現在、転職活動中の者です。
第一志望の企業で、2次面接を通過し、次が最終面接(社長もしくは役員面接)だと言われました。
「最終面接は顔見せ・挨拶程度で、落ちない」と聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
この真偽や、最終面接における対策のポイントがあれば教えてください。
今回のテーマは「最終面接(社長面接・役員面接)は落ちないという俗説の真偽と、最終面接の対策方法」である。
結論から申し上げると「最終面接であっても普通に落ちる。さらに、対策できるポイントが少ないという厄介さもある。本記事では、その数少ない対策ポイントを解説する」という内容の記事になっている。
ただし、今までの面接よりも格上の職位の方が面接官となる場合が多いので、その想定で記載しています。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、「最終面接は落ちない」という俗説に惑わされることなく万全のマインドセットで最終面接に臨むことができ、合格率を高めることが出来るだろう。
結論
本記事の結論を単純化して記載すると、以下のようになる。
- 最終面接(役員面接)で落ちる可能性は意外に高く、「最終面接は落ちない」は嘘である
- しかも、最終面接では相性を確認されることが多く、相性には正解がないので対策は困難である
- ただし、その中でも「キャリア観を問う質問」は対策可能なので、自身のキャリア観を再確認しておくのが良い
【前提】最終面接(役員面接)で落ちる可能性は50%程度と言われる
まず前提として、最終面接(役員面接)で落ちる可能性は意外に高い。
人材系大手のパソナによれば、最終面接で落ちる可能性は50%程度、厳しい企業だと70%にも上るという。
一般的に最終面接は、一次面接や二次面接よりも通りやすい傾向にあり、最終面接までいけばほぼ大丈夫と考える人もいるかもしれません。
しかし、実際は転職活動の最終面接で落ちる可能性は50%程度。厳しい企業だと70%程度に上るところもあります。つまり、半数以上の人は落ちているのです。甘く考えていると失敗してしまうので、充分に気をつけましょう。出典:PASONA 「転職活動最後の関門 最終面接で落ちる確率を減らすための対策とは」
人事のプロとしての実感値からすると、これはさすがに高すぎ(落ちすぎ)だと思うし、極端な例を含んでいると感じる。
しかしながら、人材大手のパソナに一定以上の面接合否データの蓄積があることに疑いはないし、「最終面接は意外に高い確率で落ちる」ということ自体は筆者も同意する事実である。
「最終面接は顔見せ・挨拶程度」の場合もあるが、準備するに越したことはない
冒頭の相談者が言っているように、「最終面接は顔見せ・挨拶程度」の場合も実際にある。
問題は、完全な面接なのか、顔見せ程度なのかが事前に分からない点だ。
ここでは、想定外であることで受けるダメージの程度を考えると良いだろう。
つまり、「面接だと思っていたら挨拶程度だった」という場合の「想定外」にダメージは少ないが、「挨拶程度だと思っていたら完全な面接だった」という「想定外」には大ダメージの可能性があるということだ。
そう考えると、(当然の結論だが)準備しておくに越したことはないということになる。
しかしながら、それも役員が変わったり、採用方針が変わったりすると一気に変わり得るので、鵜呑みにしないほうが良いでしょう。
【補足】最終面接に限らず「落ちるフラグやサイン」は全て嘘なので気にしなくて良い
補足だが、ネット上で言われる「落ちるサインやフラグ」は嘘なので気にしなくても良い。
例えば、以下のようなものが「不合格サイン」「不採用フラグ」であるというのは、すべて嘘である。
- 深掘り質問をされなかった
- 基本的な質問だけで終わってしまった
- 企業の話や面接官の意見がまったくなかった
- 面接官の反応が鈍かった(薄かった)
- 面接の時間が短かった(すぐ終わった)
上記について不合格サインではない理由が気になる方は、以下の記事を参考にしてほしい。ちなみに、不合格サインはほぼ嘘だが、可能性が高めの合格サインは一つだけある。
>>面接の手応えがわからない!本当の合格サインや手応えありでも落ちる理由をプロが解説
【具体例】最終面接で聞かれることと、落ちないための対策が困難な理由
「最終面接は意外に高い確率で落ちる」が前項の結論であった。
「ならばきちんと対策をしよう」が通常の反応かと思うが、実際には最終面接の対策は困難である。
本項では、その理由を解説していく。
最終面接(役員面接)で聞かれること
最終面接(社長面接、役員面接)で聞かれることは多岐に渡る。
1次面接や2次面接で聞かれたことを再度聞かれることもある。
とはいえ、最終面接で問われやすく、かつ落ちる理由になり易い問いはある。それが以下の2つである。
- カルチャーフィット
- キャリアの考え方(キャリア観)
カルチャーフィットとは、その会社の社風に合っているかどうか、ということである。
最終面接の面接官は社歴が長いことが多いため、この「カルチャーフィット」をよく見てくることが多い。
