やる気のない社員はいて当然?グレイナーの企業成長モデルで対策を

悩める経営者
東京でベンチャー企業を経営しています。私の会社は自由闊達で、ベンチャーらしい「目的意識ややる気を持ち、全員が自律的に頑張る」風土でした。
しかしながら、中途採用者が増え、組織も大きくなって私の目が届かなくなったことで、やる気のない社員が増えてきているような気がします。
ある程度我慢するしかないのか、とも思いますが、自分の愛する会社なのでそれも悲しいと思います。どうしたらいいのでしょうか?

 

今回のテーマは「やる気がない社員を、どうするか」である。

経営者やマネージャーの悩みの中でも、これほどオーソドックスで、これほど深刻な悩みもないだろう。

 

やる気のない社員が、個人の素質によって「やる気がない」のであれば、最終的に解雇も見据えた厳しい施策の検討をするのも一案である。

例えば、これが仮に試用期間であれば、以下の記事のようにうまく解雇することもできるだろう。

正社員を試用期間でクビ(解雇)に出来る?人事部長が回答

 

しかしながら、今回は相談者自身が「組織も大きくなって」と言っているように、組織拡大のひずみである可能性もある。

今回は「グレイナーの企業成長モデル」と呼ばれる組織段階のモデルをもとに、やる気がない社員が増える理由やその対策を考えていく。

 

やる気のない社員を辞めさせるのは困難

やる気のない社員、というとまず最初に「辞めさせる」ことを考えるかもしれない。

それはそれで選択肢としてあり得るし、本サイトでも労務的な対処について扱っている。

 

しかしながら、多くの場合、日本では「辞めさせる」ことは非常に難しいのが現実である。

極端に言えば「上司が気に入らなければ辞めさせることが出来る」アメリカ等とは異なり、日本での解雇規制は非常に厳重だ。

 

ここで、考えてみる価値があることが一つある。

それは、「やる気のない社員は、どんなときにもやる気がないのか?」ということである。

 

どんなときにもやる気がない社員であれば、個人の責任と考えて辞めさせる方策を練るのが良いだろう。

 

しかしながら、もしかしたらそれは「組織のせい」かもしれない。

特に以下のような場合、その可能性は高まる。

 

  1. やる気のない社員が一人ではなく複数いる
  2. かつてやる気があった社員がやる気をなくしている
  3. 組織が急成長している

 

組織には「やる気のない社員」が発生するメカニズムがある

社員個人の資質ではなく「組織のせい」でやる気のない社員が発生している場合、参考となる考え方がある。

それが、ラリー・E・グレイナーの「5段階企業成長モデル」である。

 

このモデルは、リクルートの曽和利光氏が書いた「人事と採用のセオリー」の中では「組織ライフサイクル」として紹介されている。

今回、各段階における人数規模についてはオリジナル(グレイナー)ではなく曽和氏の論を採用している。

 

さて、この企業成長モデルでは、企業が成長する段階において様々な危機が訪れることが示されている。

本記事では、以下の各段階においてどういった危機(=やる気のない社員)が生み出されるのか、そしてその危機をどのように乗り越えるべきかを解説する。

 

  1. 創造性による成長とリーダーシップの危機
  2. 指揮による成長と自主性の危機
  3. 権限委譲による成長とコントロールの危機
  4. 調整による成長と形式主義の危機
  5. 協働による成長と新たなる危機

 

第1段階:創造性による成長とリーダーシップの危機

第1段階は、社員数10名くらいまでの段階である。

大企業で言うと「チーム」もしくは大きくても「課」のレベルの話である。

 

この段階では、リーダーが全員を見られるため、即時のフィードバック、人間性でのドライブ(運営)が可能だ。

よって、創業時のベンチャーのように、各人がリーダーの背中を見て自律的に、責任感を持って「楽しく働ける」段階である。

 

最も「やる気がある」段階と言えるが、人数が増えてくるとリーダーが全員を見られなくなってくる。

すると、「指示待ちメンバー」という名のやる気のない社員が出てくる。

 

これが、第1段階における「危機」である。

 

第2段階:指揮による成長と自主性の危機

第1段階における危機「指示待ちメンバー」から脱するため、トップの目が届かないメンバーのマネジメントを目的として「管理職」が置かれる。

 

これが第2段階で、社員数30名くらいまでの人数規模である。

大企業で言うと大きな「課」もしくは「部」のレベルになるだろう。

 

管理職は創業者のように「背中を見せて引っ張る」ことは出来ないが、マニュアルを作成したり細かい指示を出すことが出来る。

すると、創業者の目が届かないメンバーでも「自分で動く」ことが出来るようになる。

 

一方で、この段階にも危機が発生する。

それは、「マニュアルや指示に従う」ことに慣れてしまうため、「マニュアルや指示にないことは自分で考えない」メンバーが生まれることである。

 

これが、第2段階における「危機」である。

 

