何回か受けた書類選考は落ちてしまったのですが、これは資格がないせいでしょうか?
20代だと実績や専門性も薄いと思うので資格が必要だと思うのですが、資格なしでの転職は可能でしょうか?
20代の資格なしでの転職について教えてください。
今回のテーマは「20代の資格なしでの転職」である。
結論から申し上げると「20代に限らず、ビジネスパーソンは資格なしで十分である。20代であってもキャリアアップには資格ではなく、実務で培った実績や専門性が欠かせない」という内容になっている。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、20代の転職における資格の不必要性が分かり、転職活動の成否の原因を正確に見極め、望む転職を果たすことが出来るようになるだろう。
結論
まず本記事の結論を記載しておく。
箇条書きで記載しているため、詳細は本文中で確認していただきたい。
- 20代に限らず、ビジネスパーソンは資格なしで十分
- 資格は良くても加点程度、悪いと趣味の延長とみなされる
- 良く分からない資格があり過ぎると不利になることもある
- 20代でも、キャリアアップには実務で培った実績と専門性が必要
- 転職で役に立つ2つの資格は英語(TOEIC)と簿記
20代に限らず、ビジネスパーソンは資格なしで十分
まず結論から言うと、9割以上のビジネスパーソンに資格は必要ない。
資格が必要なのは、その資格がないと業務が出来ない、つまり業務独占資格が必要となる職種のみである。
業務独占資格とは、その資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができる資格
具体的に言えば、公認会計士、弁護士、税理士、弁理士、医師、薬剤師、外務員、等が業務独占資格にあたる。
一般的なビジネスパーソンが、上記のような資格を必要とすることはあまりない。
比較的多いパターンは、銀行員や証券会社の会社員が(証券取引の営業をするための)外務員の資格がないと仕事が出来ないことくらいだろう。
20代に限らず、ほぼ全てのビジネスパーソンの業務は資格なしで十分にこなせる。
これは年収一千万以上、もっと言えば年収数千万以上のビジネスパーソンでも同様である。
面接官からすると、資格は加点程度に過ぎない
ビジネスパーソンは資格なしで十分だということは、実際の面接官の経験から述べている。
筆者は総合電機メーカーや製薬企業、IT企業等で人事マネージャーを務めていたが、そもそも資格欄をあまり重視して見ていなかった。
結論から言えば、転職活動においては資格は加点程度に過ぎない。
実務と座学は異なるものであり、半年~2年程度の学習を要する最難関資格ならともかく、普通の資格は1~2か月の学習で取得できてしまうものである。
企業が必要としているのは実務の処理が出来る人間であって、知識を詰め込んでいる人間ではない。
実際、筆者は人事として以下のような例を数多く見てきた。
- 会計士や税理士、簿記等の資格を持っていない優秀な財務・経理系マネージャー
- 弁護士の資格を持っていない優秀な法務執行役員
- 社労士の資格を持っていない優秀な人事マネージャー
- 中小企業診断士の資格を持っていない優秀な経営コンサルタント
特に、最後の2つの例は顕著である。
優秀な人事パーソンが社労士やキャリアコンサルタントの資格を持っているケースはほぼ見ない。(コーチング関連はたまにある)
筆者が在籍したボストン・コンサルティング・グループでは、年収にして1億円を越える役員(パートナー)が数十名いた。
そのうち、コンサルティングに関する唯一の国家資格である中小企業診断士を持っていた人は皆無であったと記憶している。
弁護士資格を持っている法務パーソンや、会計士資格を持っている財務・経理パーソンは、加点にはなる。逆に言えば、そのレベルにならないと加点にはならない。
直截な物言いになってしまうが、多くの資格は中途採用選考の現場において趣味の延長レベルにしか見られていないというのが実態である。
良く分からない資格があり過ぎると不利になる3つの理由
資格は加点にならないどころか、あまり考えずに取得し、履歴書に書くと減点になることもある。
その理由は、以下の3つである。
- キャリアの軸が不明確になる
- 自分に自信がない人間だと思われる
- 資格を取るのが趣味の暇な人間だと思われる
上記について、それぞれ一言ずつ解説していこう。
キャリアの軸が不明確になる
自身の専門分野以外の資格をたくさん取っていると、キャリアの軸が不明確になり、何をアピールしたいのか分からなくなってしまう。
職務経歴的に言えば、良く分からない転職を繰り返したキャリアと同じ状態に見えるのである。
自分に自信がない人間だと思われる
資格を取ろうと考える人の中には、「自分の経歴に自信がないので箔を付けよう」という人が(全員ではないが、確実に)含まれる。
資格で履歴書が埋め尽くされていた場合、特にその資格に分野の統一性がなかったり、レベルが高くなかったりすると、面接官が「自信がない人なのでは」という懸念を抱く可能性は高い。
資格を取るのが趣味の暇な人間だと思われる
エース社員は忙しいことが多い。暇な社員が空いた時間で勉強し資格を積み重ねる一方で、エース社員は実績と実務経験をひたすら積み重ねているパターンがよく見られる。
人事はこういった実情をよく知っているため、資格が多すぎると資格の取得が趣味の暇な人間であるとみなされる場合もある。
20代でも、キャリアアップには実務で培った実績と専門性が重要
20代であっても、キャリアアップに必要なものは30代以上と同じである。
それは、実際の実務で培った実績と専門性である。資格とは異なり、実績と専門性があれば、新しい会社でも再現性の高い活躍が出来るとみなされる。
20代では、顕著な実績や専門性がないことは面接官にも分かっている。
2~3年しか働いていないのであれば、2~3年で培った実績や専門性で勝負するしかない。
転職で役に立つ2つの資格
ここまで、どちらかと言うと資格の取得に否定的な見解を述べてきた。
とはいえ、転職で役立つ資格も存在するので最後に紹介しておく。
転職で役立つ資格の一つが、TOEICである。
英語力は、一部の外資系でしか絶対必須とまでは言えない。その一方で、TOEICスコアを昇進試験の必須要件にしている会社も多く、英語が話せると仕事上で有利になる場面も多い。
もう一つが、簿記(2級以上)である。
会計の基礎ともいえる簿記検定は、ビジネスの数字面の基礎を理解している証として、どの職種であってもプラスである。ビジネス上の数字を理解できない人間は、どの職種でもマネージャー以上にはなれない。
筆者が面接官であれば若干のプラス評価にしますが、高いTOEICスコアほどには優遇されないことが多いでしょう。
まとめ
20代で実績があまりないからと言って、資格取得に走るのはやめた方が良い。
一部の例外的な職種を除き、ビジネスパーソンは資格なしで十分である。どうしても箔付けがしたいのであれば、外資でのキャリアアップにもつながる英語を勉強するのが最もコスパが良いだろう。
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