しかしながら自分がやる必要を見いだせない業務や代わり映えのしない毎日に嫌気がさし、転職活動を始めました。
その結果、人材育成系のベンチャーで、すごく理念に共感できるところを見つけました。
ただし一つだけ懸念点があり、年収が大きく下がってしまうのです。
「転職で年収が下がる」ということについて、どう考えればよいでしょう?プロから見て、私は転職すべきですか?
今回のテーマは、「転職で年収が下がる場合の、転職すべき時、すべきでない時」である。
結論から言えば「年収が下がってでも明確に得たいものがあるのであれば、年収が下がる転職は全く問題ない」となるが、本文中ではもう少し詳しい例も挙げている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、年収が下がる転職であっても決断してよいケースが分かり、後悔する転職を避けることが出来るようになるだろう。
【前提】年収が下がる転職をした人は、約36%
まず前提として、転職で年収が上がった人、下がった人の割合はどうなっているのだろうか。
厚生労働省が転職者の実態調査を行っているので、その結果を記載しておこう。
賃金が転職によりどのように変化したかをみると、賃金が「増加した」が 40.4%、「減少した」が 36.1%、「変わらない」が 22.1%となっている。
上記より、転職者のうち3分の1強が、年収をダウンしてでも転職に踏み切ったということが分かる。
【結論】年収が下がる転職の際に気を付けるべき、たった一つのこと
年収が下がる転職では、一つだけ明確にしておかなければならないことがある。
それは、「下がる年収と引き換えに、転職で何を取りに(獲得しに)行くのか」ということである。
年収は、転職の際に気にすべき要素のうちの一つでしかない。
しかし、「給与がもらえなくてもその会社で働く」という人が(ほぼ)いないことからも分かるように、気にすべき要素の中でも非常に重要なものである。
結論として、「年収が下がってでも明確に得たいものがある」のであれば、年収が下がる転職は全く問題ない。
一つだけ補足をしよう。
「年収を下げてでも得たいものは、本当に年収を下げないと得られないのか?」は一度調べた方がいい。筆者の例を挙げよう。
筆者は26歳のとき日系大手企業で人事をしており、年収900万くらいもらっていたのだが、事業会社の人事から戦略コンサルタントに職種を変更したかった。
その際に、内定した2つの企業から言われたことを紹介する。
- とある日系コンサルティングファームでは、「職種が変わるのだから600万で。修行だと思ってほしい。すぐ上がるよ」と言われた
- 外資系戦略コンサルティングファームである某B社では、「900万なら維持可能。ボーナス含めてもう少し出ると思う」と言われた
年収を下げてでもコンサルタントの経験を得たかったのだが、年収を下げる必要はなかった。
こういったケースもあるので、転職サイトを駆使し、求人はなるべく幅広く見よう。
>>おすすめ転職サイト・エージェント|プロ厳選の比較ランキング
年収を下げてでも転職すべき4つのケース
年収が下がってでも明確に得たいものがあるのであれば、年収が下がる転職は全く問題ない、と書いた。
これが本記事の結論である。
しかし、「そうはいってもどういう場合に転職すべきで、どういう場合は辞めた方がいいのか、もう少し具体的に教えてほしい」という方もいるかと思う。
よって、ここからは「転職すべき」「転職すべきでない」典型的なケースをご紹介していく。
まず「転職すべき」代表的な4つのケースからである。
- 職種を変えたい場合
- ミッション・ビジョン・バリュー(企業理念)や事業に惚れ込んだ場合
- ストックオプションを狙っている場合
- やむを得ない事情で急いでいる場合
それぞれ簡単に解説していく。
【1】職種を変えたい場合
職種をまたぐ転職では、「年収を新卒レベルまで下げるとは言わないが、今までの専門領域ほどは出せない」となることも多い。
専門性等は職種ごとに異なるため、このケースではある程度年収が下がることも許容できる。
例えば、新卒と同じ等級に対し「残業込みで600~700万」を支払っている大企業は多いです。職種と企業規模を双方変えると、年収が上がるケースもあります。
あなたのキャリアプラン上、職種を変えたい、もしくは一時期経験したい職種があるのであれば、年収のダウンもアリだろう。
【2】ミッション・ビジョン・バリュー(企業理念)や事業に惚れ込んだ場合
大企業の人間が、ベンチャーのミッションや事業に共感して転職する例を多く見てきた。
多くの場合、年収はガタ落ちするのだが、これはアリだろう。
当然だが、多くの大企業もミッションを掲げているし、事業を営んでいる。
だが、どうしてもそれは「大きすぎて曖昧なミッション」や「自分が貢献しているのかどうか分からない巨大事業」になりがちである。
自分のモチベーション(≒やりがい)は、自分で守らなければならない。
今いる企業ではモチベーションを維持できず、転職先のミッションや事業になら夢中になれそうだと確信するのであれば、転職はアリだ。
憧れた人と同じような素敵な人間が会社に多いか、実際に憧れの人と働けるか、憧れの人がいつまでいるか、これら全てが「不明」であるためです。
【3】ストックオプションを狙っている場合
大企業からベンチャーに行く例が増えている。
この場合、年収はかなり落ちることが多く、強固な「ミッションや事業への共感」「やりがいが得られる確信」がないとおすすめしないが、例外もある。
それが、ストックオプションを得られる場合である。
私自身は、大企業でマネジメントと企画に集中し、部下を指揮して大きな仕事を成し遂げる方が好きだと、幾度かの転職を経て気づきました。
額面年収が減っても、数年後にストックオプションにより数千万~数億が得られるのであればアリだろう。
