尊敬する上司から「転職サイトに登録だけでもしておけ」とアドバイスをもらいました。
おそらく、市場価値を把握し続けろという意味だと思いましたが、それ以外に登録だけするメリットはありますか?
そもそも転職サイトに登録だけして、転職活動をしなくても許されるのでしょうか?
今回のテーマは「転職サイトに登録だけすることのメリット」である。
結論から申し上げると「転職サイトに登録だけしておくことは全く問題ないし、市場価値が分かること以外にも複数のメリットがあるので、おすすめである。本記事ではそのメリットを網羅的に紹介していく」という内容になっている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、転職サイトに登録だけでもしておくことのメリットが分かり、転職活動をしない場合でも受け取れるメリットを享受し、転職活動をする場合には効率的かつ効果的に進められるようになるだろう。
結論
まず、結論から言うと、転職サイトに登録だけして放置することは問題ない。
転職サイトに登録をしたからといって、絶対に転職をしなければならないということは全くない。
案件の紹介はあるが、転職を強制されたり、転職するように強く言われたりすることはない。
さらに言えば、登録だけしておく方法は問題ないどころか、実は多数のメリットがある非常に有効な方法である。
筆者自身、転職サイトに登録だけして放置する方法を「ゆるゆる転職」と名付けて推奨している。
実際に、筆者も何度かはこのゆるゆる転職の手法で転職している。
転職サイトに登録だけでもしておくことのメリット4つ
転職サイトに登録だけでもしておくことのメリットは、以下の通りである。
- 精神的に安定する
- 自分の市場価値がわかる
- 転職活動の時短になる
- 良い転職エージェントとの出会いの確率を上げられる
上記のメリットについて、それぞれ解説していく。
精神的に安定する
会社員をしていて、悩みや不満が全くないという人はほぼいないだろう。
人によっては、毎日のように自分の職場や上司、同僚に対して怒りや憎しみを抱いている人もいるはずである。
転職サイトに登録してあるということは、「会社を離れる準備ができている」とも言える。
会社や上司、同僚に対して我慢の緒が切れた際に、その会社を離れる準備がほんの少しでも出来ていれば、精神は安定する。
逆に言えば、会社に依存している状況で嫌なことがあった場合、酒や上司の愚痴ぐらいにしか逃げられなくなってしまう。
ご存知の通り、こういった行動をしても何も変わらない。実際に会社を離れる準備が一歩でも進んでいるということが、いかに生産的かという話である。
転職サイトへの登録は、転職活動の第一歩である。しかし、それは第一歩に過ぎず、絶対に転職しなければいけないわけではない。
ビズリーチ以外の転職サイトは完全に利用無料であるし、他にあなたを制限するような条項もない。
>>有料の転職エージェントの具体例とメリット・デメリットを人事プロが解説
登録だけしておくことにはデメリットがほとんどないにも関わらず、現職でのストレスを和らげてくれるお守りとしても機能する。
自分の市場価値がわかる
転職サイトに登録をしておくだけで、自分の市場価値が分かる。
以前、以下の記事に書いた通り、転職の市場価値はネット上に溢れる市場価値診断のようなサービスでは分からない。
>>【ミイダス診断は嘘】転職の市場価値はエージェントの求人で判断すべき理由
市場価値はプロに判断してもらうしかない。そして市場価値の判断のプロとは、転職エージェントのことである。
彼ら・彼女らは「適切なレベル(≒市場価値)の候補者を企業に紹介して、実際に転職した場合にのみ手数料を得る」というサービスを展開しているので、適切なレベルなのかどうかというのが分からないと商売にならない。
ただし、転職サイトに登録してすぐに自身の市場価値が年収で表されたりはしないので、注意したい。
転職サイトに登録し、職務経歴を記入した上で放置しておくと、徐々に転職エージェントからの求人が届き始める。
転職サイト内には、多数の転職エージェントが参加しているからである。
転職エージェントから届く求人の年収によって、自身の現在の市場価値が(概算ではあるが)分かってくることになる。
実際にその求人に受かってしまえば、(当然ながら)その年収になるわけなので、これは最も妥当性の高い市場価値の算定方法だと言えるだろう。
転職活動の時短になる
転職サイトに登録だけして放置する方法は、転職活動の時短(時間短縮)にも役立つ。
そもそも転職活動では、以下のような初期プロセスに時間がかかる。
