早速エージェントに言われて企業に提出する書類を作ったのですが、結構落ちています。
本当に人事って書類選考で職務経歴書や履歴書を全部見ているんでしょうか?
仮に全部見ていない場合、どのポイントを見ているんでしょうか?
今回のテーマは「書類選考(職務経歴書・履歴書)において、面接官が見ているポイント」である。
結論から申し上げると、ご推察通り「全部は見ていない」というのが本音である。本記事では、書類選考において実際に見ているたった4つのポイントにつき、いつも通り実務家・専門家としての実際を記載していく。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
全ての「建前」を捨て、筆者が見ている4つのポイントに絞って「職務経歴書」「履歴書」のスクリーニングにおける現実を本音でお伝えする。
お怒りになる方もいらっしゃると思いますが、現実をお伝えしていきます。
例えばですが、「学歴フィルターなんて許せない!」「年齢差別するな!」という方がこの記事をご覧になるのはお勧めしません。
書類選考で最大手の人事が見ているたった4つのポイントとは?
転職活動に必要な書類である「職務経歴書」「履歴書」。
転職活動をしている方からすると書くだけで一苦労で面倒なこの書類だが、人事はいくつかのポイントに絞って見ている。
つまり、逆に言えば、その特定のポイント以外はあまり見ていないのである。
(あくまで書類選考時についてである。面接官として面接の直前に再度読み直すときは、結構細かく見る)
以下の記事では、「書類選考で落ちる原因になりうる項目」を網羅的に説明したが、実際には今から述べる4つのポイントでOK判定が出れば、面接に呼ばれるのは間違いない。
>>転職活動で書類選考が通らない理由は?人事面接官が本音で回答
今でこそ筆者自身が選考をしますが、新卒入社時は人事の下っ端として、数々の「書類選考で落とした根拠」を人事部長からヒアリングしていました。
個人差はあれど、見ているポイントはこれから述べる点に絞られます。
ここまで読んで、提出した「職務経歴書」「履歴書」を人事が全て読んでいないということに怒りを感じられた転職者の方もいるだろう。
しかしながら、我々も仕事でやっている。大手企業には、毎週のようにたくさんの求人一つ一つに対し、多くの応募書類が届く。
ここから「面接に呼ぶ人を決める」という仕事において効率的に成果を出すため、「見込みなしと判断しやすいポイント」を中心に見るというのは重要なのである。
相手の全てを知らなければならないとしたら、少なくとも面接選考に全員を呼ばなければならなくなる。
しかしながら、それは無理というもの。よって「入社可能性が高い人材を効率的に通す」というのが書類選考の現実的な目標となる。
前置きが長くなったが、書類選考で人事が見ている4つのポイントをご紹介しよう。
- 年齢
- 学歴
- 職歴(社歴)
- 実績
他にも性格や英語力、性別、志望動機、資格等々あるが、それは多くの場合、書類選考の重要な要素にはならない。
まず、国籍や性別は、そもそも公式に理由にできません。性格や志望動機は、面接で確認したほうが良いです。
資格や英語力は仕事によっては必須ですが、逆に言えば一部の仕事「以外」では若干の加点要素にしかなりません。
いずれも、上記4つのポイントでダメだった場合に挽回できるほどのインパクトはないのです。
ここから、書類選考で確認される重要なポイントがなぜ上記の4つなのか、そしてその対策(そのポイントにおいて劣っている場合の挽回策)についてそれぞれ記載していく。
ポイント1(履歴書):年齢
まず見るのは年齢(主に履歴書に記載)である。
マネージャーの求人でもない限り、人気企業では35歳くらいまでの人しか採らず、遅くとも39歳くらいまでかと思う。
それより年上の方は、大手企業、人気企業では自動的に弾く。
理由は色々あるが、以下が主なものだろう。
- 多くの求人が担当者であり、社内秩序的にターゲットが20代後半~30代前半
- 30代前半~30代半ばのマネージャーも増えてきており、使いにくい「年上の部下」をわざわざ採用したくない
- 若い方が社風になじみやすく、専門性も薄いため「つぶし」がきく
- 一生ヒラの人は採りたくない。マネージャーになるための成長のリードタイムが長くある人を採りたい
- 年齢構成を是正したい。それでいて就職氷河期世代(2020年時点で40代)ではなくリーマン後の世代(2020年時点で30代前半)を増やしたい
もちろん企業によっても違うが、大手であればあるほど、人気であればあるほど、年齢は気にする。
年齢は足切りに用いる要素であり、ここで”×”となった場合には、極端に言えばポイント2(学歴)以降は全く見ずに不合格となる。
逆にここで”〇”となった場合には、ポイント2に進む。
挽回策は?
