だが、そもそも離職率は何年のスパンで考えて、どうやって算出すればいいんだ?離職率の出し方が知りたい。
さらに、最近の若手は、営業ノウハウを覚えるとすぐ辞めてしまうんだが、定着させる方法はないのか?
今回のテーマは「従業員の離職率の算出方法と、離職率を下げる方法」である。
通常、離職率は3年以内離職率を用いる。(この算出方法は本文でお教えする)
この「離職率」の下げ方は色々あるが、人事制度全体を離職率を下げる方向で設計するのが基本である。
これについても後ほどお教えするので、とても深いお悩みかと思うが、ご安心いただきたい。
一般に、中小規模の企業では、1人の離職が業務運営に大きな影響を及ぼす。
「人手不足で倒産」ということも珍しくなくなった昨今、「離職率」をきちんと出し、モニタリングしていくことは必須とも言えよう。
本記事では、離職率の算出方法、そして離職率の下げ方(=社員の定着させ方)について述べる。
誰でも分かる、離職率の出し方
離職率は法律で定められた数字ではなく、実は各企業が勝手に出している数値である。
その出し方は、非常に簡単だ。
「起算日からX年後までの退職者」÷「起算日の在籍者」で求められる。
この「X」は、各企業が勝手に定めて良い。
「3年以内離職率」であればX=3、「5年以内離職率」ならX=5となる。
ただし、一言で「離職率」という場合は、一般的には3年以内離職率を指すことが多い。
試しに、2020年新卒入社者の3年以内離職率を求めてみよう。
よって本来、求めるには2023年4月1日以降になっている必要があります。
仮に、あなたの会社に2020年4月1日に100人が入社したとしよう。
この場合、起算日である2020年4月1日の在籍者は100となる。
そして、起算日から3年後の2023年3月31日までに、100人中16人が退職し、84人が残ったとしよう。
この場合、「起算日から3年後までの退職者」は16名となる。
よって、「起算日からX年後までの退職者」÷「起算日の在籍者」=16÷100=0.16となり、あなたの企業の3年以内離職率は16%となる。
新卒入社者だけでなく、中途入社者も同じように求めることが出来る。
社員が辞める理由は様々
ここからは、離職率を下げ、定着率を上げていくための施策について述べていきたい。
その前に、そもそも社員はなぜ辞めてしまうのだろうか?
まずこの点から考えてみたい。
エン・ジャパン株式会社の「エン転職」が8,668名に行ったアンケートによると、「給与が低い」「やりがいを感じない」を筆頭に、実に様々な理由で退職している。
これらの項目を全て改善していき、「従業員の夢を叶える」のは容易ではない。
「給与を上げろ」「やりがいのある面白い仕事を用意しろ」と言われても、全員にそう思ってもらえる給与や仕事を用意するのは現実的ではない。
しかし、それでは、どうしたらいいのだろうか?
次の項では、人事面で出来る非常にシンプルな対策をいくつかご紹介したいと思う。
離職率の低い、社員が定着する会社を作る4つのポイント
それでは、離職率の低い、社員が定着する会社を作る4つのポイントをご紹介しよう。
ちなみに、この「逆」をすれば離職率の高い、どんどん社員が入れ替わっていく会社にすることも可能である。
実は、若くして退職する方の多い「リクルート社」では、意図的に以下の「逆」をして離職率(代謝)を高めています。
それでは早速だが、4つのポイントの紹介に移りたい。
賃金カーブは少しずつ上げているか?
まず、賃金カーブは「離職率を下げる方向」で設計されているだろうか?
賃金カーブとは「自分の会社では、給与がどう上がっていくか」のモデルケースのことであるが、これには大きく2つのパターンがある。
- 最初は賃金が大きく上がるが、だんだん上がらなくなっていく
- 最初は賃金がほとんど上がらないが、徐々に伸びが大きくなっていく
お分かりかと思うが、離職率が低くなるのは後者(=最初は賃金がほとんど上がらないが、徐々に伸びが大きくなっていく)である。
辞めずに在籍していれば在籍しているほど、給与の上り幅自体が良くなっていくため、会社に残るインセンティブ(動機)は上がっていくこととなる。
賃金カーブを(一気にではなく)少しずつ上げることで、離職率は低下する。
逆に、前者、つまり「素早く1人前の給与となり、その後はほとんど上がらない」だと転職によって給与を上げるしかない。
よって、一定程度のスキルを身に着けた人材が退職しやすくなる。
中小企業であっても、ここまで述べたように給与の上り幅の設計を「後から上がっていく」ように修正していくことは可能である。
現実的には、ほとんどの人がお金のために働いているため、この変更は離職率低下にある程度効果がある。
人事異動はあるか?
