転職して5か月が経ったところなのですが、新しい仕事になじめていません。
マネージャーの詰めもきつく、過敏性腸症候群(IBS)で毎日トイレに籠っている状態です。
ぶっちゃけ、「逃げの転職」は人事の人からするとアリなんですかね?後ろ向きの転職を成功させる秘訣などあれば伺いたいです。
今回のテーマは「逃げの転職(ネガティブな理由/後ろ向きの理由での転職)」である。
結論から言えば「アリ」だが、それを正直に人事面接官に伝えていいわけではない。成功させるためのコツや注意点が比較的色々とあるテーマと言える。
初めて訪れた方のためにお伝えしておくと、当サイト「人事参謀」は以下の経験を持つ人事・転職のプロフェッショナルが執筆している。
筆者の専門性や実務経験に基づき、机上の空論を一切除いて本音で執筆しているので、安心してお読みいただきたい。
- 4回の転職を経て、30代前半で東証一部上場企業(現・東証プライム上場企業)の人事執行役員/年収1,800万に至った経験
- 難関企業における勤務経験(外資/日系、大企業/ベンチャー、戦略コンサル)
- 人事面接官として多数の候補者の面接を行った経験
- 人事マネージャーとして転職エージェントや転職サイトを活用し、採用を実施した経験
この記事を読むことで、適切な「逃げ方」が分かり、自身の精神状態を良好に保つとともに、キャリアを最大限守ることが出来るようになるだろう。
逃げの転職はアリ。ネガティブな転職理由のほうが多い
結論を言えば、逃げの転職はアリである。
筆者の4回の転職のうち、3回は前向き、1度は中立(ポジティブでもネガティブでもない)であったが、筆者はかなりポジティブ寄りな方だと思う。
実際には、本音の転職理由はネガティブ(後ろ向き)な場合のほうが多い。
ただ、根拠なく「逃げの転職もアリですよ」と言われても納得できないだろう。
逃げの転職がアリな理由は以下の4つである。
- 人間は環境に左右される生き物だから
- 精神を病んだら終わりだから
- 逃げたいような状況では、あなたも会社もお互い損だから
- 短期離職は挽回可能だから
それぞれ簡潔に解説する。
【1】人間は環境に左右される生き物だから
以下のツイートにも書いたが、よく言われる「今頑張れないやつはずっと頑張れない」は残される人間の願望でしかない。
20代で実績もないまま転職しても・・・と思っている方も多いが、今頑張れていない人も含め20代こそ転職すべき。「今頑張れないやつはずっと頑張れない」は見捨てられるおじさんの願望。https://t.co/v7wSwuacGQ
— 齋藤@人事×戦略プロ (@saito_liveevil) February 9, 2021
実際には、人間は「環境に左右される生き物」であり、今の環境があなたに合っていないだけの可能性も十分にある。
逃げたくなるような環境からは逃げて、新しい環境で活躍するのが正しい。
【2】精神を病んだら終わりだから
筆者のメインキャリアは人事だ。
そして人事(特にHRBP)は、メンタルを病んだ社員との面談も仕事のうちである。
さらに、筆者は労務にいたこともある。
そこで、鬱の方や統合失調症の方、双極性障害の方の対応も自分でやった、もしくは同僚がやっていた。
そんな中で強く感じたのは、「人間、病んだら元には戻らない」である。
「病んだら終わり」というのは言い過ぎたが、一度精神を患った場合、完全復帰に相当な時間がかかるのは事実である。
精神を病む前に逃げることは、人間として正しいだけではなく、ビジネスパーソンとしても正しいのだ。
精神が崩壊寸前なのであれば、今すぐ逃げ出しましょう。
その場合、時間のかかる「転職」ではなく今すぐ「退職」すべきだと思います。
【3】逃げたいような状況では、あなたも会社もお互い損だから
逃げの転職をしたいような状況であれば、あなたのパフォーマンスも下がってきているだろう。
仮に今はそうでなくても、中長期的にはそうなってきてしまうはずだ。
そうなると、「あなたが逃げたいような状況」というのは、あなたにとってはもちろん、会社にとっても良くない。
もし罪悪感があるのであれば、「お互いのために逃げる」という考え方もアリである。
【4】短期離職は挽回可能だから
逃げ出したいが在籍期間が短すぎて難しい、という方も多いだろう。
しかしながら、短期離職は挽回が可能である。
これが挽回不可能であれば「転職をあと数か月~1年は我慢してください」と言わざるを得ないのだが、そんなことはない。
転職してすぐ転職する「短期離職」の挽回戦術については、以下の記事に書いたので参考にしてほしい。
>>【後悔】転職してすぐ転職する方法|人事が教える短期離職挽回法
逃げの転職をする前の確認事項
以下の記事にて、現状を変えたい(転職したい)場合には4つの手段がある、と書いた。
>>【転職はハイリスク】人事プロが教える、転職より前に検討すべき3つの選択肢
- 改善する
- 我慢する
- 異動する
- 転職する
今回の場合も同じである。
「逃げの転職」も悪くないのだが、例えば「逃げの部署異動」は出来ないのだろうか、という確認が必要である。
上記の①~③(=転職以外)があり得そうだと思った方は、少しだけ上に挙げた記事を見てみてほしい。
ただ、「もう試したよ」「もう無理」という方も多いだろうから、多くは言わない。
念のため、改善できる点がある可能性、我慢している間に時が解決する可能性、異動で解決できる可能性も、一瞬でいいので考えてみてほしい。
転職はリスクも大きいので、本来的には「最後の手段」であるからだ。