第3段階:権限委譲による成長とコントロールの危機

マニュアルや細かな指示によるマネジメントの弊害が大きくなると、組織は次の段階に進む。

それが「結果によるマネジメント」であり、この段階の規模は200人程度までである。

 

細かく「○○しろ」と指示したりマニュアルに記載したりするのではなく、権限委譲した上で「○○を目指せ」と指示することで、結果に向けた目標管理を始めることになる。

これにより、細かく指示をされずとも、各人が競争し、自律的に結果を達成するための手段を考えるようになるというわけだ。

 

しかしながら、この第3段階にも危機は訪れる。

結果によるマネジメントはいわゆる「成果主義(競争)」なので、協力関係を阻害し、足の引っ張り合いになりやすいのだ。

 

これにより、組織としての力やシナジーを損なうという危機が訪れる。

本来の組織の目的に力を結集させるようなコントロールが出来なくなってしまう。

 

自分さえよければ」というメンバーの発生、つまり行き過ぎた個別最適が、第3段階の危機である。

 

第4段階:調整による成長と形式主義の危機

行き過ぎた部分最適を防ぐため、第4段階の組織は「全体調整」をするようになる。

この段階の組織は1,000人程度までの在籍人数で構成される。

 

具体的には、官僚機構を作り、各メンバーに「行動計画」を提出させ、それを組織横断で審議して調整(資源の再配分)する。

さらに、個別最適を防ぐような規則も作られる。

 

事前に全体調整された計画や合理的な規則に基づき各メンバーが動くことになるため、個別最適の問題は取り除かれる。

しかしながら、「官僚」という言葉で想像できる通り、このやり方は自律性や柔軟性を損なう。

 

第2段階の危機であった「マニュアルや指示にないことを自分で考えない」と非常に近い問題が発生することとなる。

それは、「計画や規則に則ってさえいればいい」と考えるメンバーである。

 

行き過ぎた官僚主義により、柔軟性がなく、形式主義に陥ったメンバーが多くなっていく。

これが第4段階における「危機」である。

 

第5段階:協働による成長と新たなる危機

1,000人を超える人数を抱える組織は「官僚主義の危機」を迎える。

この第5段階の組織は、これまでの段階において行動や結果、計画や規則でマネジメントすることの限界を知っている。

 

そのため、この段階の組織は「価値観」でメンバーをまとめようとする。

企業文化や大切にする価値観を示し、そこから生まれる「緩い連帯」により、自律的かつ柔軟で、協力的な運営を目指す。

 

Google、リクルート、ディズニーなど、強い企業には強い「文化」「価値観」があると言われている。

そういった意味で、この第5段階は理想の段階にも思える。

 

しかしながら、理想の段階に思えるこの段階にも弱点はある。

それは、そもそも「価値観を同じくする人しかいられない」「各メンバーの仕事レベル・人格レベルがともに高くないと成り立たない」等である。

 

最終段階である第5段階においても、「危機」がない訳ではないのである。

 

企業成長モデルからみたやる気ゼロ社員への対策

どの大企業も、グレイナーの企業成長モデルの各段階をたどってきている。

逆に言えば、やる気がない社員がいるのであれば、それは次の段階に行くべき時なのかもしれない。

 

今回の記事で述べてきたことを単純化して言えば、以下のようになるだろう。

 

  1. 創業者が全員を見きれず「指示待ちメンバー」がいるのであれば、管理職を置くべき
  2. 細かな管理で「考えないメンバー」がいるのであれば、目標管理制度を入れるべき
  3. 個別最適の「自分や自分の部署さえよければいいというメンバー」が増えたら、部門横断の調整機関や会議を作るべき
  4. 形式主義の「柔軟性に欠けるメンバー」が増えたら、企業文化や価値観を明確化して示すべき

 

しかしながら、前述したように、第5段階の組織でさえ弱点はある。

このモデルは、第5段階を理想としてそこに至る旅ではないのだ。

 

どの段階にも弱点があるなら、どうすればいいのだろうか?

段階を進めていく以外の解の一つが、「各段階を使い分ける」ということだ。

 

  • オペレーション部門なら「考えないメンバー」の弊害が少ないので、第2段階(細かなマニュアル組織)をとる
  • 外資系保険会社の様な営業組織なら「自分さえよければいいメンバー」の弊害が少ないので、第3段階(成果主義組織)をとる
  • 人数を増やす必要性が薄い事業なら、意図的に創業者が全員を見ることが出来る第1段階(小規模組織)にとどめる

 

まとめ

組織の問題は非常に複雑で、業種、事業ライフサイクル、人数規模、創業者の個性、今後の経営戦略等々により最適な組織が異なってくる。

 

今回説明したような理論的な根拠も持ちつつ、自組織ではどうするべきかを徹底的に考え抜くことが重要である。

組織体制の構築(組織戦略)に知見がある人間が必要であれば、ぜひご相談いただきたい。

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