現在、転職で最終面接に合格したと転職エージェントから連絡が来ました。
転職先の入社予定日まで2ヶ月以上あるのですが、現職への退職届はいつ提出すればいいですか?
もう出してしまってよければ、すぐに出そうと思います。
今回のテーマは「退職届(退職願・辞表)はいつ出すか」である。
結論から申し上げると「法的には2週間前までだが、現職の就業規則に従うのがよい。ただし、退職届は撤回できないので、完全に転職が確定してから、すなわちオファーレターをもらってから出すのが肝要である」という内容の記事になっている。
そういったことを防ぐため、本記事の内容は意外に重要です。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、退職届の一般的な提出時期はもちろん、退職届に潜む危険性をも知ることで、安全な退職(転職)が出来るようになるだろう。
結論
まず、本記事の結論は以下のようになる。
- 退職届の提出時期は、法的には2週間前まで(民法第627条)。どんな会社も2週間前に退職届を出せば辞められる
- ただし、円満退社のメリットを受けるために就業規則の期間(1か月前が多い)を守るのがベター
- 実務的には、退職届は受理されたら撤回できないので、転職先からオファーレターをもらった後で提出するのが重要
【前提】退職届とは?退職願や辞表との違い
本項に限ってはどこのサイトにも書いてある内容となり恐縮だが、前提として簡単に説明しておく。
退職届とは、労働者が雇用主(会社)に、労働契約の解除を伝えるための書式である。
退職願と違い、雇用主(会社)側に断る権利はなく、必ず退職できる。
退職願は退職届に近いが、退職をお願いする書式であり、雇用主(会社)側に断る権利がある。
とはいえ、この「退職願」がない会社も多く、口頭で上司に退職意志を伝えることで、十分に退職願と同じ意味を持つ。
辞表は取締役や公務員などが出す退職書類であり、一般的なビジネスパーソンには縁がないものである。
とはいえ、いくつかの理由から、これらの違いを覚える必要はあまりない。
まず、退職届のフォーマットしかない会社が多いという事情がある。
逆に退職願のフォーマットしかない場合、退職願が退職届と同じように使われている場合が多い。
フォーマットとして、退職届しかない会社や退職願しかない会社ではそれを出せばよい。
両方ある会社であれば、退職願→退職届の順で出せばよいだろう。
【一般論】退職届の提出は法律で2週間前と決まっている
まず、退職届を出すのはいつまでなのか、という問いの一般的論的な回答を述べておく。
退職届の提出時期は、退職予定日の1か月前から2週間前が一般的である。
いわゆる正社員の労働契約(期間の定めのない契約)の解除は、退職予定日の2週間前に退職届を出せば効力が発揮される、と法律で決まっている。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
出典:民法627条の1
ただし、慣例的には(現職の就業規則の定めに従い)大体1か月前までに出すことが多い。
就業規則でも、「2週間前」ではなく「1か月前」になっている会社が多い。会社によっては、「3か月前」など非現実的な長さになっている場合もある。
法定の「2週間」を超える記載には法的拘束力はありませんので、会社からの「お願いベース」だとみなして問題ありません。
就業規則より法律が優先されるので、どんな会社でも2週間前に退職届を出せば辞めることが出来る。
極端な話、ハラスメント等で本当に辛い場合には、会社に退職届を送りつけて2週間サボれば、退職は100%出来るということになる。
もちろん、最後の2週間分の給与は(有給休暇が余っていない限り)もらえませんが、緊急事態であれば問題ないでしょう。
現職の就業規則に定められた退職届の提出時期が「3か月前」等、長すぎる設定になっている場合は、無視してもよいだろう。
ただし、「2週間~1ヶ月」程度であればかなり常識的な範囲なので、円満退職のために守ることをお勧めする。
上記の記事にも記載したとおり、円満退職には以下のメリットがある。
- 転職先での退職理由としても活用できる
- 退職までに感じる心的負担が減る
- 前職の人脈(人的ネットワーク)を維持できる
- 今後の転職活動においてリファレンスチェックを受けやすくなる
【重要】退職届の提出は撤回できない。転職先確定後、ギリギリに出すべき
前項の結論は「退職届の提出時期は、法的には2週間前だが、円満退社のために就業規則の期間を守るのがベター」であった。
法的かつ具体的な期間としては上記の通りなのだが、実務的にはもう一つ覚えておきたい視点が存在する。
本項では、上記の視点を解説した後、「この視点を知らなかった場合に起こりうる悲劇」についても記載していく。
退職届は撤回不可。オファーレターをもらってから動く
本記事で最も重要なポイントは、退職届は撤回できないので、転職先からオファーレターをもらってから(100%確定してから)提出するということである。
まず、退職届は撤回できない。より正確に言うと、人事部長等の会社の代表者が受理(承認)するまでは撤回できるが、受理された後は撤回できない。
提出から受理までは早いと1日で終わってしまうので、撤回できないと思っておいた方がいいというわけだ。
退職願の提出は、労働者側からの労働契約の合意解約の申込みと解されますから、使用者がこれを受理して承諾すれば、合意解約の効力が生じてしまい、原則として撤回は許されないことになります。
次項で話すが、撤回できないことで大きな損失を被るケースがある。
よって、転職先(内定先)の会社に不安がある段階では、退職届の提出は出来る限り遅くするのが基本戦術である。
基本的には、転職先からオファーレターと呼ばれる「給与額まで書かれた採用を確約する書類」をもらってから提出するのが良いだろう。
少しでも不安がある場合は、退職届の提出をしてはいけない。
そもそも「退職届」はもちろんのこと、「退職の話を社内のだれかにする」のすら、オファーレターをもらった後にするのが円満退職の基本だ。
以下に円満退職をするための注意点を記載しておくので、参考にしてほしい。
- まず直属の上司に伝える
- 全ての上司や同僚に対し、伝える内容を統一する
- 自分の中で退職を決断しておき、条件提示になびかない
【具体例】退職届を出さなければ戻れたのに…というケース
退職届が撤回できないとしても、多くの場合には問題にはならない。
しかし、内定先が倒産した場合、または経営難から内定取り消しをされた場合、内定者が行き場をなくすことがある。
内定先が倒産まで行く例は少ないが、外資系において本国からの厳命で採用凍結(禁止)になり、「内定先に入社出来ず、退職届も早くから提出済だったため無職になってしまった」ケースは実例として聞いたことがある。
この方はある程度の年齢になっていたため、無職からの再就職にかなり時間がかかったと聞いている。
ただし、「次の転職先が完璧に確定するまでは、退職届を出さない」という意識があれば防げた事故もあるのは事実です。
まとめ
会社員として企業で働く、というのは雇用”契約”の結果である。
契約は慎重にしなければならないのと同様、契約の解除も慎重にしなければならないのである。