人事評価 好き嫌い

納得できない!人事評価が好き嫌いで決まるメカニズムとその対処法

悩めるビジネスウーマン
私の会社では年に2回の評価でボーナスが決まるのですが、今期の評価が前期より下がってしまいました。
しかし、今期は前期より圧倒的に高い実績を上げており、全く納得できません
評価が下がる心当たりは一つ、直属の上司と方針について揉めたことで、正直かなり嫌われた実感があります。
人事評価は好き嫌いで決めて良いのでしょうか?私はどう対処すればいいか、教えてください。

 

 

今回は「人事評価(人事考課)と好き嫌い、そしてその対処法」がテーマである。

 

言うまでもなく、人事評価は多くの企業で出世やお金に直結するため、ビジネスパーソンにとってはこの上なく重要なものである。

その評価が「上司の好き嫌いで決まってしまうのかどうか」という非常にセンシティブなテーマだが、筆者がキャリアを通して向き合ってきたポイントでもある。

 

初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。

筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。

  • 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
  • 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
  • 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
  • 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験

 

結論を言えば、好き嫌いで決めていいかは非常に難しい問題(後述)であるが、好き嫌いでほぼ決まっているのは事実である。

対処法は、大きく分けて「割り切り」「対抗」「異動」「転職」がある。それぞれ本文中にて詳しく解説していく。

 

人事評価は好き嫌いで決まるのか?上司の立場から本音で暴露

まず結論から申し上げよう。

細かいことを捨象して言えば、やはり人事評価は好き嫌いで決まる部分が大きい

 

人事担当者として、現場マネージャーの評価が厳しすぎないか、甘すぎないかを調整しているときには、これは分かりづらい。

好き嫌いでつけた評価に、合理的でもっともらしい理由を後付けするのは簡単だからである。

 

しかしながらもっと身近な、人間関係まで細かくはっきりとわかる状況で見ると、分かりやすい。

最も分かりやすいのは自分が部下を評価する際や、自分が評価した後に同僚のマネージャーや上司とすり合わせ(評価調整)をする際である。

 

齋藤

普段誰が誰に対してどう思っているか(上司が誰を好きか嫌いか、自分が誰を好きか嫌いか)が明らかな中で評価を決めますので、本当に良く分かります。
もちろん「評価は好き嫌いで決まる」ということが、です。

 

人事評価が結局好き嫌いで決まる5つのメカニズム

次に、なぜ人事評価が好き嫌いで決まってしまうのか、そのメカニズムについて解説していきたい。

 

齋藤
なお、本項目は目標設定制度(目標達成度評価)やコンピテンシー評価(行動評価)など、一般的な評価制度が整備されていることを前提として解説しています。
「うちの人事制度の評価要素に『好き嫌い』なんてないのになぜ?」にお答えする趣旨です。

 

好き嫌いで人事評価が決まる理由は、主に以下の5つである。

  1. 上司がファクトベースで実績を把握していないから
  2. まともな上司は、仕事が出来る部下が大好きだから
  3. 「上司に好かれる=円滑に業務が進む」ともいえるから
  4. 数字で項目ごとに配点を決めて評価する形は機能しづらいから
  5. 嫌いな場合に高くなる例外:フィードバックが面倒だから

 

それぞれ解説していく。

 

【1】上司がファクトベースで実績を把握していないから

まず、残念な事実から。

日系企業のマネージャーの多くは、ファクト(事実)ベースで部下の実績を把握していない

 

部長は課長の、課長は係長の実績くらいは把握しているかもしれないが、2階層離れた人間の実績まで詳細に把握しているマネージャーは稀である。

部下の実績を把握し、フォローしたりモチベートしたりするのは上司の役目だが、それが出来ている人は驚異的に少ない。

 

日本の多くのマネージャーは「プレイングマネージャー」と言われているが、実態はそれより酷く、プレイングマネージャーにも至っていないケースが多い。

 

齋藤
特に課長級だと、実際には「プレイングプレイヤー(要はただのプレイヤー)」という人が多いですね。

 

日ごろ、部下の動きをきちんと見ていなければ、評価の時期になっても「カンを頼りに」つける以外にない。

それこそ、印象(=好き嫌い)の評価になるわけである。

 

【2】まともな上司は、仕事が出来る部下が大好きだから

一つ目の理由は、「上司が悪い」という理由であった。

しかしながら、まともな上司(=仕事の成果や行動でつけている上司)であっても、好き嫌いでつけているように見えてしまうことも多い。

 

