東急電鉄株式会社で働いています。
不動産ではなく鉄道事業に配属されたのですが、身に付くのはこの会社でしか使えないスキルばかりなので、早く脱出した方がいいのではないかと考えています。
さらに、鉄道会社特有の過酷な勤務もキツいです。今は若いのでいいですが、この先やっていける気がしません。
とはいえ、せっかく入った大企業でもあり、スキル面と勤務面以外での不満はありません。
東急電鉄を辞めることについて、人事のプロとしてどう思われますでしょうか?
今回は日本における大手私鉄のひとつ、東急電鉄株式会社について扱う。
「東急電鉄を辞めたい方の教科書」と題して、元・東急電鉄社員の退職理由や辞めた後の後悔、市場価値、進路に至るまでを記載していく。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、東急電鉄を本当に辞めても良いのかの決断が容易になり、退職後のキャリアが明確化することを約束する。
東急電鉄は野球部を会社にしてしまったような文化と、大企業病のダブルパンチで若手流出が止まらない企業
まず、東急電鉄を辞めたい人は多いのかどうかについて記載する。
結論から言えば、軍隊的、年功序列、学閥、体育会系等、今時珍しいほどの「野球部っぷり」と「大企業病」により、優秀な若手の流出が止まらない会社である。
OpenWork(旧・Vorkers)の口コミから分かる東急電鉄の組織風土を見てみよう。主に「辞めたい」につながるネガティブなコメントを抽出している。
- 体育会系で軍隊的、トップダウンの社風。野球部がそのまま組織になった感じ
- 年功序列であり、何もしなくても課長補佐まで出世する。中高年はぬるま湯に浸かり切った人が多数
- 若手は賃金が低い上に残業が抑制されており、生活が厳しい
- やることは総合デベロッパーなのに待遇が鉄道会社なので、若手の流出が激しい
- 中高年が詰まっており、中間管理職はダブついている
- 稲門会や三田会などの学閥がある
- 社内調整に多大な労力をかける一方、マーケット感覚や社外への意識は乏しい
その一方で、コンプライアンス意識や安全意識が高い等のポジティブなコメントも散見されました。
圧巻の「野球部っぷり」である。後述するが、ここまで「若手が辞めやすい条件」が揃う会社も今時珍しい。
OpenWorkの中でも、「退職理由」のページではなく「組織体制・企業文化」や「入社後ギャップ」のページに、「若手流出が激しい」というコメントが散見された。
次に、東急電鉄について、OpenWork(旧・Vorkers)やリクナビ等のデータから分かることを見てみよう。
- OpenWorkによると、平均残業時間が24.2h、有給休暇消化率が67.0%と、航空・鉄道・運輸業界の平均とほぼ同じ労働環境
- OpenWorkの組織風土スコアによると、航空・鉄道・運輸業界の平均と比べ、「法令順守意識」が圧倒的に高く、「社員の相互尊重」も高いが、「20代成長環境」が低い
- 有価証券報告書によると平均年齢は42.3歳、平均勤続年数は18年程度である。中高年が多い逆ピラミッド型の年齢構成
- 特筆すべきは男性の平均勤続年数が20年程度であるのに対し、女性は10年程度と、男女間で10年もの差があること
- 実際に、Google検索における「東急電鉄 辞めたい」の検索数は多い(月あたりで数百回検索されている)
労働環境の数値や組織風土スコアから見ると、東急電鉄は「昭和的な大企業病」の典型的要件を満たす。
- 労働環境は、数値的にはホワイトな部類
- 同調や法令順守は得意
- 年齢ピラミッドが逆三角形になっており、若手が成長しない
- 女性の活躍推進が遅れている
以上より、東急電鉄は基本的にはホワイトだが、野球部を会社にしてしまったような文化と、大企業病のダブルパンチで若手流出が止まらない会社であると言えるだろう。
例にもれず、向上心のある人間、自分の頭で考える人間など、いわゆる「優秀な若手」からどんどん辞めていく会社であると思われる。
OpenWork(元・Vorkers)から見る東急電鉄の退職理由
各企業の退職者による口コミ情報サイトであるOpenWork(元・Vorkers)には、現時点で72件の東急電鉄の退職理由が記載されていた。
ここからサンプル抽出して分析してみると、多い順に以下の退職理由となった。
- 東急電鉄だけで通用するスキルが多すぎ、スキルアップできない
- 特殊かつ過酷な勤務体系
- 体育会系のノリや飲み会の多さ
- その他(上司のために部下が神経をすり減らす、年功序列、事業先行きの不安、等)
多くの企業において、退職理由が上位1~2個に集中することは多い。
東急電鉄もまさにその例であり、「この会社だけで通用するスキルしか身に付かない」「過酷な勤務体系」の2つが退職理由のほとんどを占めた。
前者の「スキル」は、鉄道事業の在籍者から良く聞かれた。
