これは、調べてみると「不適性検査スカウター」なるもののようです。
適性検査であれば新卒採用時含めて何度も受けたことがあるのですが、不適性検査の受験は初めてです。
今回、どうしても受かりたいので、不適性検査スカウターの攻略法をご教示いただけないでしょうか?
今回のテーマは、唯一の不適性検査である「スカウター(tracs.jp)」の対策・攻略法である。
本記事は、この不適性検査スカウター(tracs.jp)について書かれた日本に存在する記事の中で、最も有効な対策を提示していると考える。
その根拠は以下の3つ。
- 筆者自身が不適性検査「スカウター(tracs)」導入企業の人事執行役員であったため、テスト内容のみならず、現場での活用の方法まで理解しているため
- 筆者自身も実際に受験し、全ての項目でほぼ最善の数値を出し、項目の一つである【戦闘力】では8,000程度(偏差値80程度)となる等、非常に高い結果を残し、執行役員として入社した実績があるため
- 世界最大のコングロマリットの人事シニアマネージャーとして、Korn Ferry等の多数の適性検査を分析・比較・導入していたため
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
筆者の経験から、公式ページにも載っているような情報は省き、最小の労力で最善の結果を出すための知識について記載している。
本記事を読めば、不適性検査(スカウター)が全く怖くなくなることはお約束しよう。
なお、本記事では、以下の4つの不適性検査(スカウター)のうち、「能力検査」を除く「資質検査」「精神分析」「定着検査」について扱っている。
「能力検査」は、SPI等と同じく、言語と計数からなる非常に一般的なテストであり、無数の対策本が出ている分野なので本記事では解説していない。
資質検査:41の能力指標で人材の資質を見極め、採用の失敗を減らす検査
精神分析:21のネガティブチェックで、採ってはいけない人材を見極める検査
定着検査:27項目の離職・定着指標で、従業員の定着率・離職リスクを見極める検査
このURLが表示された場合、受験する適性検査は「不適性検査スカウター」となります。
【概要】不適性検査スカウターとは?その評判は?
不適性検査スカウターとは、人材採用で失敗しないための不適性検査として開発された、SCOUTER TECHNOLOGY社が提供する適性検査(性格診断に近い)である。
公式ページには、以下のように記載されている。
人材で失敗したくない企業のための不適性検査
新卒採用・中途採用の両方に対応
定着しない、成長しない、頑張らない人材を見分ける業界唯一の不適性検査
特徴としては、「定着しない、成長しない、頑張らない人材を見分ける」ということに主眼を置いていることである。
「能力検査」「資質検査」「精神分析」「定着検査」の4つで構成されており、特に最も詳しくNGな人材を見極める「資質検査」が有名である。
不適性検査であるスカウターの評判は上々だと言える。
導入社数は12,000社を超え、実際に筆者が入社し執行役員を務めていた東証プライム上場企業でも導入していた。
企業から評判が良い理由について、まず能力検査(言語・計数)だけなら無料であることが挙げられる。
最も高い「資質検査」でも800円程度と、リクルート等の有名な適性検査(SPI等)より圧倒的に安い。企業からすると非常に導入しやすいのだ。
そして何より、表立っては言えない企業の強いニーズである「ダメな候補者を見抜く」という目的に適合している。
入社者は通常、短くても1~2年は在籍するので、採用の失敗は金銭的コストだけでなく、時間的コストという意味でも甚大な被害をもたらす。
このため、不適性検査スカウターの中でも、有料の「資質検査」等を導入している企業も非常に多い。
以上より、転職活動をある程度広く行っている場合、一度は目にする適性検査になってきているのではないだろうか。
【結論】実は普通の適性検査。不適性検査だけで落とす企業は稀【例題研究等は不要】
不適性検査という名称には、「ダメな候補者を見極めて落とす」という目的が明確に込められている。
はっきり言って、かなり不穏な名前である。
そのため、この検査を受けることになると、慌てて対策や例題を検索する転職者が多い。
しかしながら、安心してほしい。結論としては、以下の2つの理由で「そこまで頑張って対策を行う必要はない」のである。
- 検査内容・検査結果ともに、実は「普通の適性検査とあまり変わらない」
- 不適性検査スカウターでの悪い結果は、多くの企業で「参考程度」に過ぎない
まず1点目であるが、公式ページから引用した検査結果サンプルを見てほしい。
サイズの関係で見づらいかもしれないので以下にも各項目を記載しておく。
- 性格の傾向
- 意欲の傾向
- 思考力の傾向
- ストレス耐性
- 価値観の傾向
- ネガティブ傾向
- 職業適性
- 戦闘力
