凸版印刷株式会社で10年ほど働いています。
凸版印刷は大手企業なのですが給料が低く、毎年の昇給も微々たるものです。
独身時代は気にならなかったのですが、家族が出来てからは厳しく、転職を視野に入れています。
とはいえ、凸版印刷は日本を代表する大企業ではありますし、他社から中途入社してきた人も「いい会社」「いい人が多い」とは言ってくれます。
私自身は今まで凸版印刷でしか働いたことがないので、不安があります。
凸版印刷を辞めたい人に対して、人事のプロとして何かアドバイスをいただけると助かります。
本記事では、日本の総合印刷会社であり、大日本印刷と並ぶ印刷業界2強のひとつ、凸版印刷株式会社について扱う。
「凸版印刷を辞めたい方の教科書」と題して、元・凸版印刷社員の退職理由や辞めた後の後悔、市場価値までを記載していく。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、凸版印刷を本当に辞めても良いのかどうかの決断が容易になり、退職後のキャリアが明確化することを約束する。
凸版印刷は最大手にしては給与が低く、古い文化もあり若手の流出が止まらない
まず、凸版印刷を辞めたい人は多いのかどうかについて記載する。
結論から言えば、凸版印刷は給与の低さと古い文化の2つにより、若手を中心に人材が流出している企業である。
まずはOpenWork(旧・Vorkers)の口コミから分かる組織風土を見てみよう。
- ラジオ体操への参加や、運動会・バーベキュー大会などの年中行事への参加がほぼ強制で、今の時代にそぐわない
- 事業によって文化や仕事内容が全く異なる
- 古い文化が残っており、若手の意見が通りにくく、やりがいを感じにくい
- 上が詰まっていて年功序列的な雰囲気があり、転職する若手はかなり多い
- 何をしているか不明の部署やポジションがあるのにリストラをしない、良い意味でも悪い意味でも優しい会社
- 何をしているか分からないオジサンが多い。残業が美徳だと思っている層も一定数いる
3-5年程度の在籍でOpenWorkに書き込んだ若手と、10-15年程度で書き込んだベテランとで、かなり意見の分かれる会社である。
「クボタを辞めたい方の教科書|退職理由や後悔、市場価値や転職方向性まで」でも同じことを書いたが、古い文化が残っているということ自体は世代を超えた共通認識なのだが、その捉え方が世代で異なる。
次に、OpenWork(旧・Vorkers)やリクナビ等のデータから分かることを見てみよう。
- OpenWorkによると、平均残業時間が34.8h、有給休暇消化率が49.0%と、印刷・書籍業界全体とほぼ同じような労働環境
- OpenWorkの組織風土スコアによると、印刷・書籍業界の平均と比べ、「待遇面の満足度」が顕著に低い。その代わりに「法令順守意識」が顕著に高い。最大手であることを考えると、待遇面での不満は特異なレベル
- 有価証券報告書によると平均年齢は42.8歳、平均勤続年数は13.5年である。平均年齢は高くリストラが進んでいない印象、勤続年数からすると中途採用は一定数ある
- 実際に、Google検索における「凸版印刷 辞めたい」の検索数は多い(月あたりで数百回検索されている)
労働環境の数値や組織風土スコアから見た、凸版印刷の特徴は以下の二つである。
- スコアを付けている人の年代を見ると、中高年が高い点数を付け、若手が低い点数を付けている
- 最大手なのにもかかわらず、待遇面の満足度が5段階で「2.3」というのは異常値(業界平均は2.7)
一つ目は、「古い業界」ではよくあることなのだが、「おじさんにとっては良い会社(若手にとっては良い会社ではない)」ということである。
二つ目は、最大手であるにもかかわらず給料が低いということである。これは、次項の退職理由でも扱う。
以上より、凸版印刷は最大手にしては給与が低く、古い文化もあり優秀な若手を中心に人材の流出が止まらない会社になっていると言えるだろう。
OpenWork(旧・Vorkers)から見る凸版印刷の退職理由
各企業の退職者による口コミ情報サイトであるOpenWork(旧・Vorkers)には、現時点で570件の凸版印刷の退職理由が記載されていた。
ここからサンプル抽出して分析してみると、多い順に以下の退職理由となった。
- 給料(年収)が低い
- 事業の将来性に不安
- 女性のライフイベントや女性が評価されないことでの退職
- スキルアップできない
- その他(若手の意見が受け入れられない、等)
筆者は多くの企業の「辞めたい教科書」を書いているが、その中でも特殊な結果となった。
まず、最大手で「給料(年収)が低い」が退職理由のトップに挙げられているのは初である。
その内訳としてのバリエーションも多く、以下のようになっている。
- 中小企業レベルの給与である
- 全社員共通で、不満を持っている
- 残業ありきの給与体系になっている
次に、女性の退職理由として、「結婚を機に退職」「女性は評価されにくい」などが挙げられており、数も多かった。