次にチェックすべきは、人事異動である。
ある程度規模がないと難しい面があるが、一般に、人事異動が多いと離職率は低下する。
以下のように、どんな人間であっても同じ業務ばかりしていると辞めたくなってくるためだ。
- 優秀でやる気のある人は、「成長が止まる」のを嫌がって転職意欲が高まる
- 逆にやる気のない人は「飽きて」しまい、やはり転職意欲が高まる
よって、ある程度「人事異動」を設けて、心機一転、新しい仕事を学ぶ機会を与えてみてはいかがだろうか。
やる気のある人はさらに成長し、やる気のない人もマンネリ感を解消することが出来る。
リクルートの「キャリアウェブ」制度やソニーの「社内募集」制度では、上司にも予め通知することなく異動できる仕組みにより、社内の活性化を図っています。
外でも通用するスキルを習得させていないか?
社員に、きちんと外でも通用するスキルを習得させているだろうか?
こう聞くと、まともな経営者ほど「もちろんだ」とお答えになるのだが、実は外でも通用するスキルを習得させると離職率は上がってしまう。
外でも通用するスキルを付けると、社員は独立・転職がしやすくなる。
当然ながら、これでは離職率が高まってしまう。
突然だが、不動産業界に「オープンハウス」という会社があるのをご存知だろうか?
オープンハウスは、都心でリーズナブルな価格の戸建てを売って躍進している会社であり、離職率の高い不動産業界において特筆すべき離職率の低さを誇っている。
オープンハウスの離職率の低さの秘訣について話をする前に、そもそもなぜ、不動産業界では離職率が高いのかを説明したい。
その主な理由は「不動産業界では、社員が会社でスキルを身に付け、ある程度全ての業務をこなせるようになると独立してしまう」からだと言われている。
実際、いわゆる「街の不動産屋さん」は、東京ではどの駅にも数えきれないほどある。引っ越しの時は特に目に付くだろう。
大学や高校を出ていきなり不動産屋を立ち上げる人は少ないので、このほとんどが「勤務した不動産会社を退職して独立した人」と言える。
一方でオープンハウスの離職率が低いのはなぜかと言えば、オープンハウスでは「物件探し」「物件管理」「物件売買」等々の業務が全て分業制だからである。
分業制では不動産を一貫して扱うスキルが身につかないため、独立できないのだ。
ここまで述べてきたように、「外でも通用するスキル」は離職率を上げてしまう。
よって、離職率を低下させる上での理想は以下のようになるだろう。
- 若手の内は「社内でしか通用しないスキル」を身に着けさせる(全て任せず分業制にする等)
- ある程度定着してから、「社外でも通用するスキル」を身に着けさせる
会社の業績は良いか?
ここまで述べたように人事制度(人事フロー)を離職率が低くなるように設計しても、離職率が高止まりすることもある。
事業自体に将来性がなく、会社業績が悪ければ、人は「沈む船から逃げ」ようとする。
事業自体があまりにうまく行っていない場合には、その立て直しが一番の「離職率低下施策」となる。
言われるまでもないと思うが、従業員にも生活があり、彼ら・彼女らが経営者に付いてきてくれるのは「この先、給与を支払ってくれそうだから」に他ならない。
こういったものは社長自身から見えにくいことも多いため、一度、専門家に組織診断してもらうのも手です。
まとめ
人手不足が叫ばれる昨今、経営者の頭を悩ませるのが社員の離職である。
離職率を正しく算出してモニタリングしていくと同時に、離職率を下げる取り組みを行うことで、他企業との人材獲得競争に勝つことが出来る。
今回述べたこと以外にも、離職率が高くなる原因はあり、同時にそれを下げる方策も様々である。
本記事の対策をとっても改善しない場合には、一度組織診断してみるのも手だと思う。筆者もそういったサービスを用意しているので、必要に応じご依頼いただきたい。