35歳、男性です。転職の限界は35歳と言われているからか、最近、同期の転職が相次いでいます。
それ自体は悪くないのですが、悲しいことに、転職した同期のうち転職先でうまくいっている人が少ないのです。
転職はリスクが高いと思うのですが、昨今のキャリアアップの風潮や、転職の広告につられて転職してしまっている人が多い印象です。
最近、また一人、転職したいという同期が出てきました。
止めるべきなのか、また、止めるにしてもどう止めるべきなのか悩んでいます。何かアドバイスいただけないでしょうか?
今回は、「転職のリスクと、転職の前に試みるべき選択肢」がテーマである。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
本記事では、転職におけるリスクと、リスクを減らすために転職の前にやったほうが良いことについて記載していく。
この記事を読むことで、リスクの高い無謀な転職を避け、結果としてより満足度の高いキャリアを歩めるようになる。
【結論】転職はハイリスクである
少し古いデータだが、マクロミルが転職後に「転職に成功したかどうか」を4択で調査したところ、以下のようになったとのことである。
- 成功した:16.4%
- どちらかというと成功した:57.4%
- どちらかというと失敗した:20.0%
- 失敗した:6.1%
調査機関:マクロミル株式会社
転職してすぐの方も入っているようです。
一見すると、「成功」「どちらかというと成功」の合計が7割以上であり、転職というのは上手くいく可能性の方が高い賭けに見える。
ただ、人間には過去の決断が正しかったと思いたい「認知バイアス」があることまで考慮すると、筆者は以下のようにとらえた。
- 約4人に1人(26.1%)が「失敗」もしくは「明確な失敗とは認めたくないが、転職しないほうが良かった」と感じている
- 約6人に1人(16.4%)が「成功」と感じている
- 半分強(57.4%)は「まあやって良かったかな」と感じている、もしくは「まだよく分からないけど悪くはない」と思っている(転職してまだ数か月の人間も含むため)
最後の57.4%の方々について、そもそも転職という一種の人生の賭けを、「どちらかというとやって良かった」という程度の向上を得るためにやっている人などいない。
基本的には「成功」を狙っているはずだ。そう考えると、この57.4%は「当初の狙いを達していない」という意味で成功とは言えない。
ここまでを踏まえ単純化すると、
- 約4人に1人(26.1%)が「失敗」
- 約6人に1人(16.4%)が「成功」
- 残り全て(57.4%)が「どちらでもない」
と考えているというのが実情だろう。
回りくどくなったが、筆者自身の転職経験や、人事として3桁の転職者を見てきた経験も踏まえ、結論を書く。
- 転職後には、半分以上の人間が「転職先には転職先の、前職には前職の、良いところ・悪いところがそれぞれあるな」と思う。つまり、失敗も成功もしない確率が最も高い。
- 明確な「成功」、明確な「失敗」ももちろんある。残念ながら、どちらかというと「失敗」の確率の方が高い。
転職は、転職させればさせるほど皆が儲かるビジネスモデルである。
よって、他の転職サイトには書いていないかもしれないし、転職エージェントもそうはいわないだろうが、これが事実である。
ビジネスパーソンが現状を変えたい場合の4つの対処法
ここまで、転職はハイリスクであるということをご説明してきた。
ここからは、「ではどうすればよいか」について記載してゆく。
ビジネスパーソンが現状を変えたい場合には、大きく4つの対処法がある。
- 改善する
- 我慢する
- 異動する
- 転職する
これらの対処法を、現状を変えたい(=転職したい)理由別に組み合わせて用い、状況の改善を試みるのがよい。
一般的に、現状を変えたい(転職したい)理由とは大きく以下のようなものであろう。これらのうち、上記の「改善」「我慢」「異動」「転職」が機能しそうなものを紹介してゆく。
- 年収や肩書、市場価値を上げたい
- やりたい仕事がある
- 人間関係が悪い
- 会社の将来性に不安がある
- ブラック企業である、ハラスメントがある
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい
- ローテーションにより専門性が身に付かない
- 単純作業やムダな業務が多く、つまらない
- ヒエラルキーがあり、若手である自分の意見が受け入れられない
- 働かない人間や無能な人間がおり、腹立たしい
- 飲み会やイベントがくだらない
- 評価や人事制度に不満がある(年功序列等を含む)
- 著しくヒマである
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない)
改善する
自分で変えられる部分は変える。すなわち「改善」である。
(そうでないと、「転職」や「異動」も入ってしまいますので)
「自分でできることはやりつくした」という読者も多いだろう。
その場合はこの項を飛ばして構わないが、転職したい理由によっては以下のような改善を試みても損はない。
「改善」がある程度機能しそうな現状を変えたい(転職したい)理由は、以下である。
- やりたい仕事がある →上司にそれを知らせているか?やりたい仕事に就くための研鑽は積んでいるか?
