20代後半の会社員です。
あと数年で30代になるのですが、20代のうちに転職すべきかどうか、悩んでいます。
また、20代のうちに転職しないと具体的にどうなるのかについても気になっています。
人事のプロとして、教えていただけないでしょうか?
今回のテーマは「20代のうちに転職すべきかどうか、そして20代のうちに転職しないと具体的にどうなるのか」である。
結論から申し上げると「20代のうちに転職することにはメリットが大きいが、全員がすべきというわけではない。本記事では①20代のうちに転職すべき人、すべきでない人と、②転職せず30代になったらどうなるか、の2つについて解説していく」という内容になっている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで20代のうちに自分が転職すべきかどうかが明確になり、ある程度確信をもって理想のキャリアプランを歩み出せるようになるだろう。
20代のうちに転職すべき人、すべきでない人
20代のうちに転職することのメリットは、以下の通りいくつか存在する。
- キャリアチェンジしやすい
- 育成してもらいやすい
- ラーニングアジリティーが高まる
- 失うものが少ない
- 給与が上がりやすい
20代のうちに転職すべき人は、上記のようなメリットを享受したい人だと言ってもいいが、それだけではやや抽象的なので、より具体的に挙げる。
20代のうちに転職すべき人は、以下のような人である。
- ジェネラリストを育成する志向の会社におり、危機感を感じている人
- 今の会社が「ぬるい」と感じている人
- 斜陽業界にいる人
- 内部昇格が少ない会社にいる人
- 上司や先輩のようになりたくない人
- 今の会社に居続ける自信がない人
逆に、20代のうちに転職すべきでない人は、上記のどれにも当てはまらない人である。
特に、ジェネラリストを育成する志向の会社で社長になりたい場合、内部昇格しか道がないことが多いため、そういう人は転職してはいけない。
ジェネラリストを育成する志向の会社におり、危機感を感じている人
複数の職種をローテーション(定期移動)させて、いわゆるジェネラリスト(ゼネラリスト)を育成する志向の会社がある。歴史のある日系企業(商社など)に多い。
このことで何の専門性も身につかないと危機感を覚えている人は、転職すべきである。
昨今はこのタイプの危機感から転職する20代が増えている。
三菱商事や三井物産のような一般的には素晴らしい会社でも、会社のゼネラリスト志向に危機感を覚えて転職をする人は多い。
実際、ジェネラリストになってしまうとその会社以外では通用しなくなるため、20代のうちに転職しておくのがおすすめである。
>>スペシャリストかゼネラリストか。ゼネラリストを選ぶべき唯一の場合を人事プロが解説
今の会社が「ぬるい」と感じている人
今の会社がぬるいと感じている人も、20代のうちに転職した方が良い。
現在の環境がぬるいと感じられているのは、ある意味で素晴らしいことだ。しかし、その感覚があるのは今だけかもしれない。
今後30代になるとだんだんとその違和感が消えていき、居心地がよいと感じ始める。
そうなってしまったら転職ができず、一生その会社にしがみつくしかない人間になっている。
斜陽業界にいる人
鉄鋼業界や出版・印刷業界が典型例だが、今後斜陽になっていく業界にいる人は今のうちに転職しておくのが良いだろう。
沈みゆく船からは、どれだけ早く脱出できるかが勝負である。
山一証券の破綻などが典型例だが、社員全員が脱出しなければならない事態になった時には、同じ会社からの流出者が多すぎて転職が極端に難しくなるからである。
内部昇格が少ない会社にいる人
内部昇格が少ない会社、または内部昇格がほとんどできない会社にいる人は、20代のうちに転職しておいた方がいいだろう。
大企業の子会社が典型例だが、こういった会社では30代・40代と歳を経ても一定以上の役職(ポジション)は親会社からの出向者に独占され、プロパー社員は出世できない。
また、競争が激しくないことが多いため、転職できるようなスキルがつかず、30代以降に転職できなくなっている可能性が高い。
上司や先輩のようになりたくない人
- 同じ会社にいる上司や先輩は、あなたの未来を映す鏡である。
- 転職するのであれば、20代が最も有利である。
この2つの事実を重ね合わせると、今いる会社の上司や先輩のようになりたくない人は20代のうちに脱出しておくのが良いと言える。
今の会社に居続ける自信がない人
今の会社に居続ける自信がない人も、20代のうちに転職しておくべきである。
そもそも今後はほとんどの人が転職せざるを得ない世の中になる。すでに現在の会社に居続ける自信がない人が、今後転職を迫られる可能性は非常に高い。
そして以下の記事に書いた通り、転職するのであれば20代で転職することがベストなのである。
>>20代での転職は厳しい?「ありえない」と面接官が言い切る理由5つ
【良い未来・悪い末路】20代のうちに転職しないと30代以降どうなるのか?
