転職活動中ですが、面接の転職理由(志望動機)で何を言ったらいいのか分かりません。
本音は「上司がクソだったから」なのですが、これは通用しないですよね?(上司とうまくやれない人、と思われてしまいそうです)
人事のプロとして、面接の転職理由で何を言ったら良いのかを教えてほしいです。
今回のテーマは「面接における転職理由」である。
結論から申し上げると「面接で言っても良い転職理由はキャリアプラン系、ライフプラン系、本当にヤバい系の3つだけ。ただし、これに当てはまらなくても裏技はある」という内容の記事になっている。
そもそも「本音の転職理由」が必ずしも綺麗なものではないことはプロとして100%理解していますので、ご安心ください。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、中途面接でほぼ必ず聞かれる「転職理由」の対策が完璧になり、面接突破率(選考合格率)の向上に役立つだろう。
【理想】志望動機と退職理由と本音の3つをすべて一致させる
まず理想としては、転職理由を構成する3つの要素、つまり志望動機と退職理由と本音はすべて一致させたほうが良い。
後述するが、転職理由として有効なのは「キャリアプランにかかわる理由、ライフプランにかかわる理由、本当にヤバい環境だったとわかる理由」の3つだけである。
この3つのうち、誰でも使えるのが、キャリアプランである。
キャリアプランで転職理由を説明する場合、志望動機は、その「キャリアの大きな方向性そのもの」とし、退職理由は「そのキャリアを歩むために今の会社を辞めてあなたのところに移る必要があるから」としたい。
さらに、あなたの「キャリアの大きな方向性そのもの」が本音であることが、あなたの幸せや次の会社で成功するために重要である。
つまり、志望動機と退職理由と本音の3つをすべて一致させることが重要なのである。
とはいえ、今の話は非常に分かりにくいと思うので実例を挙げておく。
例えば「1社目がA社の人事部⇒2社目の現在は研修会社(グロービス等)の講師⇒3社目にC社の人材開発部(育成マネージャー)への転職を目指す」というキャリアであれば、以下のようにする。
- 志望動機:人材を育成することにより、実際に事業を良くしていくプロフェッショナルになりたい
- 退職理由:現在の研修会社では、自社の事業への貢献を感じられず、研修の成果を長期的に追っていく(測定する)のも難しいから
- 本音:人材育成により事業を良くしていくプロフェッショナルになるため、今の研修会社ではなく、事業会社であるC社に転職して育成に携わりたい
「理想的には」という話ではあるが、上記のようにすれば、あなたの転職成功率も幸せの度合いも高まり、実務的には選考突破率も上昇する。
本記事では、本音があまりポジティブでない場合にどうするかについても明確に回答します。
以上は「2回目の転職を成功させるための全知識【プロが教える】」に記載したことではあるのだが、前提として重要なので再掲した。
【前提】面接官が納得し、志望先では当てはまらない退職理由になっているか
冒頭で理想のパターンをご紹介したが、現実的には、「面接官に認めてもらえるような本音」を持っている人は多くないだろう。
志望動機と退職理由と本音の3つをすべて一致させるのが難しい場合には、理想ではなく、(ある程度本音に近い)建前を用意して勝負することになる。
この時、どのような転職理由を用意すればよいか。
簡単に言えば、「面接官が納得する」かつ「志望先で当てはまらない」転職理由にできればよい。
そもそも面接官が転職理由を聞くのは、以下の2つを見るためである。
- 不平不満が多い人物ではないか?
- 自社でも起きている理由(例えば「飲み会が多い」等)で辞めていないか?