- 虚偽回答の傾向
- 人物像および人材活用に関するコメント
上記の10項目の中で、不適性検査スカウターの特徴(売り)であり、他の適性検査ではまず見られない項目は「ネガティブ傾向」である。
一見、これは特殊な項目であるように見えるが、実はそうではない。
SPI等の普通の適性検査でも、「ポジティブかどうか」「精神的に安定しているタイプか」「プレッシャー耐性はあるか」等は普通に項目として存在する。
これを逆からネガティブに言い直すと、不適性検査スカウターのネガティブ傾向の中にある「悲観傾向」「気分傾向」「非自尊傾向(本番に弱い傾向)」となるというだけのことなのだ。
結論を言おう。
不適性検査スカウターは、SPI等の普通の適性検査と何ら変わりない、通常の適性検査だと思ってよい。
次に2点目であるが、そもそも適性検査の結果を、企業がどのように選考に取り入れているかご存知だろうか。
筆者の知る限り、多くの大企業では以下の使い方をしている。
- 能力に関する適性検査:足切り(多くが言語や計数のテストで、点数が一定未満だと不合格となる)
- 性格・気質等に関する適性検査:面接の参考程度
SPIにおいても、不適性検査スカウターにおいても、能力に関する適性検査は、足切り(点数が一定未満だと不合格となる)に使われるので重要である。
しかしながら、能力検査以外の、性格・気質等に関する適性検査はあくまで「参考程度」にしか使われないのが実態だ。
以上の2点より、不適性検査スカウターはわざわざ準備するほどの検査ではない。
これが不適性検査スカウターについての結論である。
【対策】キーワードはポジティブと変革。全ての適性検査に有効な人物像を設定しよう
前項にて、「不適性検査スカウターは普通の適性検査と変わらない」し、「適切検査の結果は参考程度でしかない」ため、特に準備をする必要はない、と述べた。
とはいえ、そうであっても「最善の結果を出したい」「良い結果でないと不安だ」という方も多いだろう。
ここからは、そういった方のために不適性検査スカウターにおいて良い検査結果を出すコツ(対策)を記載していく。
記載内容は、不適性検査スカウターに限らずどの適性検査にも利用可能な対策なので、参考にしてほしい。
【前提】そもそも企業が落としたい人物像とは?
そもそも企業にとって、「不適性」とはどういう社員なのだろうか?
細かく書いていくと多数あるのだが、企業は、大きく言って以下の4種類の社員を除きたいと思っている。
- 働かない社員や、すぐに体調を壊す「もろい」社員
- コミュニケーション能力や協調性が極端に低い社員
- 言われたことも出来ない、無能な社員
- 言われたことしかしない、変化の時代には役に立たない社員
全ての適性診断が、これに当てはまる社員ではないことを確かめようとしてくると思っていい。
【基本】多くの適性検査の質問はストレートで正解が分かり易い
とはいえ、恐れることはない。
多くの場合、適性診断の質問は稚拙である。つまり、「どちらを選べば正解か」が分かり易いのだ。
- 仕事でストレスを感じやすい
- 周りとコミュニケーションをとるのが苦手だ
上記の質問があったときに、どう答えたら「ストレスに弱い」人間だと思われるか、「コミュ障」だと思われるか、一目瞭然だと思う。
適切検査の多くが上記のような非常にわかりやすい質問なので、実は意識して避けるべきは「④教えられたことしかしない、変化の時代には役に立たない社員」だけである。
安定志向なのか、変革志向なのか、これは本来は善悪ではない。
つまり、正解はないはずだ。
しかしながら、会社の採用については異なる。
全てが変化し、不確実なVUCAの時代において、「変革」が必要ないと思っている会社は存在しない。
あなたの会社の中期計画(事業計画)の中でも、「変革」「改革」「新規○○(領域、事業など)」等の言葉が飛び交っているのではないだろうか。
こういった状況では、安定志向で「基本的に言われたことをやる」という人間の人材価値は大きく下がる。
それでは、あなた自身が強い安定志向の場合にはどうしたらよいのか?これについて次項で回答していく。
【具体的な対策】この人物になりきって回答すべし
適性検査で良い結果を出したい場合、重要なのは「キャラづくり」である。
企業に必要な人間(キャラ)になりきって回答するのがよい。
前述したとおり、企業が不要だと思う社員は、以下のような人間である。
- 働かない社員や、すぐに体調を壊すもろい社員
- コミュニケーション能力や協調性が極端に低い社員
- 教えられたことも出来ない、無能な社員
- 教えられたことしかしない、変化の時代には役に立たない社員
この逆のキャラ、つまり以下の3要件を満たした人材になり切って回答する。
- 仕事を中心に、何事にもポジティブ
- 人が好き
- 変革をリードできる(変化を好む・ややリスク選好型である)
仕事が好きで、人生全般に対してポジティブな人間なら、この質問に何と回答するのか?