20代のうちに転職しなかった場合、30代以降にどうなってしまうのか。
この問いに対する答えを一言で言えば、現在の会社の上司や先輩のようになる可能性が高い。
人事として20代のうちに転職しなかった人を数多く見てきた経験から、良い未来も悪い末路も含めて具体的に言うと、以下の通りである。
- キャリアの幅と可能性が狭くなる
- 現在の会社でしか通用しなくなっていき、会社と運命を共にすることになる
- 職種によっては専門性が一定程度で頭打ちになる
- 今の会社で出世した場合、社長や役員になれる可能性がある
- 現在のコミュニティの中で居心地よく生きていくことが出来る
キャリアの幅と可能性が狭くなる
20代のうちに転職をしなかった場合、1つの会社で10年程度、もしくはそれ以上を過ごしてきたということになる。
適応能力(ラーニングアジリティー)が落ちた30代ではじめての転職となると、転職という大きな変化に耐えられる人なのかどうか、面接官からすると不安になる。
さらに、10年もの間、同じ文化の中である程度同じ仕事をしてきたとすると、転職先の幅も限られてくる。業界、職種が固定化するかもしれない。
総じて、20代のうちに転職しなかった場合には、キャリアの幅と可能性が狭くなると言える。
現在の会社でしか通用しなくなっていき、会社と運命を共にすることになる
これは人事として顕著に感じることだが、20代のうちに転職しなかった場合、20代を過ごした会社の常識がビジネス界全体での常識だと感じ始める人が多い。
大きく変化する機会を20代で経験しなかったため、適応能力や柔軟性、視野の広さが失われていくのである。
その結果、現在いる会社でしか通用しない人材というものが出来上がる。こういった人は、当然ながら現在の会社と運命を共にすることになる。
現在の会社が盤石であれば問題はないが、そうでない場合は悲惨なことにもなりかねない。
職種によっては専門性が一定程度で頭打ちになる
複数の会社で幅広い経験を積むことが、専門性としてもプラスになる職種は多い。
例えば筆者の専門性である「人事」という職種で言えば、様々な社風・様々な人事制度・様々な人事オペレーションを経験してこそ、初めて一人前になれるものである。
よって、20代のうちに転職しなかった場合、職種によっては専門性が一定程度で頭打ちになってしまう。
この結果、中途採用で入社した人にスキル的に負けてしまったり、中途採用で年下の上司が入ってきたりする例がよく見られる。筆者自身、今までの部下の大半は年上である。
今の会社で出世した場合、社長や役員になれる可能性がある
20代のうちに転職しないことには、メリットもある。そのうちの一つが、出世の天井がなくなることである。
新卒からずっと同じ会社にいる人、いわゆる生え抜き(プロパー社員)しか社長や役員になれない会社も多い。
転職しないという選択肢をとることで、そういった会社でトップに立つ可能性を残すことが出来る。
現在のコミュニティの中で居心地よく生きていくことが出来る
新卒時の同期や、新卒で入った会社の人間関係は得難いものである。
もしそのように感じているのであれば、転職してしまうことで失うものは大きいかもしれない。
転職したら、タメ口で話せる同期はいなくなる。今後は、基本的に外から来た外様(とざま)としての人生になるし、職場で友達が出来る可能性も低くなる。
現在のコミュニティの中で居心地よく生きていきたい場合には、転職しないという選択肢もありである。
まとめ
20代のうちに転職すべきか。会社と個人の関係の変化、そして労働市場の動向からすると、9割以上の方にとっては「20代のうちに転職すべき」だと考える。
以前に「20代で転職の書類選考に通らないのには明確なワケがある」という記事を書いたが、30代以降は年齢だけで落ちることも出てくる。
20代という有利な年齢で転職できることは、チャンスなのである。
チャンスを使わない自由も当然あるのだが、自身が後悔しないためにも、使わないならその明確な理由を持っておきたい。