率直に申し上げて挽回が難しい項目である。
「現実的かどうか」「そうしたいかどうか」はともかく、以下2つが挽回の方向性かと思う。
- 一般的に見て「年齢に応じた職位」と思われる職位まで昇進してから転職する
- 「高めの年齢の方でも来て欲しい」という人気のない企業を選ぶ
ポイント2(履歴書):学歴
年齢要件をクリアしたら、次に見るのは学歴(主に履歴書に記載)である。
学歴を見る理由については荒れるので突き詰めないが、地頭や準備をする能力(努力)の担保が一般的な理由だろう。
さて、学歴を見ることの是非はこの記事のテーマではないので、早速だが書類選考における基準を述べる。
筆者は主に日系大手(世界的なコングロマリット企業)で書類選考をしていたため、そこでの感覚をご紹介する。
- 国内外のトップ大(国内:いわゆる東京一工、海外:ハーバード、スタンフォード等)→ ◎
- 東大京大以外の旧帝大~私大上位クラス(阪大、早慶等)→ 〇
- 私大中位クラス(いわゆるMARCH等)→ △
- それ以下→ ×
ここで”◎”であれば、余程のことがない限りは書類選考は通す。
ここで書類選考は終了、「面接にお越し下さい」となる。
ここで”〇”であれば、次のポイント3(職歴)のチェックに進む。
難しいのが、ここで”△”の方である。
この場合にも次のポイント3(社格)及びポイント4(実績)をチェックするが、それらが余程良くない限り落とす。
ここで”×”の場合には、ポイント3以降は見ずに不合格となる。
転職における学歴の重要性や挽回策については、以下の記事に全て書いた。学歴が弱みだと思っている方は、是非参考にしてほしい。
>>転職で学歴は〇番目に重要!学歴が低い場合の対策を面接官が本音で回答
挽回策は?
挽回策は、上記の”△”の判断がヒントになるかと思う。
つまり、「少しでも上位の会社に移り、そこからさらに上位の会社に移る(職歴・社歴を徐々に良くしていく)」、そしてその過程で「圧倒的な実績を上げる」ということになる。
もちろん、そもそも「学歴に関わらず稼げる職業に就く」というのも志向や価値観に合えばお勧めである。
典型的なのが歩合制営業、特に外資系である。
外資系生命保険会社であるプルデンシャル生命のトップ営業マンは、東大閥と言われる日立の技術者の軽く10倍以上を稼いでいる。
ポイント3(履歴書・職務経歴書):職歴(社歴)
職歴(通常、職務経歴書・履歴書の双方に記載)に関しては、どんな職務だったかというよりはどんな会社を渡り歩いてきたかが重要だ。
つまり社歴、その中でも「過去に在籍していた企業の社格(業界内でのランク付け)」が重要である。
乱暴に言えば、全ての会社に内定したときに、多くの人(平均的な志望者)が行きたい順に社格が高いと考えてよいかと思っています。
受験企業と同格、または上位の企業から来たのであればこの項目はクリア、基本的には面接に呼ぶ。
社格として「一つ下」または「ベンチャー企業(社格がつけられない)」の場合には、どんな仕事をしてきたかによる。
よって、次の実績(ポイント4)に進む。
社格として「二つ下、またはそれ未満」、または「良く知らない、かつベンチャーでもない企業」の場合には、基本的には不合格である。
ここまで来たら実績も見てみると思うが、そこで日本トップクラスの実績でも出していた場合以外は不合格とする。
公務員の場合は?
国家一種、いわゆる官僚の場合は、いわゆる超一流企業と同レベルの社格だと扱う。(例えば、三菱商事やトヨタと同格)
一方、官僚以外の公務員は仕事内容やスピード感、文化の差異等で厳しく、35歳以下では実績もたかが知れている。
よって、ポイント3の判定では不合格となる。
挽回策は?
ポイント2でも書いた通り、「少しでも上位の会社に移り、そこからさらに上位の会社に移る(職歴・社歴を徐々に良くしていく)」ことに尽きる。
社歴を(大企業ほどは)気にしないベンチャー企業で実績を上げてから希望の会社を受けるのも一案である。
ポイント4(職務経歴書):実績
最後に見るポイントは、実績(主に職務経歴書に記載)である。
求職者にとって、実績は最も頑張って書かなければいけない項目かと思う。
それにもかかわらず、最後に見るのがこのポイントであるということに違和感や怒りを感じる方は多いかもしれない。
しかしながら、実績を書類選考で見る順番、つまり重要度が4番目であることは事実である。
実績を丹念に見るということは、学歴と職歴(社格)からすると「採っても採らなくてもいい」レベルにある。
よって、実績は「良い場合にのみ通す」要素となる。
実績がいいというのは、「この年齢でこの仕事を任され、やりきっているのはすごい」と感じられるということである。
簡単に言えば、少なくとも書類上からは「その企業ではエース級であろう」と判断できる場合となる。
実績が普通の場合には基本的に通さないが、例外がある。
それは「第2新卒」の場合である。
この場合には、大きな実績を残すのは現実的ではないので、実績は気にせず会ってみることが多い。
挽回策は?
