中小企業 転職

大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職で戸惑いがちなことと成功のポイント

悩めるビジネスパーソン
今回、まだ決めてはいないのですが、転職活動で内定を頂きました。
今はいわゆる日系大企業に勤めているのですが、内定先はベンチャー…というより「中堅企業」という感じで、割と歴史のある150人ほどの企業です。
給与もポジションも上がる予定ですが、大企業と中小企業では大きな違いがあるとも聞いており、かなり不安です。
大企業から中小企業やベンチャー企業に転職すると一体どんな点が違うのか、気にするべき点や成功させる方法をご教示いただけますでしょうか?

 

今回のテーマは「大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職で戸惑いがちなことと成功のポイント」である。

筆者は社員がグループ合計で10万人以上の「大企業」から、「中堅企業(ベンチャー企業とも中小企業とも言える企業)」に移ったことがある。そのときの経験を踏まえ、本音で回答していく。

 

初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。

筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。

  • 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
  • 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
  • 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
  • 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験

 

この記事を読むことで、実体験を踏まえた、起こりがちなことのご紹介と成功させるためのポイントが分かり、中小企業・ベンチャー企業への転職成功率を上げることが出来るだろう。

 

齋藤
最初に結論を述べると、中小企業への転職は良くも悪くも「社長次第」のギャンブル要素が大きいものになります。
よって本来は「その会社次第」が正しい回答です。
しかしながら、「中小・ベンチャー転職におけるあるある」というか「起こりがちなこと」はあるため、実体験を踏まえて「こういうことが起こるかもよ」ということをご紹介します。

 

目次

中小企業・ベンチャー企業の定義と除外項目

まず、「中小企業」には様々な定義があるので、当記事における定義をしておきたい。

  1. 従業員数300人以下
  2. ベンチャーではない(会社設立から10年以上が経過)

 

定義は上記だが、「若い人が多いわけでもない」等、ベンチャーとは少し異なる性質を持つものを中小企業と考える。

ただし、本記事で述べていることは中小企業・ベンチャー企業でほぼ共通である。よって、本記事では中小企業と同時にベンチャー企業についても解説していくこととする。

 

次に、除外項目についても記載しておく。

あまりにも「この項目はそれぞれの会社次第であり、『中小企業』『ベンチャー企業』として一括りに出来ない」という項目は除外する。具体的には、以下の項目である。

  • 働き方(休日や残業時間)
  • 環境(オフィスや備品、システムの先進性など)
  • 仕事内容ややりがい

 

上記の項目については大企業の方が比較的良いことが多いと思われるが、大企業並み、もしくはそれ以上の中小企業・ベンチャー企業も存在する。

 

結論:民主国家から独裁国家への移住というギャンブル

結論を言えば、中小企業やベンチャー企業への転職は、良くも悪くも「社長次第」のギャンブル要素が大きいものになる。

 

大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職は、民主国家から独裁国家に移住するようなものである。

多くの場合「サラリーマン社長が民主的に運営する」大企業とは異なり、独裁国家では「全てが独裁者(社長)次第」である。

 

ただし、これは必ずしも悪いわけではない。

独裁者が優秀な独裁国家は、選挙のみを気にする政治家、またはタレント政治家ばかりの民主国家(いわゆる衆愚政治)より良いかもしれない。

また、独裁国家において独裁者と仲良しであれば、バラ色の人生になる可能性もある。

 

(あなたにとって)良い企業も悪い企業もあるだろうが、それは全て「社長や、エラい古株の人間」次第であるということだ。

 

だから、ギャンブル

良いかもしれないし、悪いかもしれない。

 

ただ、「大企業から中小企業やベンチャー企業に行ったらどうなりますか?」という問いに対して「良いかもしれないし、悪いかもしれない」では全く示唆がない。

なので、次項では自身やその周囲が体験した、「大企業から中小企業やベンチャー企業に転職すると戸惑いがちなこと」を書いていく。

 

齋藤
全てがあなたに起こるとは思っていませんが、半分くらいは起こる可能性が高いと思えるものをセレクトしました。

 

大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職で戸惑いがちなこと11個

超濃厚な「人間関係」

中小企業やベンチャー企業への転職で最も異なるのは「人間関係」だろう。

 

1. 基本は村社会

中小企業・ベンチャー企業は「組織の集合体」である大企業とは異なり、「個人の集合体」として動いている。

いわゆる「村社会」であり、個人と個人の関係で仕事が成り立っている。

 