その際には、「上場の可能性」「時価総額見込み」については自分なりによく考え、「自分へのストックオプションの付与割合」と合わせて決断しよう。
【4】やむを得ない事情で急いでいる場合
最後は「やむを得ない事情で急いでいる場合」である。
これは、何らかの理由で「一刻も早く辞めないと」と思っているケースである。
辛くて一刻も早く逃げたい場合や、人間関係がしんどくて転職したい場合、転職したけどすぐに転職したい場合等である。
こういった場合は、年収など考えず、ある程度急いで転職活動を行う必要がある。
これらのケースについては、以下に詳しくまとめてあるので、是非参考にしてほしい。必ずあなたの助けになると思う。
世の中には、辞めた方がいい会社もたくさんある。辞めることに罪悪感を持つ必要は全くない。
年収を下げて転職すべきでない4つのケース
次は、「年収を下げてまで転職すべきでない」典型的なケースについてである。
それは以下の4つである。
- 明確に得たいものがない場合すべて
- 同じ職種で転職する場合
- 大企業から中小企業に転職する場合
- 最短でキャリアアップしたい場合
それぞれ簡単に解説していく。
【1】明確に得たいものがない場合すべて
繰り返すが、本記事の結論は「年収が下がってでも明確に得たいものがあるのであれば、年収が下がる転職は全く問題ない」である。
逆に言えば、明確に得たいものがないのであれば、基本的に年収を下げる転職はすべきではない。
あなたのキャリアにどの程度の価値があるか、それを測る外部からのモノサシが年収である。
まともな転職エージェントに、「あなたの前職での年収」を聞かない人間はいない。(どのタイミングで聞いてくるかはエージェントによるが)
年収により、最も簡単にあなたのキャリア価値を推定でき、かつ、そのキャリア価値を次の会社でも「前提とさせる」効果があるからだ。
【2】同じ職種で転職する場合
同職種で転職する場合には、基本的には年収アップを前提としたい。
同じことをやっていても会社によって年収が違うことはご存知だろう。
リスクをとって転職をするのであれば、年収を含めて取れるものはすべて取りに行く気概を持ちたい。
前項で述べた通り、年収は重要だ。
お金という意味だけでなく、転職市場におけるあなたの値札であり、ラベルなのだ。
繰り返しますが、明確に得たいものがあるのであればOKです。
【3】大企業から中小企業・ベンチャー企業に転職する場合
中小企業やベンチャー企業では、昇給という概念が薄い場合が多い。
よって、転職したときの年収が今後数年続く可能性もある。
大企業から中小企業・ベンチャー企業に転職する場合には、そもそも苦難が多い。
それに加えて年収まで下がってしまっては、モチベーションが破壊されてしまう人もいると思う。
ただし、実際に都会から村社会に移住するくらいの違いがあるので、合うか合わないかを以下の記事を読み考えてみると良いでしょう。
>>大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職で戸惑いがちなことと成功のポイント
【4】最短でキャリアアップしたい場合
最短でキャリアアップしたい、という野心をお持ちの方は、年収を下げている場合ではない。
たとえ職種を変えながらだとしても、常に年収をアップしながら転職していくことは可能だ。
コツは、(どの業種からでも入りやすく、どの業種にも行きやすい)コンサルをはさむことである。
人によっては20代後半で上場企業の執行役員、30代前半で上場企業の取締役になることも十分可能でしょう。
年収が上がる転職をするための、3つの方法
年収が下がる転職を既に決断している方もいるだろうが、「やっぱり年収を上げる転職をしたい」という方もいるだろう。
最後にその方法を3つ、記載しておく。
- 同一職種で、より社格の高い企業に行く
- 同一職種で、外資系に行く
- 年収の高い業種/職種に移る
補足していく。
【1】同一職種で、より社格の高い企業に行く
より大手の企業に行くことで、同じ仕事をしていても給与が高くなる。
私が大手日系企業の人事をしていたとき、仕事のできないヒラの中高年層は多かったが、それでも年収800~1000万円をもらっていた。
【2】同一職種で、外資系に行く
今やっている業務に価値があるなら、年功要素よりポジションで年収が決まる外資系に行けば給与が上がる。
外資系も視野に入るのであれば、まずはエージェントに外資系の求人状況を聞いてみるといい。
外資系に強いJACリクルートメントのエージェントはおすすめである。
外資転職に関してより詳しく知りたい方は、「外資転職の教科書」を参考にしてほしい。
【3】年収の高い業種/職種に移る
年収の高い業種/職種に移るという手もある。
例えば元の職種や業界が問われないものに、コンサル業界/コンサルタント職種がある。
コンサル業界に移り、職種もコンサルタントに変えると給与が上がる人は多いだろう。
出世と転職を組み合わせれば、並みの副業ではたどり着けない「安定感」と「速さ」で年収を上げることも出来ます。
まとめ
「年収が下がってでも明確に得たいものがある」のであれば、年収が下がる転職は全く問題ない。
ただ、得たいものが見つかっていないのであれば、出来る限り年収は維持して転職した方がいい。
下がった年収をすぐに取り返すのは簡単ではないし、ずっと同じような年収帯で過ごすことになる人も多い。
あなたの得たいものを得るためには、本当に年収を下げなければならないのか?
年収を下げずにあなたの得たいものを得られる求人は本当にないのか、再度転職マーケットに問うてみてほしい。
「あなたの条件を満たす日本の求人は全て見つける」ような気持ちで、転職サイトや転職エージェントを徹底活用しよう。
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