当然ながら、実績がないことの挽回策は「実績をあげること」となる。
これは、転職に関する問題というよりは出世や評価、日ごろの働き方の問題になってくるので本記事では割愛する。
本サイトの「働き方・出世」カテゴリーを参照いただきたい。
>>働き方・出世
書類選考で通す場合と通さない場合を実例で解説
以上が書類選考の4つのポイントだが、実例がないと分かりにくいのでいくつか例示していく。
全てのケースについて、自分の会社(面接官のいる会社)はいわゆる日系最大手クラス(例えば自動車で言えば、トヨタ)と仮定している。
26歳、早稲田卒、トヨタ勤務、実績レベルは高い場合
ポイント1(年齢)はOK、ポイント2(学歴)もOK、ポイント3(社格)が十分なので当然ながら呼ぶ。
書類選考を通過させることがこれほど分かり易い例もないだろう。
43歳、京大卒、住友商事勤務、実績レベルはイマイチの場合
マネージャー求人でもない限り、ポイント1(年齢)で切る。
では、仮にマネージャー求人だった場合どうなのか。
その場合でも、(学歴や社歴は良くても)40代で花開いていない人は採用しない。
言葉は悪いが、「ヒマな時期であれば、興味本位で会ってみようと思うかもしれない」程度である。
30歳、青山大卒、楽天から転職して現在リクルート勤務、実績レベルは高い場合
ポイント1(年齢)はOK、ポイント2(学歴)は”△”である。
この場合には、ポイント3(社格)及びポイント4(実績)のレベルが双方高くないと採らない。
この方の場合、社格は高い方を見て(私の感覚だと)リクルートで”〇”、実績も高いので面接に呼ぶ。
これは嘘をついているというより、モチベーションや箔付けのためにナンバーワンが入れ替わる仕組みのようです。(出身者から聞きました)
29歳、慶応卒、(有名ではない)ベンチャー勤務、実績レベルは高い場合
ポイント1(年齢)はOK、ポイント2(学歴)も”〇”である。
ベンチャーには基本的に社格(ポイント3)はないので、ポイント4の実績を見る。
この方の場合、実績は高いと判断できるため、面接に来ていただくことになる。
30歳、明治卒、セイコーエプソン勤務、実績レベルは普通の場合
ポイント1(年齢)はOK、ポイント2(学歴)は”△”。
ポイント3(社格)は大きく電機業界と捉えた場合には日立やソニーと同格(最大手)とは言えず、これは社格として「一つ下」と考える。
実績レベルも普通であるため、「学歴”△”の場合には、社格や実績が余程良くなければ落とす」に従って落とすことになる。
33歳、東大卒、神奈川県庁勤務、実績レベルは普通の場合
こちらは応用問題である。
ポイント1(年齢)はOK、ポイント2(学歴)は”◎”(二重丸)なので、機械的に考えると「面接に呼ぶ」ということになりそうである。
ところで、この記事において、学歴が非常に良い場合(”◎”の場合)には「余程のことがない限りは書類選考は通す」と書いた。
その「余程のこと」がないか、社歴やメンタル疾患歴等を見る。
年齢と社歴を突き合わせて見ると、20代ならともかく、33歳まで地方公務員。
学部卒であれば、10年以上も地方公務員を続けており、今さら民間トップ企業のスピード感についてこれるとは思えない。
よって、20代だったら通過だったが、ポイント1(年齢)とポイント3(社格)の組み合わせでNGとする。
これは「余程のこと」があった場合と考えてほしい。
36歳、東北大卒、外資コンサルのバックオフィス勤務(財務)、実績レベルはやや高い場合
これも応用問題。
機械的に判断すると35歳以上なので年齢でNGだが、36歳、37歳辺りはぎりぎりなので次のポイントも見ていく。
ポイント2(学歴)は”〇”、ポイント3(社格)は外資コンサルとはいえバックオフィスなので一流からは一つ下げ、”△”と判断する。
次の実績レベルはやや高いということなので”△”~”〇”である。
こういった「各要素で当落線上すれすれ」のような場合には、要素をより細かく見たり、状況を考慮したりする。
具体的に言えば、「英語力」や「ラーニングアジリティー(学習柔軟性)」「募集ポジションとの専門性の合致度」を精査する。
もちろん、「そのポジションを埋めることの緊急度」も重要になってくる。
この場合には、上記要素を総合的に判断して面接に呼ぶかどうかを決めることになるだろう。
「4つのポイント」だけでは判断がつかない、珍しいケースとなる。
まとめ
冒頭にも書いたが、このテーマで本音で書くとどうしても(マイナビ等の大手サイトの転職記事に書かれているような)マイルドな内容にはならない。
気分を害された方もいるかもしれないが、人事の実務家・専門家として嘘や綺麗事を一切排除した内容を記載した。
転職は(新卒就活と同じく)受けた数も重要である。
なぜなら、上記4つのポイントをどのラインで判断するか(どのレベルで”◎”、”〇”、”△”、”×”とするか)は企業の社格や担当者によって異なるからである。
当落線上にあるはず(=通過したり通過しなかったりするはず)なのに全く受からないという方は、書類選考を受けた数自体が足りない(判断が厳しい企業や担当者にばかり当たっている)可能性もある。
思い当たる方は、転職サイトやエージェントを駆使して受験企業を増やすといいだろう。
>>おすすめ転職サイト・エージェント|プロ厳選の比較ランキング