「早慶・国公立出身者ばかり採用しているのに、誰でもできるような雑務ばかり」という声も多かった。
後者の「過酷な勤務体系」も、鉄道事業からの退職者に多く、以下のようにバラエティーに富んだ回答があった。
- 終電~始発の間しか寝られない勤務がある
- 夜勤が辛い
- 実質的に24時間勤務になる場合がある
- 有給休暇をとるときは、自分で代わりを探さないといけない
- 睡眠時間が2時間を切る勤務もある
まとめると、鉄道事業を中心に、「スキルがつかない」または「過酷な勤務体系」を理由に辞める方が非常に多かった。
前者(スキル)は若手を中心に、後者(勤務)は年齢を問わず退職理由になっている印象である。
東急電鉄を辞めたら後悔するか
東急電鉄を辞めたいという方の中には「辞めたら後悔するのか?」が気になる方もいるだろう。
結論から言えば、「後悔する可能性はあまりない」が筆者の回答である。
辞めても後悔する可能性があまりないという根拠は、以下である。
- 「人がどんどん辞めていく会社にありがちな7つの社風」のうち「トップダウン」「体育会系」「年功序列の処遇」に強く当てはまる
- 辞めたい理由が「スキルがつかない」「過酷な勤務体系」と明確であり、実際に東急電鉄以上に「スキルがつかない」「過酷な勤務体系」の会社は非常に少ない
- 東急電鉄が大企業であることもあり、学歴や職歴が良い人が多く、東急電鉄より良い会社に転職できる可能性が高い
東急電鉄を辞めても後悔しない理由を一言でまとめると、辞めても後悔しないほどの社風や勤務体系におけるネガティブなポイントがあり、転職によりスキルアップ等の目的が達成される確率が高いからである。
元・東急電鉄社員の市場価値と退職後の進路
さて、次は元・東急電鉄社員の市場価値と退職後の進路についてである。
実は市場価値というものは、現在の在籍会社だけで判定するのは難しい。
「【ミイダス診断は嘘】転職の市場価値はエージェントの求人で判断すべき理由」にも記載したが、本当の市場価値は、転職エージェントに登録し、エージェントが持ってくる求人で判断するしかない。
とはいえ、目安としての市場価値を、平均年収等から考えておこう。
まず、東急電鉄の平均年収はOpenworkで532万円である。
これは大企業の平均年収705万円と比べるとかなり低い。
次に、実際に書類選考や面接選考をしている身からすると、東急電鉄は「業界トップ水準(ほぼ最大手企業)」の社格ではあるものの、一般的な企業で使える汎用スキルをあまり持っていないイメージがある。
社格としては他の日系最大手グローバル企業、例えばトヨタやソニーと同じなのかもしれないが、転職市場での市場価値はそれらよりやや低いというのが現実だと思う。
厳しいコメントになるが、こういった「あまり若手が成長しない年功序列の日本企業」、例えば日本製鉄、JFEスチール等からの転職者を見ている人事のプロとしては、東急電鉄にも以下の感覚を持っている。
- 別の最大手企業にも行けるし、ベンチャーやコンサルにも入れる。入れるのだが、他の最大手企業からの転職と比べると少しハードルがある
- 特に、東急電鉄にいた期間が長ければ長いほど、他で通用しなくなる。脱出するなら早め
一般に、こういった年功序列・体育会系の企業では、若手の給与も上がらず、大きな仕事も回ってこない。
だから、脱出するならとにかくスピードが勝負である。東急電鉄に長くいればいるほど、それ以外の会社でやっていける可能性が激減していくだろう。
東急電鉄社員の方が選ぶべき転職エージェント・転職サイト
東急電鉄社員に限ったことではないが、希望する進路によって、選ぶべき転職エージェントや転職サイトは異なる。
例えば、「東急電鉄社員だからこのエージェント」ではなく、「大手の事業会社に入りたい人なら、大手企業を得意とするこのエージェント」のように決まります。
転職エージェント選びを軽視している人も多いが、彼ら・彼女らは転職が成功するか失敗するかを決める重要なパートナーである。
それはつまり、人生が変わるということです。
良い転職エージェントの条件や出会い方については、「転職エージェントの選び方の教科書|出会い方、絞り込み方、付き合い方まで」に全て書いたので参考にしていただければと思う。
大きくは以下の4つに分かれるであろう転職希望先別に解説しているので、参考になるだろう。
- 大企業への転職を希望
- 中小企業への転職を希望
- ベンチャー企業への転職を希望
- 外資系企業への転職を希望
まとめ
東急電鉄を辞めたい社員は多い。
- 他の会社でも使えるスキルが身に付かないため、若手がどんどん辞めていく
- 過酷な勤務のため、年齢を問わず辞めていく人もいる
こういったローテーション配属をする会社では、大量の「その会社でしかやっていけない人」を生む。
だからこそ、転職するなら早めである。逆に転職しないなら、定年までしがみつく覚悟を持つべきである。