それは、上司というのは成果責任者なので、その役目からして「仕事が出来る部下が好き」だからである。

よって、以下のような図式になることが多い。

  • 仕事が出来て頼りになるので、上司は「部下A」が好きである。仕事が出来ず全く頼れないので、上司は「部下B」が嫌いである。
  • 上司は、仕事が出来る部下Aに高評価を付けた。部下Aは「仕事が出来るから」高評価なのに、周りからは「好きな部下だから」高評価だと見える
  • 上司は、仕事が出来ない部下Bに低評価を付けた。部下Bは「仕事が出来ないから」低評価なのに、本人からは「嫌いな部下だから」低評価だと見える

 

「仕事が出来る部下が好き」「仕事が出来ない部下が嫌い」な上司は、ある意味では「好き嫌いでつけて良い」とも言える。

なぜならば、評価は本来「仕事が出来るかどうか(成果や貢献、行動)」でつけるものであり、それが好き嫌いと一致しているからである。

 

例をあげよう。

職場に一人くらいは、以下のような方がいないだろうか?

  • 仕事はできる
  • 性格は悪い
  • 上司には好かれている(ように見える)

 

上司も人間なので、性格の悪いこういった人間を「人間的に好きだから評価している」わけではない。

「仕事が出来るので好き」に過ぎず、「仕事が出来るから評価している」のに過ぎない

 

齋藤
この場合、因果関係として「好き」だから「評価している」のではないことは一目瞭然でしょう。

 

【3】「上司に好かれる=円滑に業務が進む」ともいえるから

一つ前の理由と似ているが、上司に好かれるということは、円滑に業務を進める能力があるとも言える。

なぜなら、(少なくとも会社から見て)その組織で最も影響力の高い人物である上司をモチベートし、サポートし、更には協力を仰いで成果を出せる関係性を作れているということを意味するからである。

 

ボスマネジメント(上司をどううまく使うか)という言葉があるが、上司に好かれる人はこれが上手である。

これが出来ているということは、その面では「実際に」仕事が出来ているとも言える。

 

よって、上司と関係が良いということは、評価が正当に高くなる要素になり得る。

 

【4】数字で項目ごとに配点を決めて評価する形は機能しづらいから

正当な評価、精密な評価、公平な評価、恣意性を排除した評価・・・

色々と言い方はあるが、「正しい評価」を議論する際に、必ず出て来るのが「数字で項目ごとに配点を決めて評価する形」である。

 

齋藤
典型的には、エンジニア部署のマネージャーがこの形を好みます。
勝手に配点表を作り、合計点が何点なのか、平均点はどうか、等によって評価しがちです。

 

例を挙げよう。人事業務における評価の配点表を、

  1. コミュニケーション能力:40点
  2. 論理的思考力:40点
  3. 労務等の人事基礎知識:20点

と単純に決めたとする。

 

こう決めた瞬間に、以下のように色々な疑問が出てくるはずである。

  • 項目数とその要素は合っているのか?(本当にこの3つが出来れば人事業務が出来ると言えるのか?)
  • 「コミュニケーション能力」の中の配点はどうなっているのか?
  • 「論理的思考力」の中の配点はどうなっているのか?
  • 「労務等の人事基礎知識」の中の配点はどうなっているのか?
  • 上記3つの要素の配点(内訳)を決めないとしたら、やはり点数に恣意性が出るのでは?

 

少し考えれば分かるが、これらの疑問を解決した、精密な評価を作るのは至難の業である。

以下のような作業が発生してしまうためだ。

  1. コミュニケーション能力や論理的思考力とはどう分解できるのかについての(おそらく数百項目にもわたる)表を作る
  2. 分解したものの配点を議論し、数百項目の中で比重を決める
  3. 部署ごと、職種ごとに、仕事に必要な要素を定義し、全ての項目を洗い出す
  4. 洗い出された要素についても、分解し、配点(比重)を全て決める

 

これは、おそらく神にしか完遂できない作業であろう。

なので、ある程度の精度の「配点表」を作ることになるが、これでは結局「好き嫌いを含む裁量」が入る余地が残る。

 

それ以外にも問題が出る。

あくまで「ある程度の精度」であるから、評価を付ける人間の感覚値とは異なる結果が出るのである。

 

悩める経営者
うーん、A君よりB君の方が点数が上になってしまったぞ。
どう考えてもA君の方がわが社のエースなのだが・・・困ったな。

 

こうなるわけである。

「好き嫌い要素」をある程度排除出来たとしても、今度は「上司の感覚と乖離した」結果が出てきてしまう。

 

