。
ボーナスが評価に紐づいていない
実は、そもそもボーナスは会社業績や個人評価に紐づかせる必要もない。
多くの会社ではそうなっているというだけであって、基本的なボーナスの算定メカニズムに合わせる必要もないのだ。
社長の一声で「決算賞与」等として、会社の業績が良くても悪くても、個人の業績が良くても悪くても一律の金額を全社員に支払う会社もある。
この場合にはボーナスが基本給にも評価にも紐付いていないため、基本給が高い社員であればあるほど、評価の高い社員であればあるほど、金額の少なさに不満を持ちやすいだろう。
ボーナスが少ない場合の対処法6つ
ボーナスが少ない場合の対処法は以下の通りである。
- ボーナス割合が小さいと認識しておく
- 基本給を貯めておく
- 残業する
- スキルアップする
- 異動する
- 転職する
上記の対処法について、それぞれ解説していく。
ボーナス割合が小さいと認識しておく
ボーナスより基本給に割り振る給与体系である場合には、そのことを認識しておくことがまず重要である。
本来はボーナスという不確定要素の割合が小さく、確実にもらえる基本給の割合が大きいというのは社員にとって良いことである。
基本給が少なくてボーナスもほとんどないという場合には、それはボーナスが少ないという問題ではなく年収自体が少ないという別の問題である。
基本給を多めにするという「社員に優しい設計」にしているのに、ボーナスが少ないことを理由にモチベーションを下げられてしまっては、会社もかわいそうである。
自身のモチベーションを下げないためにも、「うちの会社はボーナスの割合が少なくて基本給が多い」と正しく認識しておくことが重要である。
基本給を貯めておく
ボーナスより基本給に割り振る給与体系である場合には、ボーナスにあたる金額が毎月上乗せされていると考えてみてもいいだろう。
他の会社とは違いボーナスは少ないが、そのぶん月々の給与にそれが追加されていると考えれば、それを貯めておくというのも一案である。
結局はトータルでの年収全体が重要であり、月給に上乗せするのか、ボーナスで支払うのかは時期の問題でしかないのである。
残業する
古典的な方法ではあるが、ボーナスが少ない場合には残業代で稼ぐというのも一つの方法である。
とはいえ、これはボーナスがないと生活が成り立たない場合の緊急策であって、根本的解決には至らないので筆者としてあまりおすすめする方法ではない。
スキルアップする
ここまではマインドセットの持ち方や一時的な緊急策について解説してきたが、ここからは根本的な解決策について書いていく。
自身の評価が低く、そのせいでボーナス金額が少なくなっている場合、可能性のある原因は主に2つある。
それはスキル不足、もしくは上司の好き嫌いである。
自身の評価があまり高くなく、なおかつそれがある程度納得できている場合、スキルアップが喫緊の課題である。
例えば以下の記事は、転職後に成果を出すための方法論ではあるが、スキルアップのためにも非常に参考になるはずである。
>>転職を成功させるには、転職した後がカギ。転職直後にとるべき「6つの行動」
上記の記事から転載した6つの行動は、以下のとおりである。詳しくは上記の記事を読んでいただきたい。
- ビジネスのキャッチアップよりも先に、風土に馴染むことに全力を注ぐ
- 人間関係を把握し、主流派に属する
- 過去のチャットや共有フォルダを見る
- 転職直後のパフォーマンスは120%を出しきる
- ハネムーン期、失望期、ニュートラル期のサイクルを意識する
- 自分と周囲の力量差がある分野で力を示す
異動する
自身の評価が悪く、それが直属の上司との相性の悪さによるものである場合、異動することで状況が一変することもある。
>>納得できない!人事評価が好き嫌いで決まるメカニズムとその対処法
異動は、転職より低いリスクで上司を無理やり変更する唯一の手段である。
日本の会社員はあまりやらないのだが、転職に踏み切る前に、まずは人事に相談してみるのも一つの手である。
転職する
ボーナスが少ない6つの原因のほとんど全てに対して、転職は解決策になり得る。
転職すれば給与体系も変わるし、業界も変えられる。会社の規模や業績も変わる。
自身の評価が悪い場合も、それが上司との折り合いの悪さに起因する場合には解決し得る。
転職が選択肢に入ってくるのであれば、以下の記事に書いた「ゆるゆる転職」をすぐに始めるのが良いだろう。
転職の厄介なところは、我慢の限界が訪れたちょうどその時に、最高の求人やそれを紹介してくれる最高の転職エージェントがいるわけではないということである。
これを防ぐためには、転職を始めようかどうか迷っているという段階で転職サイト・転職エージェントに登録し、職務経歴だけ登録しておくことである。
その後に放置しておくことで、いざという時に最高のスタートを切ることができる。
まとめ
ボーナスが少ない原因のほとんどは会社に起因する。そのため、どうしても転職が対処法の多くを占めてしまう。
転職にはリスクがあるため誰にでもおすすめすることはできないが、実際に転職まではしないにせよ、転職の可能性を探っておくことは精神的安定に寄与する。