「仕事に『誰と誰が仲が良い』なんて関係ない」というのは通用しない。

「長老が何か言っているけど合理的じゃないから却下、うちは営利企業ですよ」などということはあり得ない。

 

中小企業・ベンチャー企業は村社会であることを肝に銘じよう。

 

2. ストックオプション格差

「上場した中堅企業」というものがある。

マザーズやジャスダックはもちろん、東証一部上場企業でも200名規模の会社は多い。

 

こういった企業に入ると、やたらやる気がない人たちがいることに気づく。

次に述べる「古株であり、安泰」という人もいるが、そもそも「お金を稼ぐ必要がないのでやる気がない」という人もいる。

 

その要因はストックオプションである。

上場時のストックオプションにより、等級的には最も低い「事務員」という感じの人が億万長者であることも少なくない。

 

会社からの配当だけで生きていける人もいる。

こういった「ストックオプション格差」は、上場した中堅企業ではほぼ確実に見られる。

 

齋藤
ただし、本当に格差を感じるのは上場してから入った人ではなく、上場前に入社し「ストックオプションの配賦具合に差がある」人たちです。
ある時点までに入った人は数千万、その後に入った人は数百万、という境目にいた人が一番格差を感じています。

 

3. 古株・お局のナゾ権力

これはおそらく予想通りだと思うが、中小企業・ベンチャー企業では肩書以上に権力を持つ「古株・お局」がいることが多い。

そぐわない役職が付いていることもあるが、多くは「役職はないが偉そう」なタイプだ。

 

上位者からの依頼を普通に断る、場合によっては社長の指示しか聞かない等、タイプにもよるが大企業ではなかなか見られない人間が多い。

こういった人間に出会う覚悟、付き合っていく覚悟が必要だ。

 

4. 暗黙のアンタッチャブル(固定カースト制)

人間関係が濃密な村社会。

こう聞くと、「村八分」という言葉が浮かぶのではないだろうか。

 

実際に、中小企業・ベンチャー企業では「村八分」を受けている人がいることがある。

筆者自身、その人間(筆者の部下)の役割にもかかわらず、「○○には何もやらせるな」「○○を会議に入れるな」などの指示を受けたことがある。

 

会社は変動カースト制の社会、というのが筆者の信条だが、閉鎖的な村社会では「固定カースト制」が敷かれがちである。

 

5. 大手では見られないヤバい社員

大企業ではみることのできない、ヤバい社員も多い。

  • 取締役をいきなり訴えるスタッフ(しかもその後も普通に在籍)や、訴えられる取締役
  • 業務Slack(チャットアプリ)で上司に注意され、自席でいきなり大泣きし始めて周囲をどよめかせる30歳の男性社員

 

世の中には色々な人がいるな、と思い知らされることが多かった。

 

消し飛ぶ「キャリア」

キャリア形成は、中小企業・ベンチャー企業が最も苦手としていることと言ってもいいだろう。

 

6. ローテ?何それ

大企業では当たり前の「ローテーション(人事異動・部署異動による育成)」であるが、これが整備されている中小企業・ベンチャー企業は少ない。

そもそも一人で一機能を担っていたりするので、退職しない限りは別の人が来ないし、自分から動けもしないということが多い。

 

意図的なキャリア形成を行っている余裕はないし、悪い場合にはその発想すらない。

特に、自分から手を上げて仕事を取りに行くのが苦手な人は注意すべきである。

 

7. 部署が消え去りがち

社長次第ではあるのだが、中小企業・ベンチャー企業では部署が消え去りがちである。

「小回りが利く」といえば聞こえが良いが、方針がコロコロ変わるので組織もよく改変され、無くなるものも出て来る。

 

筆者の経験では、もっとひどいものもある。人事部長を首にするとともに「人事部」が社長の一存で消し去られたのだ。

筆者はその時、経営企画室長に専念していたのだが、「それはさすがに」と声をあげ、筆者自身が人事部長を兼任することとなり、人事部も復活することになった。

 

おそらく大企業しか経験がない方からするとあり得ないことだろうが、事実である。

筆者も驚いたが、それ以上に人事部メンバーは怖かったと思う。

 

8. 事業も消え去りがち

部署と同じく、事業も消え去りがちである。

 

中小企業・ベンチャー企業では創業社長が残っていることが多いが、そういった方は「せっかちなアイデアマン」であることが多い。

上手く行っていない事業への忍耐に欠ける人間も多く、吹けば飛ぶような小さな事業が多いことも重なり、事業が結構消えるのである。

 