ここで、上司の感覚に合わせるとなると、配点をいじって「好き嫌い評価」に近づけることになる。

よってそれは出来ないが、それでもこの配点表を使い続けるということは「上司の感覚と異なる評価」を付け続けることになる。

 

これはどこかで無理をきたし、使われなくなる

役員やマネージャーが「配点表の項目もしくは配点が間違っていたのでは」「正確な配点表を作ると言うのがそもそも無理なのでは」と思うからである。

 

長々と述べてしまったが、結論を言おう。

 

人事制度の企画担当をしていた際、かなり多くの大企業の評価制度を公式・非公式に見てきたが、細かい配点表形式というのはほぼない。(作ろうとして挫折した例ならいくつか存じ上げている)

当然だが、「正確な配点表」を拝見したことはない。理論上は存在するが現実には存在しないものの典型であろう。

 

配点表を用いた評価は上記のような破綻をもたらすことになるのだ。

 

よって結局、多くの企業ではやや曖昧な目標達成度評価とコンピテンシー評価を混在させて評価に用いている。

それによって「ある程度の精緻さ」と「上司の裁量」を混在させて評価するのがメジャーな手法であり、人事評価の現実である。

 

【5】嫌いな場合に高くなる例外:フィードバックが面倒だから

「好き嫌いで人事評価」というと好きな部下を高く、嫌いな部下を低く評価するイメージかと思う。

最後に、この例外(嫌いだからこそ高い評価になる例)を一つだけご紹介しておこう。

 

多くの大企業では、上司から部下に評価ランクと評価の理由をフィードバックするプロセスがある。

これは評価の納得性を高める重要なプロセスだが、上司にとっては嫌な時間である。

 

多くの場合、自己評価というのは他人からの評価よりも高くなることが心理学的にわかっている。

つまり、評価のフィードバックプロセスは「相手の予想より低い評価を伝える」ことになりがちなのである。

 

場合によっては、その場で上司を強く問い詰める部下もいる。

これは上司にとっては大きなストレスなので、ダメな上司はそこから逃げ出す。

 

つまり、「本当はダメなのだが、普通くらいの評価にしとくか。面倒な人だし」ということも起こりえる。

この場合、「面倒な人」と言っている通り、上司はその部下のことが嫌いであるが、それにもかかわらず評価が高くなる。

 

齋藤

もちろん、これはやってはいけないことです。
しかしながら、多くの日本人上司は「面倒で、なおかつ評価に敏感な人を高く評価しがち」です。
私はこれを嫌と言うほど見てきました。

 

好き嫌いの評価に対してどうする?納得できない場合の対処法4つを伝授

ここまで、好き嫌いで人事評価が決まる理由について説明してきた。

最後に、人事評価に納得できない場合の対処法についてご紹介していく。

 

前提として、「上司に好かれている人」はあまり対処法を必要していないと思うので、「上司に嫌われている」かつ「上司は好き嫌いで評価する」場合について書いていく。

つまり、あなたが評価されておらず、かつそれが上司の好き嫌いによるものであることを前提に、その対処法について記載していく。

 

対処法は以下の4つである。それぞれ解説していく。

  1. 上司を仕事をくれる取引先だと考える
  2. 上司や、上司の上司と話し合う
  3. 異動する
  4. 転職する

 

【1】上司を仕事をくれる取引先の人だと考える

まず、ベースとなる考え方から。

結論から申し上げると、上司を「仕事をくれる取引先」としか考えないようにしよう。

 

齋藤
この対処法はいわゆる「精神論」です。
しかしながら、人によっては意外と効果的で、楽に上司と付き合えるようになる方法だと思います。

 

自分が下請けであり、相手から仕事をもらっているのであれば、多少横柄な相手でも「まあ仕事だからな」となるだろう。

上司を上司だと思い、「上司は部下のモチベーションを高めるのも仕事のはずだ」などと思っているから上司のことが嫌いになり、それが上司に伝わって相手からも嫌われることになるのである。

 

「嫌なおじさん(おばさん)」だけど「仕事をくれるから生活のために必要」だと思うことが第一歩である。

そもそも仕事をくれること以外は期待しなくなるので、以下のようなストレスが減り、仕事力の向上にも役立つ。

  • 上司なのに決断してくれない
  • 上司なのに困っていても助けてくれない
  • 上司なのに部下をモチベートしない(むしろデモチベートしてくる)
  • 上司なのに上司の上司と話すときに責任を回避する(はしごを外す)

 

