経営企画職を志望していたのですが、新卒で人事に配属されました。
採用などで華やかなイメージがあったのですが、事業部人事(HRBP)に配属され、とても辛いです。
何もわかっていない新人なのに話す相手はベテランの現場マネージャーばかりですし、正しいことを言っても通らないことが多いです。
人事の仕事が辛いのですが、どうしたらいいでしょうか?人事以外のご経験も踏まえ、アドバイスをいただけるとありがたいです。
今回のテーマは「人事の仕事が辛い理由とその対処法」である。
結論から申し上げると「人事の仕事が辛いのは当たり前である(若手であれば尚更)。その理由は多岐にわたり、対処する方針も複数あるので、それぞれ解説していく」という内容の記事になっている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、人事の仕事が辛い理由と対処法のみならず、人事に向いている人・向いていない人まで分かり、人事のままで行くべきか職種を変えるべきか判断できるようになるだろう。
結論
まず、結論からいこう。
人事の仕事が辛い主な理由は、以下である。
- タフな対人コミュニケーションが多い
- 役員やマネージャーとの対峙が多い
- 社内政治の中心地である
- 具体的な成果が見えにくい・見えるまで時間がかかる
- 何をいうかより誰が言うかの方が大事である
人事の仕事が辛いと感じやすいタイプは、以下である。
- 対人コミュニケーションが苦手な人
- 偉い人・年上との会話が苦になる人
- 実力主義・合理主義・社内政治に否定的な人
- 具体的な成果をあげたい人
- せっかちな人
- 自責志向が強すぎる人
- 若い人
人事の仕事が辛いと感じた時の対処法としては、異職種への転職の他に、我慢や異動もかなり有効である。
上記の対処法はもちろん、人事の仕事が辛いと感じる理由やそう感じやすいタイプに至るまで、全て本文中で解説していく。
人事の仕事が辛い理由
人事の仕事が辛い理由は、人によって異なる。
とはいえ、筆者が「部下(人事)の悩み」や「人事を出ていく人の理由」を把握している限り、大きくは以下の理由で「辛い」と感じている人が多い。
- タフな対人コミュニケーションが多い
- 役員やマネージャーとの対峙が多い
- 社内政治の中心地である
- 具体的な成果が見えにくい・見えるまで時間がかかる
- 何をいうかより誰が言うかの方が大事である
それぞれ解説していこう。
【1】タフな対人コミュニケーションが多い
人事の仕事は、タフな対人コミュニケーションがとにかく多い。
社員との面談、労働組合との交渉、学生相手のプレゼンと質疑、役員やマネージャーとの定例会議と、多様なステークホルダーとのコミュニケーションが求められる。
その上、議題にシリアスなものが多い。
例えば「採用、うつ、パワハラ、人間関係の悩み(上司や部下との関係)、評価、給与」等、それぞれのステークホルダーの生活がかかっている議題が多く、当然ながら真剣な議論になる。
多様な関係者と深刻な議題で対峙し、関係性に留意しながらも解決していく必要がある。
タフな対人コミュニケーションが多い点は、人事の仕事が辛い理由の筆頭に挙げられるだろう。
【2】役員やマネージャーとの対峙が多い
前述の「タフな対人コミュニケーションが多い」の一部であるともいえるが、人事はとにかく役員やマネージャーとの対峙が多い。
「偉い人と話す」程度であればよいが、自分より偉い相手と「対峙」し、「説得」する必要があることも多い。
これは、特に若い人事にとっては大きな負担である。
若い人事パーソンは人事制度等を決める立場にもないため、「決める立場でもないのに」「上で決まったことを」「自分より偉い、納得していない人」に説明しなければならない機会が多い。
その際、役員やマネージャーからの反論はすべて末端の人事パーソンが聞くことになる。
その反論の多くはある意味で的を射ていることも多く、これをどう切り抜けるかが若手人事パーソンの最初の関門になる。