上記の2つに該当する場合、面接官は「だとしたら、うちでも辞めてしまうのでは?」と考える。
よって、面接官から見て「不平不満ではなく、納得できる」、なおかつ「志望先では起きていない」転職理由を述べればOKなのである。
もちろん面接官にも個性があるので、「Aという面接官には有効だが、Bという面接官には有効ではない」という転職理由もあるだろう。
しかしながら、面接の本質は「自社で役立つ可能性の高い人物を採用する」ことなので、面接官が転職理由を聞く理由はどの会社でもある程度共通するのである。
【基本】転職理由として通用するのはキャリアプラン系、ライフプラン系、本当にヤバい系の3つのみ
前項で述べた通り、面接で通用するのは、以下の2つの条件を満たした転職理由である。
- 面接官が納得する
- 志望先で当てはまらない
本音の転職理由は、以下のように幅広い。このうち、上記の2つの条件に当てはまるものを赤字にしておく。
- 年収や肩書、市場価値を上げたい
- やりたい仕事がある
- 人間関係が悪い
- 会社の将来性に不安がある
- 職種の将来性に不安がある
- 社風が合わない
- ブラック企業である、ハラスメントがある
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい
- ローテーションにより専門性が身に付かない
- 単純作業やムダな業務が多く、つまらない
- ヒエラルキーがあり、若手である自分の意見が受け入れられない
- 働かない人間や無能な人間がおり、腹立たしい
- 飲み会やイベントがくだらない
- 評価や人事制度に不満がある(年功序列等を含む)
- 勤務地や転勤制度に不満がある
- 著しくヒマである
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない)
- 介護や子供の教育などの個人的な事情がある
赤字にせず除外したもの、たとえば「人間関係が悪い」という転職理由を伝えるのは危険だ。
実際にひどい人がいた可能性もあるが、「人間関係で不平不満を抱きやすい」と思われる可能性も高い。
後者としては、「飲み会がくだらない」が代表的です。志望先における飲み会の頻度や重要性等は、通常は入社前に分からないため、危険なのです。
結論として、多くの面接官に受け入れられるのは、以下の理由である。
- やりたい仕事がある:キャリアプラン系
- 会社の将来性に不安がある:本当にヤバい系
- 職種の将来性に不安がある:キャリアプラン系
- ブラック企業である、ハラスメントがある:本当にヤバい系
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい:キャリアプラン系
- ローテーションにより専門性が身に付かない:キャリアプラン系
- 勤務地や転勤制度に不満がある:ライフプラン系
- 著しくヒマである:キャリアプラン系
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない):ライフプラン系または本当にヤバい系
- 介護や子供の教育などの個人的な事情がある:ライフプラン系
既に記載しておいたが、上記は、それぞれ以下の3つに分類できる。
- ライフプラン系(「ライフプランと合わない」ということ)
- キャリアプラン系(「キャリアプランと合わない」ということ)
- 本当にヤバい系(ハラスメントや過度な長時間労働など)
この3つに分類される転職理由であれば、まともな面接官は「なるほど、それは転職に踏み切るのも理解できる」と思う。
逆に言えば、転職理由として成立するのはこの3つだけであるということだ。
ここで意識すべきことは、分類に寄せて回答すること、つまり「キャリアプラン系」ならキャリアプランに寄せて答えることである。
分かりにくいと思うので、具体例を挙げよう。
例えば、「著しくヒマである」を「キャリアプラン系」として語る場合であれば、「若手に仕事が回ってこず、ヒマすぎてスキルがつかない。自分はもっと頑張って専門性を高めたい」のように語ることだ。
同様に、「著しく忙しい」を「本当にヤバい系」として語る場合には、「残業が月間30時間でした」ではダメである。
人事の感覚では、過労死が認められ得るライン、月間の時間外労働65時間くらいから納得性が出て来る。
最後に、同じ「著しく忙しい」を「ライフプラン系」として語る場合には、出産や育児、介護などとの結びつけが肝である。