- 人間関係が悪い →出来る範囲で改善の努力はしたか?
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい →上司にそれを知らせているか?
- ローテーションにより専門性が身に付かない →希望によりローテーションしていない人はいないのか?もしいれば、真似出来ないのか?
- 単純作業やムダな業務が多く、つまらない →それを効率化することは評価されないのか?
- ヒエラルキーがあり、若手である自分の意見が受け入れられない →根回し等、社風に沿った動きは出来ているのか?
- 飲み会やイベントがくだらない →「飲み会に出ないキャラ」を確立している人はいないのか?もしいれば、真似出来ないのか?
- 著しくヒマである →その時間で自己研鑽をすることはできないか?
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない) →上司や、上司の上司はその状態を認識しているか?現状への不満を訴えたか?
自分に非があるようで「改善」という言葉には抵抗があるかもしれない。
ただ、改善することが出来る力を養っておくことは、転職してもしなくても自分の財産になる。
我慢する
次の対処法は「我慢」である。
消極的な対処方法に見え、一見役に立たなそうだが、ある特定の条件下においては効果的である。
その条件とは以下の2つであり、両方を満たす必要がある。
- 時間が経てば解決しそうである
- 解決しそうな時まであなた自身が我慢できそうである
「我慢」がある程度機能しそうな現状を変えたい(転職したい)理由は、以下である。
- 人間関係が悪い →悪い人間関係の原因となる人物が、定期異動等でいなくなることはどの程度あり得るか?
- 働かない人間や無能な人間がおり、腹立たしい →いらだちの原因となる人物が、定期異動等でいなくなることはどの程度あり得るか?
- 飲み会やイベントがくだらない →(「一番若手だから幹事であり、参加せざるを得ない」等の場合のみ)後輩が入る等により幹事を交代できる可能性はないか?
異動する
次の選択肢は「異動」である。
ソニーやリクルートのように公募での社内異動制度がないと躊躇しがちだが、異動について上司や人事に相談してみる価値はある。
人事からすると、「辞められてしまうくらいなら異動を検討したのに」「相談してくれればよかったのに」と思うことは多いものです。
異動には、転職ほどではないものの環境をガラっと変える効果がある。(特に大企業では、職場のフロアの移動や、勤務地変更もあり得る)
リスクもあるのだが、転職ほどハイリスクではない。
「異動」がある程度機能しそうな現状を変えたい(転職したい)理由は、以下である。
- やりたい仕事がある →社内にそれができる部署はないのか?異動希望を上司に、上司がダメなら人事に打診したか?
- 人間関係が悪い →異動では解決されないのか?
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい →社内にそれができる部署はないのか?異動希望を上司と人事の両方に打診したか?
- 単純作業やムダな業務が多く、つまらない →自分の部署だけのことではないのか?異動は解決策になりえないか?
- 働かない人間や無能な人間がおり、腹立たしい →異動では解決されないのか?
- 飲み会やイベントがくだらない →それは会社全体でのことか?飲み会やイベントが多い、またはつまらない部署にいるのではないのか?
- 評価や人事制度に不満がある(年功序列等を含む) →(年功序列への不満の場合)若いマネージャーがいる部署は一つもないのか?
- 著しくヒマである →それは会社全体でのことか?ヒマな部署にいるだけではないのか?
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない) →それは会社全体でのことか?忙しい部署にいるだけではないのか?
異動では、転職と同じくらい多くのことを解決しうる。
ただ、「職種により、事実上異動が不可能なケース」もよくある。その場合は、異動は最善の策にならないだろう。
例えば「人事部が忙しすぎる。ただ、自分の専門性は人事で、それ自体は好きだから、1つしかない人事部の外に異動も出来ない」という場合である。
転職する
最後の手段が「転職」である。
転職は全ての「現状を変えたい(転職したい)理由」を解決しうる。
ただ、最初に述べた通り、失敗するリスクも他の手段(改善、我慢、異動)より高い。
多くの転職を見てきたものとして、安易な転職はおすすめしない。
よって、ここまで述べた選択肢が不発に終わった際、転職を考えると良いだろう。その際には、以下の記事も参考にしてほしい。
>>おすすめ転職サイト・エージェント|プロ厳選の比較ランキング
まとめ
転職はハイリスクであるため、まずは以下の3つの選択肢での解決を探ってみるべきだ。
- 改善する
- 我慢する
- 異動する
転職すると決めた際も気負い過ぎず、まずは転職サイトに登録だけしておき、時間をかけて良い求人を集めるのがよい。
良い求人は、一朝一夕には集まらない。
あなたが「転職したい!」と思ったタイミングで、あなたにとっての「最高の求人」があることは少ない。
ゆるゆる転職は、「絶対転職する!」と力んで臨むよりも結果的にうまくいくことが多いのでおすすめである。