【3】社内政治の中心地である
役員やマネージャーとの繋がりが深いということ、また「昇進・昇格・異動」「人間関係の調整」が仕事の一部であることから、人事は社内政治の中心地になりやすい。
社内のあらゆる人間関係や力関係、またその変化に敏感である必要がある。
会社の代弁者となりやすい立場から、会社の向かう方向性だけでなく、会社における組織力学の移り変わりも把握しておく必要がある。
また、ステークホルダーが多いことに伴い、気を遣わなければならない相手の数も非常に多い。
学生時代、いわゆる「スクールカースト」に敏感で、かつその上位にとどまり続けられたような人には向いている。
一方、そういったものに鈍感だったり、嫌悪感があるのであれば、キャリアの途中で嫌気がさす可能性も高い。
【4】具体的な成果が見えにくい・見えるまで時間がかかる
人事の仕事は、とにかく具体的な成果が見えにくい。
「人事制度企画、育成、採用、異動、処遇(等級・報酬・評価)、労務」など、人事の仕事の多くはそもそも成果が可視化されにくく、仮に可視化されたとしてもそれまでに時間がかかる。
成果が数字や形にならず見えにくいのは、人事系に限らず、本社系(コーポレート系)職種の宿命である。
しかしながら、人事はその中でも「周りに成果が見えないことはもちろん、自分自身でも成果が見えにくい」のが特徴である。
自身が出した成果が見えにくく、満足感を感じづらいというのは、やりがいを求めるビジネスパーソンにとって辛い面になり得る。
【5】何をいうかより誰が言うかの方が大事である
社内政治の中心地であること、また成果が見えにくいことから、人事では「何をいうかより誰が言うかの方が大事」という文化になり易い。
これは、合理的な人間、「誰が言っても正しいことは正しい」というタイプには受け入れがたい。
別の職種であれば、発言力の有無にかかわらず「正しいことは正しい」とデータや成果物で証明することができることもある。
しかしながら、人事には成果物を見せるのが難しい業務が多い。
また、データで語ろうにも(その前提となる)データを取得する文化がない会社も多い。
まともな会社の人事であれば一定の論理性は重視されるものの、それ以上に発言力がものを言う面が大きいのである。
人事の仕事が辛いと感じやすいタイプ
次に、人事の仕事が辛いと感じやすいタイプ、つまりどういう方は人事に向いていないのかについて記載する。
本項目は、必然的に前項「人事の仕事が辛い理由」と似た内容になっている。
興味がない方は、次項の「人事の仕事が辛いときの対策」に進んでほしい。
人事の仕事が辛いと感じやすいタイプは、以下である。
- 対人コミュニケーションが苦手な人
- 偉い人・年上との会話が苦になる人
- 実力主義・合理主義・社内政治に否定的な人
- 具体的な成果をあげたい人
- せっかちな人
- 自責志向が強すぎる人
- 若い人
数が多いこと、また前項と類似した内容になることから、それぞれ簡潔に解説していく。
対人コミュニケーションが苦手な人
人事の仕事は、営業ほどではないが対人コミュニケーションが多い。
本社系(コーポレート系)の中では最も多いかもしれない。
よって、対人コミュニケーションが苦手な人は向かない。
それどころか、出来れば対人コミュニケーションが得意であることが望ましい。
偉い人・年上との会話が苦になる人
対人コミュニケーションの中でも、人事は役員・マネージャーと話す機会が多い。
よって、年上であることも多い役員・マネージャーとの会話が苦になる人には、人事の仕事は辛いだろう。
逆に「ジジ殺し」とも言われる年上男性に好かれやすい男女は、それだけで人事適性がプラスだと判断できる。
実力主義・合理主義・社内政治に否定的な人
人事の仕事は、具体的な成果が出づらい。
かつ、「何を言ったかより誰が言ったか」が重視される文化もある。
よって、「成果を出せば実力を認められて出世するのが当たり前」というストレートな思考の方や、合理的な方には辛い面が多い。