人が好きな人間なら、この質問に何と回答するのか?
変化を好み、どんな環境でも素早く学び、結果を出せる(と自分で思っている)人間なら、この質問に何と回答するのか?
質問ごとに、こういったことを自問自答し、答えていけばよい。
難しいことはない。すでに述べた通り、適性検査の質問はかなりストレートなので、考えれば分かることである。
気質や性格を測定する適性検査は、「非常に簡単な国語の試験」に過ぎないのだ。
【注意点】ライスケールについて
最後に、一点だけ注意しておこう。
全ての適切検査において、ライスケール(Lie Scale)というものが測定されている。
ライスケールとは、直訳すると「嘘をついている度合い」のことである。
回答者が嘘をついていないか、偽りの自分を演じていないか、ということが数値化されたものだ。
つまり「キャラづくり」をしていると低くなってしまう数値なのだ。
ここで、「キャラづくり」をしながらも、ライスケールを下げる(正直に回答していると見せる)コツは二つある。
- ライスケールを測るための「極端な質問」を知っておく
- 一貫した回答が出来るよう、「本来の自分から2段階ずらす」等と決めておく
ライスケールについて詳しくは以下の記事を読んでいただきたいが、本記事でも簡単に解説しておこう。
>>適性検査におけるライスケールの対策|導入企業の元人事執行役員が解説
ライスケールを測るための「極端な質問」を知っておく
一つ目は、簡単である。
ライスケールを測るため、いくつかの適性検査では「普通に生きてきたら、それはあり得ない」という質問を出してくる。
- 生まれてから今まで、何かに失敗したことはない
- 生まれてから今まで、一度も嘘をついたことはない
- 嫌いな人は、過去も含めて一人もいない
世の中には嘘を一度もついたことがない人間ももしかしたら存在するかもしれないが、適性検査では「NO(=失敗したことがある、嘘をついたことがある、嫌いな人がいる)」と答えるのがいいだろう。
これが、嘘つきを見抜くための(ライスケールを測るための)質問だからだ。
一貫した回答が出来るよう、「本来の自分から2段階ずらす」等と決めておく
二つ目は、一貫した回答をするためのテクニックである。
適性検査の中には、同じ資質を測るための質問が多数あり、散りばめられている。
例えばポジティブ度合いを測る複数の質問に対し、「どの程度仕事にポジティブな人間なのか」の度合いが質問ごとにブレてしまうと、ライスケールが上がってしまう。
なので、例えば7段階の回答であれば、「意識して2段階ずつずらす」等と決めておくと、一貫した人間に見える。
例えば、以下の通りである。
- 例えば、「仕事でストレスを感じやすい」という質問に答えるとする
- 回答の選択肢は「非常に感じやすい」「感じやすい」「やや感じやすい」「どちらでもない」「やや感じにくい」「感じにくい」「非常に感じにくい」の7段階
- この場合、あなたの本音の回答が「やや感じやすい」であれば、「やや感じにくい」まで2段階ずらす、などと決めておく
そうしておくと、他に多数散りばめられた「ストレス関連の質問」でも、一貫したストレス感受性度合いに見える回答が出来る。
まとめ
基本的に、不適性検査スカウターの対策は不要だ。
とはいえ、より良い結果を出したい場合もあるだろう。
そういった場合は、ライスケール(嘘つきの度合い)が高まらないよう気を付けつつ、以下の人間になりきって回答しよう。
- 仕事を中心に何事にもポジティブ
- 人が好き
- 変革をリードできる(変化を好む・ややリスク選好型である)
当サイトでは、適性検査のみならず、書類選考や面接選考についても解説している。
本記事と同じく、人事のプロとして本音で解説しているので、必要に応じて参考にしてほしい。