その場合、志望先の企業が「ワークライフバランスに優れている」と事前に分かっていることも重要だ。
率直に言って、ライフプラン系の転職理由は女性の方が納得を得られやすいことが多いだろう。
【裏技2つ】転職したい度合いをぼかす、リサーチして転職理由を作り込む
前項まで、面接の転職理由の基本を記載した。
基本的には前項で述べた理由のうち、最も本音に近いものを選んで伝えればOKだ。
とはいえ、以下のような様々な事情から、前項で述べた理由を使えないという方もいるかもしれない。
- 人間関係など、「不平不満では?」と思われやすい理由しかない
- 正直、自分のわがままな理由だという自覚がある
- 理由はあるのだが、面接官を納得させられるのか自信がない
- 個人的な理由、もしくは込み入った理由であるため、面接官に言いたくない
前項で述べた理由が使えない場合にも、手はある。
裏技として、2つほど紹介しておこう。双方、実績は証明済みの方法である。
- 転職したい度合いをぼかす
- 志望企業の課題に合わせて転職理由を作り込む
転職したい度合いをぼかす
一つ目は、転職したいという度合い、つまり「転職意志」をぼかすということである。
具体的には、転職理由を問われたら以下のように答える。
- 「強く転職したいとは思っていないが、転職に抵抗はないので、良いところがあればと考えて広くみている」
- 「御社には、エージェントに紹介されて興味を持った」
結局、転職面接とは、自分という商品を売り込む営業である。
そして、営業とは交渉なのである。
交渉で営業パーソンが「私はあなたに買ってもらえないと困る!」と強く主張した場合、交渉相手から足元を見られてしまうのは分かっていただけると思う。
良い営業パーソン、良い商品であるほど、「素晴らしい商品なので、あなた以外にも売れます。しかし、あなたが買いたいのであればお売りします」という態度をとるものである。
それよりも、「私は、御社以外も欲しがる人材です。御社でなければいけないとは思っていません。ただし、今なら御社に売ってもいいですよ」という見せ方が重要なのです。
この手を使うと、プレゼン(売り込み)をするのは、あなたではなく相手(志望企業および面接官)側になる。
志望企業の課題に合わせて転職理由を作り込む
もう一つの裏技は、志望企業に合わせ、志望企業が望む転職理由を作り込むというものだ。
具体的には、事前にOBやOG、Linkedinでのつながりを通じて志望企業の社員に会う。
そして、「その企業の、入りたい部門における現在のトピックやイシューは何なのか」を理解して志望動機(転職理由)を作るというものである。
「志望動機が、まさにその企業の、その部門が困っていることの解決となっている人」は断られにくいです。
「ぴったりの人材が来た!」と有頂天になる人事担当者も多いでしょう。
OB・OG訪問と言うと学生向けのアドバイスにも聞こえるが、転職の志望動機の磨き上げでここまでする人は滅多にいない。
嘘をつくのはいけないが、実際に興味があるのであれば、キャリアプラン系の転職理由として「御社で○○がやりたい」「○○を解決したい」と伝えるのはかなり効果的である。
まとめ
面接での転職理由は、以下から「最も本音に近いもの」を選んで伝えるのが良い。
- やりたい仕事がある:キャリアプラン系
- 会社の将来性に不安がある:ライフプラン系
- 職種の将来性に不安がある:キャリアプラン系
- ブラック企業である、ハラスメントがある:本当にヤバい系
- 幅広い、もしくは深いスキルや経験を積みたい:キャリアプラン系
- ローテーションにより専門性が身に付かない:キャリアプラン系
- 勤務地や転勤制度に不満がある:ライフプラン系
- 著しくヒマである:キャリアプラン系
- 著しく忙しい(残業が多い/休日が少ない):ライフプラン系または本当にヤバい系
- 介護や子供の教育などの個人的な事情がある:ライフプラン系
「ライフプラン系」や「キャリアプラン系」であれば、プランとのギャップが明確に分かるように伝えよう。
「本当にヤバい系」であれば、どれだけブラックだったのか、ひどいハラスメントだったのか、過酷な長時間労働だったのか、これらのヤバさが伝わらないと「不平不満」と思われてしまうことに気を付けよう。
裏技としては、以下の2つをご紹介した。必要に応じて活用してほしい。
- 転職したい度合いをぼかす
- 志望企業の課題に合わせて転職理由を作り込む