- 転職サイトや転職エージェントへの登録作業
- 履歴書・職務経歴書等の作成
- 転職エージェントからの転職ニーズのヒアリング
転職サイトへの登録作業や職務経歴の入力を済ませて後は放置しておく方法であれば、この最も面倒な初期プロセスを最もモチベーションの高い時期に済ませることが出来る。
これは時短ではないが、転職活動のモチベーション管理という意味では非常に有効な方法である。
ここからが、時短につながるところである。
転職活動を始めてみればわかるが、自身の理想の求人やそれを紹介してくれるような素晴らしい転職エージェントには、転職活動を開始してすぐに出会えるわけではない。
上司や会社に愛想が尽きて転職活動を始めたのに、良い求人やエージェントが集まるのに1~2ヶ月もかかるという事に絶望する人は多い。
しかしながら、今すぐに転職サイトに登録だけしておいた場合には話が違ってくる。
上司や会社に愛想が尽きた時には、すぐに十分な数の求人を供給してくれる優秀な転職エージェントの知り合いが何人か出来ているからである。
これが、結果的に転職活動の時短につながります。
繰り返しになるが、「転職活動をしようか迷う」程度の段階で転職活動を始めてしまえば、時間を味方につけ、転職活動を本格化させる際には良い求人やエージェントが集まっている状態を構築できる。
仮に結果的には転職活動をしなかったとしても、企業やエージェントからのメールは無視してもいいし、気が向いたときに「機会があれば、また今度」程度の返事をしておいてもいい。
今すぐに転職活動を始める(登録だけしておく)ことのメリットは大きいが、デメリットはほぼない。在職中で時間がない人ほど、転職活動はすぐに始めるべきものなのである。
良い転職エージェントとの出会いの確率を上げられる
一つ前の項目で話した通りであるが、登録だけして放置しておくことで、良い転職エージェントの発掘に十分な時間をかけることが出来る。
登録だけしておくことには(先ほどお話しした通り)時短の効果もあるのだが、それよりも良い転職エージェントとの出会いの確率を上げられるというメリットが大きい。
転職エージェントは、以下のように非常に重要な役割を持つ、あなたの転職活動のパートナーである。
- あなたの話をしっかりと聞き、ぴったりの仕事を探し、提案するカウンセラーであり、リサーチャーであり、プレゼンターである
- あなたの転職活動における書類選考対策や面接戦術を指導する教官(メンター)である
- 転職における様々な「めんどくさいこと(日程調整や要望の伝達、本音の引き出し等)」を調整してくれるコーディネーターである
- あなたに代わって給与交渉をする代理人(交渉人、ネゴシエーター)である
- 多くの人が時々自信を失いがちな転職活動において、あなたを励まして成功に導く伴走者であり、モチベーターである
上記の項目を見れば、転職エージェントが優秀かどうかによって、あなたの転職活動が成功するかどうかがかなり左右されるということが分かるはずである。
よって、知り合ったエージェントを以下のような選抜基準で絞り込み、優秀なエージェントだけをストックするための期間は十分にとりたい。
- 早い段階で(できれば最初に)興味の湧く求人を出してくるか
- 面談(電話面談)の前にあなたの職務経歴書を読んでいるか
- 自分のキャリアをプラスに評価してくれているか
- コミュニケーションスタイル(電話・メール等)が合っているか
- 転職ありきで求人をおすすめして来ないか
転職エージェントの選び方について、詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてほしい。
>>転職エージェントの選び方の教科書|出会い方、絞り込み方、付き合い方まで
まとめ
転職サイトに登録だけしておくと、最初に求人がたくさん送られてくる。
この時、あなたのキャリアに全く合わない求人が送られてくることもあるが、気にしないことである。これがあなたの市場価値というわけではない。
転職エージェントの中には、転職サイトに登録したての人を狙って「ある程度の労働力になれば誰でもいい」というようなブラック企業の求人を送ってくるエージェントがいる。
このことを受けて精神的に萎えてしまい、「転職サイト自体がダメなのではないか」と思ってしまうようなことがないよう、念のため注意しておきたい。
ダメなエージェントはそれこそ無限にいますので、無視しましょう。返事をする必要もありません。
最後に、どの転職サイトが良いのかについては、以下の記事に全て書いたので参考にしてほしい。
>>おすすめ転職サイト・エージェント|プロ厳選の比較ランキング