そこで一つお伺いしたいのですが、転職時期としておすすめのタイミングはありますか?
新卒時に氷河期だった先輩の話を聞いて、就職にタイミングは大事だなと思いました。
転職も、就職と同じでしょうか?いつ転職すべきかについて教えてください。
今回のテーマは「転職時期としておすすめの時期やタイミング」である。
結論から申し上げると「転職は時期やタイミングによって難易度が全く異なるため、時期やタイミングについて知っておくのは重要。時期やタイミングには月・年代・景気・ライフステージの軸があるため、それぞれ解説していく」という内容の記事になっている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、いつ転職活動をすれば最も有利な条件で転職できるのかかが分かり、キャリアアップに寄与するとともに、失敗を防げるようになるだろう。
結論
冒頭にも述べた通り、時期やタイミングには月・年代・景気・ライフステージの軸があるため、本記事ではそれぞれ分けて回答する。
結論から述べると、以下である。
- 【月】強いて言えば2~3月だが、大きくは影響なし。常時緩くがベスト
- 【年代】最初の転職は20代~30代前半まで
- 【景気】好景気。ただし不況でも良い求人は出るので、常時緩くがベスト
- 【ライフステージ】独身もしくは結婚(子供なし)のタイミングがベスト。子持ちは影響少ないが、妊娠は影響あり
それぞれ解説していく。
【月】強いて言えば2~3月だが、大きくは影響なし。常時緩くがベスト
転職時期やタイミングをいつにすべきか疑問を持つ方の多くが「1年のうち、何月に転職するのがベストなのか?」について考えているかと思う。
結論から言えば2~3月がベストだが、そこまで大きな影響があるわけではない。
多くの会社は4月を年度始めとしており、そこに向けて事業計画が組まれ、組織体制が検討される。
その組織体制を実現する中で足りないポジション・足りない人材がいる場合、それを充足するための採用は2~3月に集中的に行われることが多い。
ただし、これは「どちらかといえばその時期が良い」というレベルの話であって、大きくは影響がない。
組織変更や人事異動が4月に多く、その直前に求人ニーズが発生するのは確かだが、採用ではなくローテーション・配置換えで埋める場合も多い。
また、選択と集中でAさんをBさんのポジションに異動させ、Aさんの後任は採らないケースもあります。これらのケースでは新たな求人ニーズは発生しません。
実際に新たな求人ニーズ(空きポジション)が発生する1番の理由は、やはり「退職」である。
そして、退職はいつ起こるか分からない。よって当然ながら、あなたの理想のポジションがいつ空くのかは分からないのである。
だから筆者は、常時緩く転職活動をする「ゆるゆる転職」を勧めている。
2~3月に求人が増えたとしても、あなたに合ったポジションが出るかどうかは分からない。若干確率が上がるくらいだろう。
カジノのルーレットのように「2月に賭けたら2月に転職しなければならない」訳ではないので、1月から12月のすべてに賭けておくのが合理的である。
【年代】最初の転職は20代~30代前半まで
いつ転職すべきかについて、次は「年代」の軸で話していこう。
「転職するなら、何歳ごろがいいのか?」という問いについてである。
この問いに対する答えについては、大体の人の予想を裏切らないかと思う。
「最初の転職は20代~30代前半まで」である。
「20代での転職は厳しい?「ありえない」と面接官が言い切る理由5つ」という記事に、以下のような20代転職のメリットを書いている。
- キャリアチェンジしやすい
- 育成してもらいやすい
- ラーニングアジリティーが高まる
- 失うものが少ない
- 給与が上がりやすい
これらのメリットは年齢とともに弱まり、30代後半になるとほぼ消失してしまう。
実際、「30代での未経験職種の転職で絶対におさえておきたいことを人事プロが解説」にも書いた通り、以下の理由で30代(特に後半)での未経験職種への転職は難しい。
- 未経験ということそのもののハードルの高さ
- 現職種への慣れとラーニングアジリティの低下
- 面接官からの厳しい目線
経験のある職種であれば30代でも十分に転職できるが、それでも「30代後半で初めての転職」となると厳しくなってくる。
以上の観点から、最初の転職は20代~30代前半までがベストなのである。
【景気】好景気。ただし不況でも良い求人は出るので、常時緩くがベスト