もちろん、それに合わせて「部署」も消える。

さらにそれに合わせて「人」が消えるかどうかは、会社によるだろう。

 

9. 何でもやらされがち

中小企業・ベンチャー企業では、部署や事業が消えたり生まれたりすることが多い。

よって、「いらなくなった役割」「必要になった役割」が常時出来ているような状態になる。

 

こういう環境において、ある程度の能力があると「必要になった役割」を全て背負わされることになる。

 

筆者で言えば、一時期「経営企画、事業企画、IR、広報、マーケティング、人事」全てのトップを担っていた。

このように、中小企業・ベンチャー企業では何でもやらされがちである。

 

齋藤
これをプラスと捉えるかどうかはその人次第でしょう。

 

情実極まる「評価・処遇」

筆者のメインキャリアは「人事」なので、中小企業・ベンチャー企業の評価・処遇には結構驚かされた。

 

10. 評価が本当に「好き嫌いの評価」

筆者の信条として、「評価や出世を決めるのは会社ではなく、ある特定の個人。多くの場合は、上司」というものがある。

 

個人が決める以上、そこに「好き嫌い」の要素はどうしても入る。

なので、大企業にいた時から「評価は好き嫌い」だと思っていた。

 

しかしながら、中小企業・ベンチャー企業では全く違う。

本当に「評価が好き嫌いで決まる」のである。

 

齋藤
私が、私の直属の部下にある程度「良い評価」を与えた際、2次評価者の取締役により評価が変更されていました。

 

その部下は仕事はきちんとできるのだ。

ただし、その取締役は、どう見ても筆者のその部下が嫌いである。

 

そしてそれこそが中小企業・ベンチャー企業における「評価」なのである。

以下の記事は大企業での評価について書いた記事だが、これとは全く異なる。

>>納得できない!人事評価が好き嫌いで決まるメカニズムとその対処法

 

11. 過度にフレキシブルな年収

筆者は、中小企業・ベンチャー企業で「執行役員の報酬制度」を設計したことがある。

紆余曲折を経て、「要は社長が決める」に近い報酬制度となったのだが、その制度にしてしまうと前年度比で数百万円の上下があった。

 

大企業では(役職も役割も評価も変わっていないのに)これはあり得ないと思うが、結局この報酬制度で決定した。

良い部分もあるが、中小企業・ベンチャー企業では年収が過度にフレキシブルであり、安定していない場合がある。

 

齋藤
ここで私が挙げた例は割と特殊で、いわゆる「一般職」というか、管理職でない人間の給与は安定していることも多いです。
ただし、昇給幅は大企業に比べて極端に小さい場合がほとんどです。

 

転職をせず、出世のみで年収を上げるチャンスも大きいが、ギャンブル要素が強いのであまりお勧めは出来ない。

>>【給与公開】出世で給与を上げるのは本当に大変か

 

大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職を成功させる7つのポイント

さて、ここからは対処法、つまり「中小企業・ベンチャー企業への転職を成功させるためのポイント」を記載する。

 

多くは大企業から大企業への転職においても同じく重要なことであるが、中小企業・ベンチャー企業への転職では重要度が増す。

早速だが、以下の7つである。

  1. なるべく多くの偉い人(できれば社長)に会って、懸念がない場合にのみ転職する
  2. 前任者が何をしているか、どうなったのか質問し、懸念がない場合にのみ転職する
  3. ゆっくり活躍するつもりで、「村社会に溶け込むイエスマン時間」を計算に入れる
  4. 中小企業・ベンチャー企業あるあるを事前に知っておき、心の余裕を持つ
  5. ある程度「短期キャリア」になる覚悟を持つ
  6. いったん転職先のやり方を全て「是」とする
  7. 人間関係には最大限気を付け、裏のボスを見極める

 

それぞれ簡潔に解説していく。

 

【1】なるべく多くの偉い人(できれば社長)に会って、懸念がない場合にのみ転職する

この点はあまり補足することがない。

 

独裁国家であれば、独裁者たちがどんな人間なのかは最重要である。

独裁者たちが人間的に立派で、あなたも好感を持てる人たちなのであれば、民主国家よりも良い時間が過ごせるかもしれない。

 

【2】前任者が何をしているか、どうなったのか質問し、懸念がない場合にのみ転職する

これは非常に重要である。自らツイートしたので張っておく。

 

【3】ゆっくり活躍するつもりで、「村社会に溶け込むイエスマン時間」を計算に入れる

これも読んで字のごとくではあるが、中小企業では成果を焦ってはいけない

村社会なので、人間関係ができるまではあまり成果が出ない仕組みなのだ。そう割り切ろう。

 

