特に不満はないのですが、転職を考えています。
最近同期が転職ラッシュなこともあり、30代のうちに一度くらい転職しておかないとまずいのではと思っています。
不満はないけど転職したいという場合、注意点等はありますか?アドバイス頂けるとありがたいです。
今回のテーマは「大きな不満はないけれど転職を考えているという人への注意喚起と対処法」である。
結論から申し上げると「もし本当に不満がなく、ポジティブな目的もないのであれば転職はおすすめしない」という内容の記事になっている。
この点については、本記事で後ほど解説していきます。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、特に不満がない中で転職することのリスクと、その場合の正しい考え方・対処法が分かり、適切な転職が出来るようになるだろう。
【前提】転職はハイリスク。なんとなくの転職はおすすめしない
「【転職はハイリスク】人事プロが教える、転職より前に検討すべき3つの選択肢」に記載したが、転職は1/4の確率で失敗する。
また、半分以上の確率で「明確な失敗でも成功でもない」という状態になる。
- 約4人に1人(26.1%)が「失敗」
- 約6人に1人(16.4%)が「成功」
- 残り全て(57.4%)が「どちらでもない」
明確に「今がマイナスの状態」というのであれば成功率も高まるだろうが、安易に転職して失敗しては目も当てられない。
転職はハイリスクなのである。完全に「なんとなく」転職するというのはおすすめできない。
一つ例を出そう。
例えば、大企業からベンチャーや中小企業に転職した場合、以下のような事態が起こり得る。
- 基本は村社会
- ストックオプション格差
- 古株・お局のナゾ権力
- 暗黙のアンタッチャブル(固定カースト制)
- 大手では見られないヤバい社員
- ローテ?キャリア?何それ
- 部署が消え去りがち
- 事業も消え去りがち
- 何でもやらされがち
- 評価が本当に「好き嫌いの評価」
- 過度にフレキシブルな年収
詳しくは「大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職で戸惑いがちなことと成功のポイント」に記載したが、特に不満はないけれど転職してみた結果、上記の事態に苦しめられることを想像してほしい。
場合によっては、今までの会社が天国に見えてくるかもしれない。
繰り返しになるが、転職にはリスクがつきものなのである。
だからこそ、「【転職はハイリスク】人事プロが教える、転職より前に検討すべき3つの選択肢」という記事を書いたのである。
【実際】ポジティブな理由での転職か、ネガティブだが言語化できていない理由での転職が多い
前項にて、不満はないがなんとなく転職するのはやめたほうが良いと書いた。
しかしながら、実際に「不満はないけど転職を考えている」という方の多くは「なんとなく」ではなく以下の2つのパターンで転職を検討している。
- 不満ではなく、ポジティブな理由でキャリアアップ・年収アップを考えている場合
- ネガティブな理由があるのだが、漠然としており言語化できていない場合
それぞれ簡単に解説する。
不満ではなく、ポジティブな理由でキャリアアップ・年収アップを考えている場合
不満はないけど転職を考えている場合の一つ目が、不満ではなくポジティブな理由で転職を検討している場合である。
スキルの習得や経験の幅の拡大、出世機会の追求など、前向きな理由がこれに当たる。
「32歳までに1度は転職すべき8つの理由」にも早期に転職する以下のメリットを書いたが、今後はビジネスパーソンにとって転職経験が必須の時代になる。
- ラーニングアジリティーが高く保たれており、次の会社でも活躍できる可能性が高い
- 広い視野、複眼的な視点を持てる
- 専門性を確立し、実績を出し人脈につなげるベースが出来る
- 天職に就ける確率が倍になる
- 人間関係構築力が上がり、マネジメント力が養われる
- 転職力そのものが上がり、キャリアリスクを回避する能力が高まる
- 早期に素晴らしい出会い(メンター/ロールモデル等)が得られる確率が上がる
- 生涯年収を底上げできる
前向きな理由で転職するのであれば、それに越したことはない。
ネガティブな理由があるのだが、漠然としており言語化できていない場合
不満はないけど転職を考えている場合の二つ目は、不満(ネガティブな転職理由)はあるのだが言語化できていない場合である。
「ネガティブな転職理由」というと、言葉通りのマイナスイメージを抱く人が多いかもしれない。
しかしながら、以下を見ていただければ分かるとおり、そもそも一般的な退職理由の多くは「ネガティブ」なものである。
- 年収や肩書、市場価値を上げたい
- やりたい仕事がある
- 人間関係が悪い
- 会社の将来性に不安がある
- 職種の将来性に不安がある
- 社風が合わない
- ブラック企業である、ハラスメントがある
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい
- ローテーションにより専門性が身に付かない
- 単純作業やムダな業務が多く、つまらない
- ヒエラルキーがあり、若手である自分の意見が受け入れられない
- 働かない人間や無能な人間がおり、腹立たしい
- 飲み会やイベントがくだらない
- 評価や人事制度に不満がある(年功序列等を含む)
- 勤務地や転勤制度に不満がある
- 著しくヒマである
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない)
- 介護や子供の教育などの個人的な事情がある
インターネット上には、転職に関する情報が氾濫している。そこから、多くの人は転職に潜むリスクを感じ取っている。