氷河期に就職した年代やそれを目の当たりにした方を中心に、「景気サイクル的にはいつが良いタイミングなのか?」を気にする方もいるだろう。
これは、就職でも転職でも全く同じで「好景気」がよい。理由は以下である。
- 事業拡大や新規事業の開始が多く、空きポジションが多く出てきやすい
- 人員予算(バジェット)が緩く、増員による空ポジションが出てきやすい
- 人員予算(バジェット)が緩く、年収アップになるように調整してくれやすい
- 目標採用人数が多いことにより選考基準が下がるケースが多いため入社しやすい
まとめると、好景気には求人が増え、入社難易度が下がり、年収アップ転職の難易度も下がるのである。
求職者(転職活動をしている人)からすれば、良いことづくめなのである。
なお、この「景気」という要素に関連して、転職の方が就職より良い点が2つあるので補足しておく。
転職の良いところの1つ目は、新卒就職と違い、転職活動では自分で時期を選べることだ。
そのため、好景気の時期を狙って転職活動をすることが出来るのである。
2つ目の良いところは、新卒就職は凍結できるが、退職者の補充は完全には止められないということだ。
そのため、不況でも良いポジションが出て来ることは良くある。
上記2つのメリットに鑑みると、「基本は好景気を狙うが、不況でも諦めない」のが景気を踏まえた転職時期の基本戦術であるように思われる。
「何月がよいか」の項でも述べたが、「常時チャンスは窺っておく」が正解なのだろう。
【ライフステージ】独身もしくは結婚(子供なし)のタイミングがベスト。子持ちは影響少ないが、妊娠は影響あり
最後に、「ライフステージのどのタイミングが転職にベストなのか?」である。
年代的なベストが20代~30代前半であることもあり、様々なライフイベントと重なってしまう方も多いため、この軸でも解説していく。
非常に一般的な例を言えば、以下のライフステージの中でどこがベストかという話である。
- 独身
- 結婚(子供なし)
- 妊娠・出産 ※女性のみ
- 子育て中
ベストは①(独身)または②(結婚しているが子供はいない状態)である。
「転職を成功させるには、転職した後がカギ。転職直後にとるべき「6つの行動」」にも書いた通り、転職後は大きな環境変化のストレスがかかる上に、以下のようにやるべきことが多い。
- ビジネスのキャッチアップよりも先に、風土に馴染むことに全力を注ぐ
- 人間関係を把握し、主流派に属する
- 過去のチャットや共有フォルダを見る
- 転職直後のパフォーマンスは120%を出しきる
- ハネムーン期、失望期、ニュートラル期のサイクルを意識する
- 自分と周囲の力量差がある分野で力を示す
すでに「子育て中」であれば大きな影響はない(夫婦の協力体制次第)が、「妊娠・出産」は注意である。
妊娠ステータスにある場合は、入社後の産前産後休業や育児休業による離脱が見えているため、採用をためらうマネージャー・面接官は多い。
妊娠中の方は、基本的には「今すぐ欲しい」「猫の手も借りたい」という補充の場合にしか採られない。
このことから、何らかの深刻な問題を抱えている部署に入ってしまうリスクも高めなので、妊娠中の転職活動はあまりおすすめしない。
最後に断っておくが、上記には「もし選択できるのであれば」という理想論の面もある。
実際には子供は授かりもので時期が読めない面もあるだろうし、筆者自身、「妊娠中で、入社してちょっとしたら産休が確定している」という女性部下を採ったこともある。
まとめ
本記事の結論は以下である。
- 【月】強いて言えば2~3月だが、大きくは影響なし。常時緩くがベスト
- 【年代】最初の転職は20代~30代前半まで
- 【景気】好景気。ただし不況でも良い求人は出るので、常時緩くがベスト
- 【ライフステージ】独身もしくは結婚(子供なし)のタイミングがベスト。子持ちは影響少ないが、妊娠は影響あり
上記のうち、「年代」と「ライフステージ」については誰もが選べる要素ではない。
一方、残りの「月」と「景気」については誰もが選べるが、最善手は「常時緩く」だと解説した。
こう考えていくと、「自分にとって最高の求人を探して選考に通る」という意味では、常時緩く転職活動をしておくのが正解だろう。
年代とライフステージのベストはあるが、「20代に戻りたい」「独身に戻りたい」と言っても無理なので、過度に気にしすぎない。
有利な月や景気はあるが、それ以外の月や景気でも「最高の求人」が出て来る可能性は十分あるので、常にアンテナは張っておく。これが誰にでも出来る本当のベストではないだろうか。