むしろ、離職率が低い企業ならではのデメリットを感じています。これは、私だけなのでしょうか?
離職率が低い企業で働くメリットとデメリットを教えてください。
今回のテーマは「離職率が低い企業で働くメリットとデメリット」である。
結論から申し上げると「離職率が低い企業で働くことには、メリットだけでなくデメリットも多い。離職率が低いということは新陳代謝がないということであるため、特に若手社員はデメリットを強く感じる可能性が高い」という内容になっている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、離職率が低い企業で働くメリットとデメリットが分かり、自分には離職率が高い方が合っているのか低い方が合っているのか分かるようになるだろう。
結論
まず結論から行こう。離職率が低いことは、必ずしも良いこととは限らない。
離職率が低いというのは新陳代謝(人の入れ替わり)がなく、停滞感があるということである。このことは多くの中高年にとってはメリットが大きいが、多くの20代~30代にとってはデメリットの方が大きい。
本記事では、離職率が低い企業で働くメリットおよびデメリットについて解説していく。
離職率が低い企業で働くメリット
離職率が低い企業で働くメリットは、以下の通りである。
- 人間関係が良好である
- 社風が穏やかである
- 安定して長く働くことが出来る
上記のメリットについて、それぞれ解説していく。
人間関係が良好である
表向きの退職理由にされることは少ないが、本音の退職理由の多くが人間関係に関係するものである。
>>会社を辞める本音の理由と面接での転職理由は別!本音18個を人事プロが解説
つまり、離職率が低い企業では、職場の人間関係が良好である可能性が高い。
離職率が低い企業では(いくら優秀であっても)職場の人間関係を壊す可能性があるタイプを採用しないことが多い。これは転職活動における面接で相性が大事であることの一因である。
これらの結果として、他人の領域を侵害せず、和を大事にする会社が出来あがる。
社風が穏やかである
人間関係と重複する部分もあるが、離職率が低い企業では社風が穏やかである可能性が高い。
逆に、人がどんどん辞めていく離職率が高い企業では、以下のような「退職者が増える社風」があることが多い。
- 体育会系
- 同族経営・オーナー企業
- トップダウン
- 長時間労働
- 年功序列の処遇
- 公私が曖昧
- パラシュート人事の多用
離職率が低い企業では、こうした社風がはびこっていることは非常に少ない。
>>人がどんどん辞めていく会社にありがちな「7つの社風」とは
年功序列の企業では、数少ない若手が辞める一方、大多数を占める中高年の離職率が著しく低くなるため、全体としては離職率が低くなるのです。
安定して長く働くことが出来る
離職率が低い企業では、安定して長く働くことができる。
離職率が低い会社にいるときにはそのメリットは感じないと思うが、これは現在の日本では少なくなってきている、希少で大きなメリットである。
離職率が低い企業に長く勤める場合、将来設計(ライフプラン、マネープラン)ができる。
離職率が低い企業では同期間の出世競争による内部昇格が中心なので、自身が同期の中でどの位置にいるかも分かりやすく、どの程度昇格・昇給していくかの人事制度(報酬制度)も見えているためである。
離職率が低い企業で働くデメリット
離職率が低い企業で働くデメリットは、以下の通りである。
- 新卒文化があり生え抜きしか出世できない
- ポジションが空かないため出世が遅い
- 働かないおじさんが多く、若者が少ないため活気がない
- 転職が出来なくなる可能性が高い
上記のデメリットについて、それぞれ解説していく。
新卒文化があり生え抜きしか出世できない
離職率が低い企業で働くデメリットを一言で言うと、新陳代謝がないが故の停滞である。
離職率が低い企業では人が外に出て行かないため、新卒入社した各年代の社員がそのまま上に上がっていき、年齢構成をキープする。
そのため、先輩・後輩・同期のような人間関係が固定され、いつまでも「○○年入社」という年次で管理されるような、いわゆる新卒文化が形成される。
新卒から続く強固な人間関係の輪の中に入っているかどうかが出世のキーファクターの一つとなるため、中途入社の社員にとってはガラスの天井があり、生え抜き社員しか出世できないことが多い。
このタイプの会社を見分ける方法は簡単である。
歴代の社長の経歴を見ればよい。歴代の社長が新卒入社して数十年か働いた後に社長に昇格している会社は、間違いなくこのタイプである。
ポジションが空かないため出世が遅い
離職率が高い企業では役員やマネージャーがどんどん転職するため、ポジションが頻繁に空き、昇格のチャンスが多い。
離職率が低い企業では、全く逆のことが言える。役員やマネージャー、リーダー等のほぼ全員が定年退職もしくは役職定年まで居座るため、出世のチャンスが極端に少ないのである。
このタイプの企業には、担当部長や担当課長等の「部下なしのマネージャーポジション」を乱発する会社も多い。
このポジションは、部下の数が問われる転職市場においてはきちんとしたマネージャーとはみなされないため、(外部から見て)出世できたとは言い難い状態である。
働かないおじさんが多く、若者が少ないため活気がない
離職率が低い企業では、モチベーションを失った働かない中高年や、能力の低い中高年も辞めさせられない。
よって、働かないおじさん(おばさん)にとっては天国のような環境となり、働かないおじさん・おばさんは増加の一途をたどる。
その結果、会社は人件費を圧迫され、新卒採用にかけるコストも相対的に減少していく。
こうなると、働かないおじさんが多い一方で若者が少ない、誰もチャレンジせず活気のない会社が完成する。
転職が出来なくなる可能性が高い
離職率が低い会社に長くいると、転職が出来なくなっていく可能性が高い。
離職率が低い会社では、内部昇格に最適化された育成、特にゼネラリスト寄りの育成を好む傾向がある。
>>スペシャリストかゼネラリストか。ゼネラリストを選ぶべき唯一の場合を人事プロが解説
さらに、離職率が低い会社では中途入社者が少ないため「その企業の、その部署の仕事のやり方」しか分からない人が量産される。
中途入社者が多い会社であれば、1社の経験しかなくても(周りに中途入社者が多いため)世間一般で通用する専門性が身につくことが多いが、離職率が低い会社ではそれは望めない。
離職率が低い会社であっても、社長や役員まで上り詰められるならば良い。
しかし、途中で会社の人事方針が変わり、早期退職(肩たたき)の候補になった場合は悲惨である。内部でしかやっていけないスキル構成なのにもかかわらず、転職を迫られるからである。
筆者は、一流企業のゼネラリストとして年収1,200万円もらっていた50代の方が再就職活動で年収500万円を提示され、呆然とする姿を見たことがあります。
まとめ
離職率が低い企業は中高年にとって良い環境である一方、成長過程にある20代・30代にとってはデメリットの方が大きい場合が多い。
人事部門には離職率を下げようとしているイメージがあるが、実際の人事の世界では、離職率はある程度あるほうが健全であると認識されている。