なぜポストコンサルが事業会社の転職面接で落とされるのか?

悩めるビジネスパーソン
学歴、職歴は十分、コンサルティングファームで実績も積んだ。正直、事業会社にいる同年代のビジネスパーソンよりは圧倒的に優秀なはず。
それなのに、事業会社のアホな人事面接官に落とされるのはなぜなんだ?不採用通知に納得できない。

 

本日のテーマは「なぜポストコンサルが事業会社の転職面接で落とされるのか」である。

 

これに対する答えを一言で言えば、

  • 事業会社の人事パーソン(面接官)は、職務経験中心の評価から脱却できておらず、コンサル特有の「プロジェクトに迅速にキャッチアップする力」を信じ切れていないから

となる。

 

筆者は複数の事業会社の人事課長や人事執行役員を経験しており、面接官として、転職希望者への経験者(中途)面接を毎週のように実施していた。

今回は面接官の経験をもとに、机上の空論は一切除き上記の質問にお答えしていく。

 

原因:人は自分のものさしでしか他人を測れない

ポストコンサル、特に戦略系・総合系ファーム出身の優秀な方が、あまり「イケてない」事業会社の人事に落とされるのを山のように見てきた。

 

実際、筆者が「優秀」と判断してポストコンサルの方を最終面接に送り出しても、この道一筋の人事部長に落とされるということは普通にあった。

何故そんなことになるかと言えば、多くの場合は「経験」に関する考え方の違いに起因する

 

一般的に戦略コンサルや総合コンサルの出身者は「自分は何でもできる」と思っている。

あなたもそうかもしれない。

 

そして、それも無理はない。

なぜなら実際に、コンサルは、経験がない分野でもなんとかする職業だからである。

 

中期立案などのストラテジー案件、サービス立ち上げなどの新規事業開発案件、分社化による費用削減案件、グローバルでの在庫削減案件、大規模なシステム導入PMO案件。

経験あるコンサルタントであれば、上記のようなケースを、それこそ「何でも」こなしてきたことだろう。

 

こういった「経験のない領域でもなんとかする」という能力のことを、人材開発の世界ではラーニングアジリティー(学習機敏性)と呼ぶ。

この言葉を知っているかどうかは別として、コンサル出身者はこのラーニングアジリティー+基礎能力で勝負しているといってもいいだろう。

 

一方で、企業の人事というのは、基本的に「事業会社で育った」「人事畑の人」である。

 

労務やら研修やら本人としては色々やってきたつもりだが、人事内の経験にとどまることが多く、そうでなくても「3年単位」のスパンで仕事をとらえてきた方が多い。

コンサルのように、数か月ごとに大きく仕事を変えた経験など全くないのである。

 

齋藤
面接官自身が「長く経験した分野で成果を出す」経験しかもっていないため、経験ゼロ、もしくはプロジェクトで数か月、数年程度やったことがある程度の経験を、経験と思っていないのです。

 

これは、事業会社での「3年目社員」の扱いを見ればよく分かる。

(事業会社の内情を知らない新卒コンサルの方のために言うと、一般的な大企業の3年目はまだまだ半人前という扱いである)

 

つまり、事業会社の人事には、ポストコンサルの核となる能力である、ラーニングアジリティーに対する信頼性がないのだ。

 

その結果として、「この分野をやってきていないのに、コイツはなんで自信満々なんだ?」がデフォルト(初期状態)でのポストコンサルに対する人事面接官の態度となる。

悲しいかな、人は自分のものさしでしか他人を測れないのである。

 

齋藤
補足しておくと、事業会社の求人は「ポジション」で決まっていることが多いため、「何でもある程度出来る」ということの有利性が低くなることもポストコンサルにとって不利に働きます。

 

打ち手:キーワードは「経験」

とはいえ、多くのポストコンサルが望む「グローバル大企業」であれば、コンサルのキャッチアップ能力(ラーニングアジリティー)に関して全く無知というわけでもない。

「この人が優秀なのはわかるけど、経験なさすぎて怖い、雇えない」が(日系グローバル大企業の)まともな人事マネージャーの正直な気持ちであろう。

 

これを踏まえると、打ち手の方向性は3つほどある。どの打ち手でも、キーワードは「経験」だ。

  1. 経験が最も厚い分野で勝負する
  2. 経験の付け焼き刃を行う
  3. 経験はいっそ捨ててポテンシャルをアピールする

 

それぞれお話していく。

 

【1】経験が最も厚い分野で勝負する

こちらは単純。

コンサルをやっていると、望む望まないにかかわらず、ある程度「なぜかこんなプロジェクト(ケース)へのアサインが多い」という分野が出て来ることが多い。

 