上記は上司の仕事ではあるが、取引先の「仕事をくれる嫌なおじさん(おばさん)」の仕事ではないだろう。

だから、これをやってもらうのは潔く諦めよう。

 

【2】上司や、上司の上司と話し合う

評価というものは、決定までに様々なプロセスがある。

まずは直属の上司(例えば課長)が評価し、上司の上司(例えば部長)がそれに対して意見し、部署横断で甘い・厳しいを平均化する、というプロセスが一般的である。

 

この際、関係者間で評価がズレているというのはよくあることだ。

つまり、あなたの評価について、直属の上司と、上司の上司との間で意見が違う場合も多い。

 

齋藤
なので、上司に評価に対する疑念をぶつけるとともに、上司の上司にも伝え、問いただしてみるのも手です。

 

上司の上司(例えば部長)が「やはり本人としても納得していないのか、自分も課長が付けた一次評価は変だと思っていた」と思う可能性はゼロではない。

そうならずとも、「この人は評価に敏感だ」「評価の理由を事実ベースで問い詰めてくる」と思われれば好き嫌いだけの評価はしにくくなるのである。

 

直属の上司との力関係や上司の上司との関係、あなたのキャラクター等にもよるし、実際には上司に対して直截に反論できる人は少ないと理解している。

さらに、問いただすことで今後の関係性が悪くなることもあり得る。そこも考慮せねばならない。

 

しかしながら、この行動は「次回の評価を良くする(悪い評価を付けさせない)ことの布石」になり得るため記載した。

 

齋藤

一つ注意点として、あなたに評価が伝わる頃には「確定評価」になっており覆せないことも多いです。
可能であれば「(評価を決める前に通常行われる)評価期間での実績を確認する面談」において、上司が自分にどんな評価を付けようとしているかを探り、場合によってすぐに上司の上司とも話す、というのがベストです。

 

【3】異動する

「不当に評価が低い」とはっきりわかるレベルまで上司と関係が悪いのであれば、人事としては「異動」または次項の「転職」を勧める。

事実として、人間の好き嫌いは簡単には変わらないからである。

 

上司がダメなマネージャーの場合には、仕事の出来に関わらず「好き嫌いで評価する」傾向はあまり変わらないだろう。

逆に、ある程度まともなマネージャーだったとしても、「仕事が出来ないから嫌い」とあなたにレッテルを貼ってしまっている可能性があり、この評価もやはり変わりにくい。

 

よって、もしこういった状況であれば、すぐに環境を変えるべきなのである。

 

さらに言えば、上司との関係が悪い場合、上司に近い人との関係も悪かったり、職場としてあなたを「出来ない人」とみなす雰囲気があったりすることも多いのではないだろうか。

こういう場合は、一度「リセット」することを勧める。

 

あなたの会社にある異動の制度にもよるが、リセットの方法として可能であれば「異動」するのが良いと思う。

周り、特に上司が「この人は活躍できない」と思っている所では、実際に活躍できなくなってしまうからだ。(活躍する機会すら与えられなくなるため)

>>異動希望は気まずい。それでも異動希望を出すべき理由を人事プロが解説

 

【4】転職する

人事権(配置を決める権利)は会社にある。

なので、「異動せよ」とアドバイスされても、可能ではない方も多いだろう。

 

逆に、誰でも出来るのが「転職」である。

職業選択の自由は法で認められた権利であり、誰もがとれる選択肢である。

 

転職が有効なのは、異動が出来ない場合に限らない。

その職場の仕事(例えば人事業務)自体は好きなので異動したくない、けれども上司に嫌われてしまっているというとき、他社の同じ職種に転職するのは一つの手である。

 

単なる異動では、現在の人間関係のしがらみが付きまといがちな部分もあるだろう。

転職は異動に比べてリスクが大きいが、リセットできる範囲が広く、リターンも大きいため考えてみる価値はあるかと思う。

 

まとめ

このページをご覧になっている方は、上司に嫌われてしまい、不当に低い評価をされている方が多いだろう。

綺麗事を抜きにすると、そのような事態は変えにくいし、精神に大きなストレスを与え続けるものでもある。

 

上司の評価が低い程度なら良いが、それに引きずられてあなたのあなた自身への評価(自己評価)まで下がってしまうとしたら、それは最悪の事態である。

自己評価(自信・自尊心)はプロとして仕事をする上で非常に重要なので、それを失う前に何らかのアクションを採るべきである。

 

そういった懸念があるのであれば、人事のプロとしては「異動」または「転職」をお勧めする。転職をお考えの方は、必要に応じて以下の記事を参考にしてほしい。

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