この「カルチャーフィット」は、具体的な質問でピンポイントに問うと言うよりは、話し方や雰囲気、回答の背景にある考え方等から総合的に察することが多い。
人事のプロとして言えば、どのような質問の回答にもその人らしさが出るので、カルチャーフィットを問う質問は特にないのである。
キャリアの考え方(キャリア観)を問う質問も、最終面接においてよく見られる。
こちらは、キャリアの節目での決断の理由、例えば過去の転職理由や、今回の退職理由等が典型的な質問である。
キャリア観というより人生観に近いような質問も含まれる。
キャリアの考え方(キャリア観)を問うための具体的な質問例としては、以下である。
- 今回、なぜ弊社に転職しようと思ったか
- ○○社から△△社へ転職したのはなぜか
- キャリアのなかで、一番達成感があったことは何か
- 小さい頃から変わらないことはあるか、変わったことはあるか
- 10年後はどういうキャリアを歩んでいたいか
繰り返しになるが、最終面接ではありとあらゆる質問が出る可能性がある。
ただし、人事として見てきた中で、「最終面接で問われやすく」、かつ「落ちる原因になり易い」のは、カルチャーフィットとキャリア観である。
最終面接で落ちないための対策が困難な理由
冒頭でも申し上げた通り、最終面接で落ちないための対策は難しい。
その理由は、最終面接で問われやすいカルチャーフィットとキャリア観が、相性が重要な「マッチング度合いを見る質問」だからである。
マッチング度合いを見る質問に、正解はない。
お互いの相性が良いかどうかを確かめるものであり、何らかの知識を付けたところで対応しやすくなることもない。
特にカルチャーフィットの方は、「カルチャーフィットを問う質問」としてストレートに確認することは稀であるため、対策はほぼ無理である。
また、仮に対策が出来たとして、「本音のあなた」とカルチャーが合わない会社に無理やり入った結果、幸せになれるかは大いに疑問だ。
以下の記事に書いたような社風の会社に「カルチャーフィットしているふり」をして入っても、不幸になる方が多いかと思います。
>>人がどんどん辞めていく会社にありがちな「7つの社風」とは
【対策】キャリア観の再確認と、落ちても落胆しない準備を
前項で述べた通り、最終面接で頻出する「相性を問う質問」は対策しづらく、特に「カルチャーフィット」は対策が困難である。
ただし、もう一つの「キャリア観」の方は具体的な質問があるので、ある程度対策が可能だ。
キャリア観の再確認をしよう
再掲になるが、キャリア観を問う質問は以下である。
- 今回、なぜ弊社に転職しようと思ったか
- ○○社から△△社へ転職したのはなぜか
- キャリアのなかで、一番達成感があったことは何か
- 小さい頃から変わらないことはあるか、変わったことはあるか
- 10年後はどういうキャリアを歩んでいたいか
まずはキャリアの節目となる出来事、特に「キャリア全体で最大の成果」と「それぞれの転職時の転職理由(退職理由)」は振り返っておくと良いだろう。以下の記事も参考になる。
>>会社を辞める本音の理由と面接での転職理由は別!本音18個を人事プロが解説
退職理由だけでカバーできない代表的な質問が、「10年後はどのようなキャリアを歩んでいたいか」である。
経験上、この質問は対策せずにパッと回答できる人が少ないため、5年後、10年後のふたつは考えておくと良い。
さらに余裕があれば、自分の小さい頃(小学生・中学生等)からの行動原理や、追い求めてきたことも一度振り返っておくと良い。
完全に「面接で答えられる回答」のレベルまで用意しておかずとも、一度考えてみたことがあればかなりマシな回答が出来る。
落ちても相性が悪かっただけ。執着の分散が大事
最終面接で落ちる場合、相性が悪かっただけの場合が多い。
すでに現場マネージャー等が1次・2次面接をしているので、実務能力や実績が疑われたわけではないのである。
逆に言えば、あなたが優秀であっても落ちるときは落ちるとも言える。
落ちてから考えてもいいのだが、最終面接を過度に緊張することなく受けるために執着の分散をしておくのはおすすめだ。
以前にも書いたのだが、第一志望に落ちることの究極の対策は、大量の第一志望を作ることである。
今回が第一志望の最終面接である人も、そうでない人も、大量の第一志望を抱えていればプレッシャーも落胆も減る。
>>転職で第一志望に落ちた場合の切り替え方・対処方法をプロが解説
「全ての企業と相性が悪い」ということはありえないため、あきらめなければ必ず最高の企業を見つけることが出来るだろう。
余裕があれば逆質問対策も
最終面接の逆質問で何を聞いたらいいか分からない、という方は多い。
合否への影響は微小なので優先順位は低いが、余裕があれば逆質問の対策をしておくのもいいだろう。
以下の記事では(最終面接を含め)逆質問の全てを解説しているため、必要に応じて参考にしてほしい。
>>【転職面接】逆質問の教科書|おすすめ質問の具体例、一次面接から最終面接まで全網羅
まとめ
「最終面接には(めったに)落ちない」というのは都市伝説の類であり、実態に鑑みると単なる嘘であると言える。
最終面接では企業と候補者との相性を確認してくることが多いため対策は難しいが、自分のキャリア観を問い直しておくことは役に立つだろう。