デューデリばかり山ほどやらされるとか、なぜか人事組織改革ばかりやらされるとか、大手通信の担当パートナーに気に入られ、ド○モのケースばかりアサインされるとか。

それに合った業種や職種に転職する、というのがこれである。

 

経験が最も厚い分野となるので、いわば「経験→〇」「ポテンシャル→〇」のあなたは重宝されるだろう。

 

これは手堅い方法であるが、その一方で、経験のない分野に興味がある(転職したい)場合には役立たない。

 

【2】経験の付け焼き刃を行う

経験のない分野にチャレンジしたい方、特に若い方には、これがおすすめだ。

企業(業界)特殊的もしくは職種特殊的な学習を事前に取り入れる、つまり予習するということである。

 

例えば、あなたが老舗企業の財務改革プロジェクトを進める中で、「結局は人だ。この人たちが変わらなければ何も変わらない」と思ったとしよう。

実際、これは非常によくあることである。

 

だから、あなたは事業会社の人事に転職したくなった。

 

それも実はよくあることではある(筆者自身がこういうポストコンサルを部下として雇ったことがある)のだが、この実現は非常に難しい。

人事面接官にバンバン落とされることになるだろう。

 

これを防ぐ方法は、人事の総合的な本、もしくは(細分化されているのであれば)受ける部署の職掌に関する本を一冊読んでおくこと。

学生に対するアドバイスのようで恐縮だが、これは実際に意味がある。

 

例えば、経営層と働くことを目的として「全社的なタレントマネジメント」を行っている部署を受ける場合。

この場合、タレントマネジメントとは何か、今の人事のホットトピックは何なのか、コンサルの知見が役立ちそうなことは何なのか、くらいは調べたり考えたりしておくとよい。

 

これらが分かっているだけで、あなたは面接官から見て「経験→△、ただし意欲→〇」「ポテンシャル→〇」の人材となる。

経験重視の面接官から見て、「経験→×」「意欲→?」「ポテンシャル→〇」の人材より圧倒的に採りやすくなっているのがわかるはずだ。

 

【3】経験はいっそ捨ててポテンシャルをアピールする

最後に、若い方(20代)限定だが、意識的にラーニングアジリティーをアピールするという方法もある。

 

付け焼き刃(少なくとも人事面接官はそう思っている)の経験は敢えて語らず、なぜコンサルからその業界・職種に移ろうと思ったのかを率直にまとめる。

面接で話すエピソードでも経験のアピールは避け、「迅速にキャッチアップする力」や、「人間関係構築力」、「やりきる力」など抽象度が高くどこでも役立つスキルが、高いレベルで現れた場面で固める。

 

経験上、これはかなり好感度が高く、言い方は悪いが「レベルが非常に高い第2新卒」として受け入れられるケースがままある。

 

補足:残りの可能性は二つ、ポテンシャル不足と地雷

さて、ここまでで今回の質問への回答は基本的に終わりだ。

ただし、今回のキーワードである「経験」とは別のところで不合格となっている場合があるので、最後に触れておこう。

 

一つが、ポテンシャル不足

日本で言うと、三菱商事や三井物産、トヨタやソニー、リクルートやDeNAのような人気企業は、事業会社とはいえレベルの高い社員も多い。

 

齋藤

この記事では「アピールの仕方が間違っていた」という仮説のもとにお話をしてきました。
しかしながら、そもそも「ポテンシャル→〇」だと思われていなかった、という場合もあるということです。

 

この解決には、大きく分けて「実力を磨く」か「付け焼き刃を極める」しかない。

その方法は、このサイトの至る所で解説している。例えば、以下のような記事が参考になるだろう。

面接官はどこを見ている?実際の面接員向けトレーニングから考える

 

二つ目が、(面接官の)地雷を踏んでいること。

ひとつだけ、実際によくある地雷ケースをご紹介しておくと、あまりに強い志望度は「○○に入りたいだけの人」というレッテルを生み、実力未満の評価しか得られないこと、などがある。

 

まとめ

今回は、「ポストコンサルが事業会社の面接で落ちてしまう理由」について事業会社の面接官の立場から解説してきた。

外資系戦略コンサルタントと、事業会社の人事執行役員(と人事課長)を双方経験した経験をもとに書いた(割と珍しい)記事なので、参考にしていただければ幸いである。

 

なお、そもそもコンサルに新卒入社しており、今回が初めての転職だという方は、以下の記事を見ていただきたい。

3度の転職を経て31歳で東証一部上場企業の執行役員となった経験から網羅的に書いたので、参考になると思う。

 

【プロ直伝】初めての転職の進め方、そのすべて

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