とはいえ、「”評価者にとっての”成果を出し、それを社内政治の中で完ぺきにアピールできれば出世する」というのは人事の世界でも正しい。
「いつも正しい”完璧・合理”」ではなく「その場で正しいと認められる”最善”」を見極められる政治力に優れた人間にとってはラクな仕事である。
そして、空気とは、その場で一番偉い人間の”気分”である、とも言われます。
具体的な成果をあげたい人
人事は具体的な成果があげづらい。
もちろん、人事制度や育成プログラムなどある程度目に見えるものを作るときもあるが、それが役立ったかどうかの判定は分かりづらく、分かるまでには時間がかかる。
せっかちな人
既に何度も述べた通り、人事の成果が見えるまでには時間がかかるため、せっかちな人間には向かない。
自責志向が強すぎる人
人事の仕事は影響範囲が広く、影響の程度も(人の人生を変えることがあるほど)大きい。
さらに「ダークサイドの人事」と呼ばれる、リストラ・PIP・懲戒事案対応等の後ろ向きの仕事も多い。
こういった業務に従事する場合、自責志向が強すぎる人にとっては辛い。
リストラはリストラされる側の責任も大きい(むしろそこまでしがみつけたことに感謝すべきケースも多い)のだが、それを全て「申し訳ない」と心から思ってしまう人事は精神を病む。
若い人
お気づきかもしれないが、ご紹介してきた「人事の仕事が辛いと感じやすいタイプ」の多くが若い人に当てはまりやすい。
- 偉い人・年上との会話が苦になる人
- 実力主義・合理主義・社内政治に否定的な人
- 具体的な成果をあげたい人
- せっかちな人
- 自責志向が強すぎる人
若い人であれば必ず「人事の仕事が辛いと感じやすいタイプ」であるとは言わない。(筆者は22歳から人事である)
しかし、若い人の多くが人事の仕事にストレスを感じやすいのは経験上間違いない。
人事の仕事が辛いときの対策
当サイト「転職参謀」ではよく出て来るコンセプトだが、仕事が辛いときにはいくつかの対処法がある。
今回使えるのは「我慢」「異動」「異職種への転職」の3つである。それぞれ紹介しよう。
我慢する
まず、我慢である。我慢なんて冗談じゃない、という人も多いだろうが、今回のケースでは一定の合理性がある。
というのも、人事の仕事は年を経るにつれ楽になっていく性質があるからだ。
役員やマネージャーとの会話には慣れるし、コミュニケーション能力も上がる。
「具体的な成果をあげたい」「実力主義で出世したい」「正しいことは誰が言っても正しい」という信念も、年齢とともに弱くなって来ることが多い。
異動する
「我慢」から入ったが、人事の仕事が辛くて嫌なのであれば、基本的には異動か転職をおすすめする。
嫌なことで成功してはいけない。
嫌なことで成功してしまうと、その「嫌なこと」を生涯の仕事として、一生苦しみ抜くことになる。地獄の人生である。
とはいえ、転職だけを選択肢にするのはおすすめしない。
「【転職はハイリスク】人事プロが教える、転職より前に検討すべき3つの選択肢」に書いたように、転職にはハイリスクな面があるからである。
よって、まずは社内異動で人事から脱出できないか探ってみるのがおすすめだ。
異職種に転職する
我慢も異動も有効でない場合、異なる職種への転職を検討するといいだろう。
「30代での未経験職種の転職で絶対におさえておきたいことを人事プロが解説」に書いた通り、異なる職種への転職は、異なる業種への転職よりも難易度が高い。
ここで、異なる職種に転職する際のポイントはたった一つ。
早めに転職するということだ。
よって、このケースを検討するのであれば、いつかではなく今日始めるのが適切である。
「ゆるゆる転職」から今すぐに始めてみよう。
まとめ
人事の仕事は特に若い人にとっては辛いが、年齢とともに楽になってくるかと思う。
そこまで我慢するか、異動や転職で職種を変えるかは自由だが、「変えるなら早い方がいい」とだけは言っておく。