村社会に溶け込むために「イエスマン」に徹する時間をとろう。

少なくとも1か月、場合によっては3か月ほど「馴染むための期間」と考えてもいい。

 

【4】中小企業・ベンチャー企業あるあるを事前に知っておき、心の余裕を持つ

筆者が書いたものに限らず、「中小企業・ベンチャー企業あるある」を知っておくのは心のワクチンとなる。

「ちょっと大袈裟かもしれないが、こういう事が起こり得る」と知っておくと、いざ起こったときの精神状態に違いが出る。

 

齋藤
一応書いておきますと、私がこの記事に書いたことは「事実」であり、大袈裟には言っていません。

 

【5】ある程度「短期キャリア」になる覚悟を持つ

色々な対策を施しても、やはり「独裁国家」なので何が起こるかは分からない。

あなたが優秀でも、部署や事業ごとなくなるかもしれないし、何より「あなた自身が嫌になる」というリスクがある。

 

だから、大手から中小企業・ベンチャー企業への転職では「もしかしたら短期キャリアになるかもしれない」ということを念頭に置いておくといい。

 

齋藤
大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職に限らず、「最悪を想定しておく」のはかなり有益です。
実際に最悪の事態が起こったときの初動対応までのリードタイムを短縮してくれますし、何より心が安定するからです。

 

仮に短期キャリアになってしまった場合でも、「短期離職した場合の挽回方法」を知っていれば安心だ。

 

【6】いったん転職先のやり方を全て「是」とする

入社してからのTIPSだが、いったんは転職先のやり方を「是(正しい)」と受け止める期間を持とう。

 

「村社会に溶け込むイエスマン時間」に似ているが、人間関係に限らず、仕事のやり方を改善していくのも入社してすぐに取り掛かるのはおすすめしない。

 

少なくとも1~2か月は、非効率であっても転職先のやり方を是としてみよう。

非効率なやり方から得られる気づきも意外とある。それも無駄にはならない。

 

齋藤
よく言われることですが、「前職では~」も、特に大企業から中小企業・ベンチャー企業への転職ではNGです。

 

【7】人間関係には最大限気を付け、裏のボスを見極める

繰り返しになるが、人間関係が濃密なのが中小企業・ベンチャー企業の特徴である。

 

人間関係には最大限気を付けよう。

特に、自分の関わる範囲内で「ボス」となる人間を見極め、しばらくはイエスマンをしてみよう。

 

人間関係さえ上手くいけば、8割は中小企業を攻略できている

 

まとめ

中小企業・ベンチャー企業への転職の成否は良くも悪くも「社長や取締役次第」であり、OpenWork(旧Vorkers)等の情報も少ないため、ギャンブルになりがちである。

よって、面接における「情報収集」、入社前の「覚悟」、入社後の「馴染む努力」によってリスクを減らすことが肝要だ。

 

さらに、誠実な転職エージェントを味方につけ、内部の情報(今まで転職者がこうなったか等)を事前に得ておくのも一つの手である。

その場合、様々な大手転職サイトに登録しておき、「良い転職エージェント」をストックする(知り合う)ところから始めるのがよい。

>>おすすめ転職サイト・エージェント|プロ厳選の比較ランキング

 

転職サイトや転職エージェントは無数にあるが、それらを紹介するランキングやおすすめサイトの信憑性は低く、どのサイトに登録すべきか悩む方は多い。

迷ったら、年代でも性別でもなく、シンプルに年収で決めるのがおすすめである。

  • リクナビNEXT年収800万円未満の場合。日本最大級の公開求人を掲載、エージェントも豊富
  • JACリクルートメント 年収800万円以上の場合。大手および外資系を中心に、日本最大級の非公開求人を保持

 

人材企業の最大手リクルートが運営するリクナビNEXTは、年収が800万を超えるまでは万能の転職サイトだと言える。(それ以上の年収帯では案件が減る)

掲載求人が豊富なだけではなく、リクナビNEXTには多数の転職エージェントが参加しているため、網羅的に求人を探すことが出来る。

 

JACリクルートメントは、筆者が最も信頼している転職エージェントである。転職エージェントとしては日本最大の売上高を誇り、求人の多さ、エージェントの質ともにダントツである。

ただしJACはハイクラス・ミドルクラス向けのため、そのスペックをフル活用するには年収800万円程度が必要だ。

中小企業 転職
最新情報をチェックしよう!