これは凸版印刷では普通なのかもしれないが、業界最大手の企業としては「遅れすぎていて」珍しい。
組織風土の口コミからも分かるとおり、「給与の低さ」と、女性活躍推進などに現れる「古い企業文化」の二つが特徴的な退職要因のようである。
結論として、凸版印刷では、若手や女性という「企業として最も失いたくない層」から退職者が相次いでいると言えそうである。
たとえば鉄鋼や機械等、中国と競合する業界で目立ちます。
凸版印刷を辞めたら後悔するか
凸版印刷を辞めたいという方の中には「辞めたら後悔するのか?」が気になる方もいるだろう。
結論を一言で言えば、「年代や性別による」になるだろう。
読者にはもうお分かりだと思うが、辞めても後悔しない可能性が高いのは、若手や女性である。
若手や女性が辞めても後悔しないという根拠は、以下である。
- 若手の昇給率の低さは最大手とは思えないレベルで、転職により大きく改善する可能性が高い
- 事業の将来性が怪しい
- 凸版印刷のネームバリューを活かして同等の大企業に転職できる可能性が高い
- 【女性限定】現在、先進的な企業では、女性であることがキャリアに有利に働くようになっているため
逆に、中高年の男性が凸版印刷を辞めた場合、後悔する可能性が一定程度ある。
その根拠は、主に「年功序列を含む古い企業体質の中で10年以上を過ごした場合、他社への適応の難易度が上がる」ことである。
ですので、「このままではダメだ」と強く感じており、チャレンジする気持ちがあれば、動く余地は十分あります。
凸版印刷は、最大手の割に労働時間等もホワイトとまでは言えず、年収も高くない。
今回は「若手・女性」「中高年男性」と場合分けをして回答したが、どんな人でも転職によって「待遇が目に見えて改善されやすく、辞めて後悔しづらい」会社だとは思う。
元・凸版印刷社員の市場価値
さて、次は元・凸版印刷社員の市場価値についてである。
実は市場価値というものは、現在の在籍会社だけで判定するのは難しい。
「【ミイダス診断は嘘】転職の市場価値はエージェントの求人で判断すべき理由」にも記載したが、本当の市場価値は、転職エージェントに登録し、エージェントが持ってくる求人で判断するしかない。
とはいえ、目安としての市場価値を、平均年収等から考えておこう。
まず、凸版印刷の平均年収はOpenworkで521万円である。
一般的な大企業の平均年収が705万円程度であることを考えると、「大手企業の平均的レンジ」内とはいえず、低い水準といえる。
とはいえ、実際に書類選考や面接選考をしている身からすると、凸版印刷は「業界最大手企業」の社格である。
社格だけで言えば、同じ最大手企業から外資系、ベンチャー、コンサルまで、どこにでも入り得る社格である。
とはいえ、年功序列で古い企業体質を持つ会社では若手が育たないため、他の最大手と全く同じように転職市場で評価されるかといえば、それは違う。
3年目くらいまでは(どの会社でも仕事の任され方が大差ないので)評価されるが、それ以上に過ごした年ごとに、実績的に評価が厳しくなってくる。
よって、煽るわけではないが、こういった「年功序列」企業からのキャリアアップ・スキルアップ目的の脱出は早い方がいい。
凸版印刷社員の方が選ぶべき転職エージェント・転職サイト
凸版印刷社員に限ったことではないが、希望する進路によって、選ぶべき転職エージェントや転職サイトは異なる。
例えば、「凸版印刷の社員だからこのエージェント」ではなく、「凸版印刷と同じ最大手企業に入りたい人なら、大手企業を得意とするこのエージェント」のように決まります。
転職エージェント選びを軽視している人も多いが、彼ら・彼女らは転職が成功するか失敗するかを決める重要なパートナーである。
それはつまり、人生が変わるということです。
良い転職エージェントの条件や出会い方については、「転職エージェントの選び方の教科書|出会い方、絞り込み方、付き合い方まで」に全て書いたので参考にしていただければと思う。
大きくは以下の4つに分かれるであろう転職希望先別に解説しているので、参考になるだろう。
- 大企業への転職を希望
- 中小企業への転職を希望
- ベンチャー企業への転職を希望
- 外資系企業への転職を希望
まとめ
若手や女性を中心に、凸版印刷を辞めたいという方は多い。
実際、凸版印刷は最大手にしては給与の低さが目立ち、古い体質のため若手・女性に活躍の機会(バッターボックスに立つ機会)が与えられにくい。
凸版印刷に限らず、年功序列で若手が経験を積めない会社では、辞めるなら早いほどいい。
また、辞めたいと考えている方がすぐにするべきことは、転職サイトへの登録である。あなたの望む最高の求人は、あなたが転職活動を始めてすぐに入ってくるものではない。
そこで、「転職サイトに登録し、あとは放置して良い求人や良いエージェントがストックされるのを待つ」転職活動の手法が効果を発揮する。
未来の自分のために、「今」行動してはいかがだろうか。