逃げの転職(ネガティブな理由での転職)の具体的プロセス
ここまで「逃げの転職はアリ」「転職の前に改善や我慢、異動で解決できないかチェックしよう」と述べてきた。
ここからは実際の「逃げの転職」の方法論に移ろう。プロセスは以下の3つである。
- 逃げたいと思った瞬間にゆるゆる転職を開始する
- 転職エージェントを試金石にする
- 面接官相手には「逃げ」「ネガティブ」を隠す
【1】逃げたいと思った瞬間にゆるゆる転職を開始する
筆者が強くお勧めしているのが、「ゆるゆる転職」である。
筆者が作った言葉なのできちんとした定義はないのだが、ゆるゆる転職とは、以下のような転職手法である。
大手転職サイトに登録はしているものの、企業や転職エージェントからの連絡はめんどくさいので9割は無視する。
本当に興味が持てる求人・スカウトが来た時にだけ連絡を取る。
しかもその連絡も、即時ではなく気が向いたときにまとめて返信する。
興味を持った企業も、面接選考がめんどくさくなったらキャンセルする、等。
簡単に言えば「とりあえず大手転職サイトに登録して放置し、良い求人や良いエージェントをストックしておくこと」であると思ってよい。
多くの人は、「逃げたいと言う気持ち」と「仕事をしながらの転職活動が大変だという気持ち」の板挟みになってしまい、追い込まれるまで転職活動を開始しない。
その結果、本当に追い詰められてしまう人を筆者は見てきた。
しかし、この「ゆるゆる転職」であれば、「逃げたい」と思った日に誰もがすぐに始められる。
「逃げたい」を超えて本当に追い込まれる時までに、「良い求人」「良い転職エージェント」が集まってくるというメリットも大きい。
筆者自身、4回の転職のうち3回はこのゆるゆる転職によるものである。
自身のことで恐縮だが、22歳の新卒時に250万円だった年収が4回の転職を経て30代前半で1,800万円までいったので、「求人の質」も追求できると言える。
逃げたいのであれば、その第一歩として「ゆるゆる転職から始める」ことを、強くお勧めしたい。
【2】転職エージェントを試金石にする
逃げの転職では、転職エージェントを試金石として使わせてもらうことをお勧めする。
これは人事のプロとして断言するが、次項で話す「面接官」に対しては、「逃げ」「ネガティブ」な転職理由を隠す必要がある。
転職エージェントを、そのための準備に使わせてもらうのである。
転職エージェントは敵ではないので、「ネガティブな理由を完全に隠す」必要はない。
ただし、「完全にネガティブ」な志望者には厳しいのが転職エージェントという人種である。
そんな彼らに対し、「ある程度のネガティブな本音」と「前向きに取り繕った理由」のブレンドを説明してみよう。
これで転職エージェントを納得させられるのであれば、その前向きな理由は面接官にも伝わる可能性が高い。
逆に、転職エージェントからネガティブな反応をもらってしまうのであれば、もう少し理由を練り込む必要があるということだ。
ただし、あなたに説教をしてくる等、あまりに相性の悪い転職エージェントを納得させる必要はない。
転職エージェントは当たり外れが大きいし、転職活動において非常に重要な役割を果たすので、相性として合わないなら躊躇なく変えよう。
【3】面接官相手には「逃げ」「ネガティブ」を隠す
「面接官だって人間。皆が皆、前向きな理由で転職しているなんて思ってないって。素の自分で行け」
という内容のツイートを見たことがあるが、これは本当でもあり、嘘でもある。
まず、面接官が「皆が皆、前向きな理由で転職しているなんて思ってない」のは本当である。
プロとして断言するが、だからといって「逃げの理由」をさらけ出して素の自分で行ってはいけない。
志望先に比して、あなたの学歴や職歴、実績が素晴らしければ「正直な人だ」と受け取られて採用されるかもしれません。
ただし、本来の実力に応じたレベルと同等の企業か、それ以上の企業では通過が難しいでしょう。
なぜならば、「実際に前向きな理由でその会社を受けている競合(他の候補者)がいるから」である。
「面接官も人間、皆が皆、前向きな理由で転職するとは思ってないって。素の自分で行け」は本当でもあり、嘘でもある。
最後以外は本当。だからといって「逃げの理由」をさらけ出すのは勧めない。良い志望先であればあるほど、「前向きな転職理由」を持つ競合がいるからだ。
— 齋藤@人事×戦略プロ (@saito_liveevil) February 13, 2021
「どんなブラック企業でもいいから転職で逃げたい」のならともかく、多くの人は「出来るだけ良い企業に転職で逃げたい」はずだ。
「良い企業」には多くの転職希望者がおり、その人たちの多くは「ある程度の学歴」や「職歴」、「実績」、そして「本当に前向きな転職理由」を持っている。
そんな中、「ネガティブな転職理由」を持っているのは大きなディスアドバンテージ(不利な要素)である。
面接官相手には「逃げの転職理由」「ネガティブな転職理由」を隠す、が王道である。
まとめ
逃げの転職はアリだ。
ただし、踏み切る前には改善や我慢、異動といった別の手段で解決できないか、念のため確認してほしい。
既に記載した通り、実際のプロセスとしては以下のようになる。
- 逃げたいと思った瞬間にゆるゆる転職を開始する
- 転職エージェントを試金石にする
- 面接官相手には「逃げ」「ネガティブ」を隠す
この記事を読んでいる時点で「逃げたい」気持ちがゼロではないと思うので、まずは今すぐ、ゆるゆる転職を始めることをお勧めしたい。