つまり、そのリスクを甘受してでも転職するという場合には、喫緊で具体的な課題とまではいかずとも、何かしらの課題を抱えている場合も多いのである。
結論として、ネガティブな転職理由であること自体は問題ない。
しかしながら、漠然としたまま、曖昧なままのネガティブな転職理由では、転職によってその課題を解決することが難しい。
よって、その漠然とした理由を言語化しておくことが重要である。この方法については次項の対処法の中で解説する。
【対処法】不満はないけど転職を考えている人がしておくべきこと3つ
不満はないが転職を考えている人が転職準備としてしておくべきことは、以下の3つである。
- ポジティブな転職動機を確認しておく
- 漠然とした不満や違和感を言語化する
- 大きな不満がないなら円満退社に努める。転職活動でも押し出す
それぞれ簡単に解説する。
ポジティブな転職動機を確認しておく
ポジティブな転職理由は、実際にあるかないかにかかわらず転職活動の際に必要である。
もともとポジティブな転職理由で転職を検討していた方はその理由を使えばよいが、ポジティブな転職動機がない方は以下を参考にしてほしい。
- やりたい仕事がある
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい
- ローテーションにより専門性が身に付かない
- 勤務地や転勤制度に不満がある
- 介護や子供の教育などの個人的な事情がある
上記は、面接官から「ポジティブ」または「ポジティブではないが仕方がない」とみなされやすい退職理由である。
ですから、多少であれば、面接でネガティブな退職理由を出しても大丈夫ですが、ネガティブな退職理由だけだと相当不利になります。
漠然とした不満や違和感を言語化する
「不満はないけど転職を考えている」という方は、漠然とした不満や違和感を抱えていることが多い。
これは是非、言語化しておこう。
「今の不満」を明確に言語化しておくことではじめて、「今の不満がない職場」を探し始められるようになる。
言語化が難しい方のため、一般的な退職理由の一覧を再掲しておくので、参考にしてほしい。これらの中に、あなたの抱える不満や違和感として当てはまるものはないだろうか?
- 年収や肩書、市場価値を上げたい
- やりたい仕事がある
- 人間関係が悪い
- 会社の将来性に不安がある
- 職種の将来性に不安がある
- 社風が合わない
- ブラック企業である、ハラスメントがある
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい
- ローテーションにより専門性が身に付かない
- 単純作業やムダな業務が多く、つまらない
- ヒエラルキーがあり、若手である自分の意見が受け入れられない
- 働かない人間や無能な人間がおり、腹立たしい
- 飲み会やイベントがくだらない
- 評価や人事制度に不満がある(年功序列等を含む)
- 勤務地や転勤制度に不満がある
- 著しくヒマである
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない)
- 介護や子供の教育などの個人的な事情がある
または、以下の記事が参考になるかもしれない。筆者が人事のプロとして見ている中で、「人がどんどん辞めていく会社」の共通点について解説している。
>>人がどんどん辞めていく会社にありがちな「7つの社風」とは
大きな不満がないなら円満退社に努める。転職活動でも押し出す
折角「特に大きな不満はない」と感じての転職なのだから、それを有効活用しよう。
つまり、「不満がないが転職した」と現職の上司や同僚、人事に思ってもらうことで、円満退社をするのである。
円満退社をすることには、以下のメリットがある。
- 転職先での退職理由としても活用できる
- 退職までに感じる心的負担が減る
- 前職の人脈(人的ネットワーク)を維持できる
- 今後の転職活動においてリファレンスチェックを受けやすくなる
円満退社をすることにより直近の転職活動でも自信を持って転職理由を語れるし、今後の人的ネットワークの維持というメリットも見逃せない。
通常、多くのビジネスパーソンは大きな不満を抱えて転職していくものである。
もし大きな不満がないのに転職を検討しているのであれば、それは珍しいことである。そのメリットを最大限活用すべく、円満退社の準備を進めよう。
不満はないけど転職を考えている人にオススメの転職活動手法
不満はないが転職を考えている、つまり切迫感がない人にオススメの転職活動手法が、ゆるゆる転職である。
ゆるゆる転職とは、一言で言えば「転職サイトに登録して、あとは放置」する転職活動の手法である。
これをすると、放置している間に良い求人と良い転職エージェントがストックされていく。
しかし、ゆるゆる転職では別です。転職活動に本気になった時には、すでに良い求人が集まっている状態となり、すぐに結果を出せます。
これは、転職活動を本気でやらなければならないような緊急の事情のない方にお勧めの方法です。
まとめ
不満がないのに転職する場合というのは、大きく3パターンある。
- 不満ではなく、ポジティブな理由でキャリアアップ・年収アップを考えている場合
- ネガティブな理由があるのだが、漠然としており言語化できていない場合
- 本当に「なんとなく」の場合
③の場合、転職はやめておくべきである。
①や②の場合、まずは転職のリスクを知ってほしい。リスクを理解した上でも転職するというのであれば、今後転職経験が必須な世の中になっていくのは間違いないので、応援したい。
転職する場合、すでに述べたゆるゆる転職か、もしくは転職エージェントを使っての本気かつ王道の転職をおすすめする。
後者のやり方は、こちらに全て書いた。
>>転職エージェントの選び方の教科書|出会い方、絞り込み方、付き合い方まで